「グラフィックトライアル」は、第一線で活躍するクリエイターと凸版印刷のプリンティングディレクターがタッグを組んで、印刷技術を駆使した新しい表現の可能性を探るポスターの展覧会。2006年に印刷博物館P&Pギャラリーで始まり、今年で10年目を迎えたということで、これまで発表してきたポスター全210点を2部に分けて展示しています。
現在開催しているのは、第1部の展示。会場には、21組のクリエイターとプリンティングディレクターがつくりあげたポスターがずらり! 六本木未来会議に登場した人の作品もたくさんあって、かなり見応えがあります。
こちらは、キギの植原亮輔さんの作品で、平面のポスター上での不思議な視覚効果を狙ったもの。網点のパターンや、銀やニスの光沢を利用することで、見る角度によって絵柄の表情が変わって見えます。
長嶋りかこさんのポスターは、黒一色。左から、アクリル絵の具、鉛筆、油性マーカー、ボールペン、墨汁と、それぞれ異なる画材を使用したドローイングが原稿です。それぞれの特徴を再現するために、異なる印刷技術が使われているそう。たしかにリアルですね!
佐藤可士和さんのポスターは、かなりマニアック。印刷会社とやりとりする際、デザイナーは「インキを(もっと)盛る」というような指示を出すのですが、そういったあいまいで数値化しづらいことに、具体的な基準を示そうというもの。「横列は10%刻みの平網」「0.003〜3ptまでの罫線をスミと白抜きで印刷」など、解説文を読んでもなかなか難しい......。
個人的に面白かったのは、ブックデザイナーの祖父江慎さんのポスター。「めざせ、トラブル!」というテーマで、製版フィルムを金ダワシでこすったり、インキにスパイスを練り込んだりして、予想不可能な仕上がりを狙ったものだそう。解説文を読んで思わず笑ってしまいました。
会場には、印刷技術を詳しく解説したコーナーも。印刷の原理がわかりやすく説明されていたり、ポスターに使われたすべての紙がずらりと並んでいたり。展示されているポスターの制作過程は、これまでの印刷実験を例に解説されていて、とても勉強になります。
たとえばこちらは、同じ「黒インキ」でも、インキメーカーごとに色や質感が微妙に異なることを示したもの。よーく目を凝らして見ると、24種類それぞれが微妙に異なっているのですが......わかりますか?
そのほか、会期中はトークイベントやワークショップも開催。訪れた日には、新村則人さん(左)、永井裕明さん(中)、服部一成さん(右)による鼎談が行われていました。
ちなみに第2部は10月8日(木)からスタート、詳しいスケジュールはウェブでご確認を。さらにたくさんのクリエイターも登場するそうですよ!
編集部 飯塚
information
東京ミッドタウン・デザインハブ特別展「グラフィックトライアル・コレクション2006-2015」
会場:東京ミッドタウン・デザインハブ(東京都港区赤坂9-7-1 ミッドタウン・タワー 5F)
会期:第1部 9月18日(金)~ 10月4日(日)11:00-19:00
第2部 10月8日(木)~ 10月24日(土)11:00-19:00
入場料:無料
http://designhub.jp/exhibitions/1723/