9月15日(火)から23日(水)まで、アクシスギャラリーで開催されている「燕三条 工場の祭展 -産地のプロセス-」におじゃましてきました。こちらは、新潟県の工場集積地域・燕三条の工場が一般に開放されるイベント「燕三条 工場の祭典」に先駆けて行われているもの。伝統工芸だけでもなく、最先端技術だけでもない、日本のリアルな"ものづくり"が垣間見られる展覧会です。
うかがったのは開催初日、ガイドツアーが行われるということもあって、関係者のみなさんが勢揃い。このイベントの監修は、六本木未来会議でもツアーガイドをしてくれたmethodの山田遊さん(右から3人目)。みなさんが着ているTシャツのピンクストライプは、同イベントのアイコンだそうです。デザインとアートディレクションを担当したSPREADの小林弘和さん(左端)と山田春奈さん(左から4人目)に、お話をうかがいました。
「せっかく東京での展覧会ということで、燕三条での工場体験とはまた違う視点で面白さを伝えられればと思って企画しました。工場ではものづくりの工程が見られるので、こちらでは産地そのものが成り立ってきたプロセスを。この年表を見ると、燕三条という産地で、ものづくりがどう変遷してきたかがわかると思います」(小林さん)
「燕三条のものづくりは、江戸時代に和釘の生産からスタートしました。今ではアウトドアブランド『スノーピーク』のペグなどにも、その技術が生かされているんです。並べられた時代ごとの"断片"から、その時間軸を体験できると思います」(山田さん)
写真の右6本は寺社の建築などに使われる「和釘」、左3本はテントなどを固定するための「ペグ」。用途はまったく違うのに、素材や技術を時代に合わせて生かしていることがわかります。なんとこのペグ、コンクリートに打ち込めるほど強靭なのだそう。
「電気が通るようになったり、戦争が起きたり、社会情勢の変化に合わせて、つくるものも変わっていったんです。そして今も、伝統工芸ではない、たくさんの日用品がここでつくられています。その過程自体、広い意味でデザインと言えるんじゃないでしょうか」(小林さん)
ちなみに、展示に使われている什器は段ボールを積み重ねたもの。展示番号はマスキングテープを使って書かれています。同じように、「工場の祭典」会期中の工場でも、各職人さんが段ボールとピンク色のテープで案内サインなどをつくるのだそう。「使う段ボールは工場の祭典オリジナルのもの。みなさん、ものすごくきれいに仕上げてくれるんです!」と山田さん。
「工場とはふだん関わりのない人が見ると、より面白いかもしれませんね。自分の仕事に使える新しい発見があるかもしれません」(山田さん)
「金型屋さんを介してCDジャケットをつくった、なんて例もあります。この技術をこう使えばこれもつくれるんじゃないかって、可能性が見いだせるはず。そもそも、燕三条自体がそうやって発展してきたわけですから」(小林さん)
ガイドツアーがはじまると、来場者のみなさんも興味津々。私も、展示されている包丁や鍬がやたらかっこよく見えて、思わず写真をたくさん撮ってしまいました。こういうプロダクトに心惹かれるのは男子だけかと思いきや、工場には女性も多く訪れるそうです。
「燕三条 工場の祭展 -産地のプロセス-」のあと、燕三条で行われる「燕三条 工場の祭典」は、10月1日(木)から4日(日)まで。この展示を見たら、きっと実際につくっているところを見たくなりますよ!
編集部 飯塚
information
「燕三条 工場の祭展 -産地のプロセス-」
会場:アクシスギャラリー(東京都港区六本木5-17-1 AXISビル)
会期:9月15日(火)〜 23日(水)11:00~19:00
※最終日は17:00まで
入場料:無料
http://www.axisinc.co.jp/building/eventdetail/433