国立新美術館で2008年から行われてきた「アーティスト・ファイル」展は、旬の現代美術家を紹介するグループ展。日韓国交正常化50周年に当たる今回は、日韓12名のアーティストが紹介されています。内覧会におじゃまして、めくるめく現代アートの世界を堪能してきました。
「アーティスト・ファイル」展の特徴は、「個展の集合体」であること。12名のアーティストそれぞれに割り当てられた展示空間を、仕切りのカーテンをめくって次々に巡っていくという構成です。「隣の部屋」という副題は、日韓の関係のほか、この個展形式のことも意味しているそう。
カーテンをめくると、まったく別の空間が目の前に広がるこの個展形式。「次はどんな作品が?」とちょっとしたドキドキを味わえて、いつも以上に楽しく鑑賞できました。以下、いくつかの"部屋"をご紹介。
最初の部屋に入ると待ち構えているのが、モーターでゆっくりと動くこの巨大なオブジェ。壁に映ったさらに大きな影がうごめくという、ヤン・ジョンウクさんの作品です。すごいインパクト!
たくさんの作品がところ狭しと置かれたこの部屋では、小林耕平さんの作品を展示。映像あり、オブジェあり、テキストありと、多彩な作品群がにぎやかに展示されていました。
中には、展示室に家を建ててしまったアーティストも。イ・ウォノさんの作品で、ホームレスから購入した段ボールでつくられています。奥には実際にホームレスと売買の交渉をした際の映像と、購入の際に交わした契約書が。
こちらは、織物を解きほぐした造形作品で知られる手塚愛子さんの作品。絵画のようでもあり、立体作品のようでもあり、こちらでは独特の世界観を堪能できました。
個人的に特に気になったのがこちら、キ・スルギさんの作品。森の中に煙上の何かが浮遊している写真を展示していました。おどろおどろしい効果音が流れる部屋は黒一色。この部屋でひとりになったときは、正直、怖かったです......。
それぞれ多彩な現代アートが展示された空間が12人分、観賞後の満足感も12倍......とは言わないまでも、見ごたえたっぷり。日韓のキュレーターが厳選した旬のアーティスト、みなさんもぜひチェックしてみては?
編集部 飯塚
information
「アーティスト・ファイル 2015 隣の部屋――日本と韓国の作家たち」
会場:国立新美術館
会期:7月29日(水)~10月12日(月・祝)10:00~18:00
※金曜は~20:00、入館は閉館の30分前まで。火曜休館、9月22日(火・祝)は開館
入場料:一般1,000円、大学生500円
http://www.nact.jp/exhibition_special/2015/af2015/