六本木エリアのギャラリーを編集部スタッフの目線で紹介する「六本木ギャラリー探訪」。今回は、国内外の現代アート作品を中心に紹介している「GALLERY SIDE 2」へ。六本木一丁目駅からほど近い住宅街に現れる黒壁のエントランスが目印、ドアのない常時オープンな入り口からするっとおじゃましました。
中に入ると、工場跡のような雰囲気の空間。この日は、2012年に木村伊兵衛賞を受賞したフォトグラファー・田附勝さんが、岩手で行われている鹿猟が放射能の影響で終焉を迎える様子を記録した写真展「おわり。」が開催されていました(4月17日まで)。
ディレクターを務めるのは、島田淳子さん。ニューヨークの大学で美術史を専攻して現地の画廊に勤めたあと、1997年に帰国し、GALLERY SIDE 2をオープン。「私は黒子だから写真はちょっと......」という島田さんをムリヤリ撮影させてもらいつつ(笑)、お話をうかがいました。
――私もそうですけど、アートって敷居が高いイメージがあって。
「アートは、情報を受け取るだけじゃなく、自分と向き合うことができるもの。作品を観て自分の生活を考えたり、昨日見た夢を思い出したり。そういうことをしたい人のためにあるのがギャラリーや美術館。でも、したくない人はしなくてもいい。選択の問題ですから、敷居が高くてもいいと思うんです」
――自分と向き合うなんて怖くてできないです(笑)。
「そう感じる人もいますよね。でも、アートは楽しいですよ。自分の時間感覚で好きなだけ観ていられるし、作品を通して、未来も過去も、現実にはないものさえ観られてしまいます。最近は、20代など若い人でも作品を購入する方がいますね。ポスターとかじゃなくて、同時代の空気が作家の手から伝わる一点ものを置きたいという人も増えている気がします」
――写真なら部屋のインテリアとしても取り入れやすそうですね。
「この鹿の写真はなかなかハードですけどね(笑)。でも、アートって『飾るためのもの』ではないような気がするんです。インテリアとしてカッコイイっていうより、共感できる作品をそばに置いておく。買うことで、作家をサポートするという考え方もありますしね」
――ギャラリーで作品を買うときのポイントは何かありますか?
「その作品をほしい理由が、他人ではなく自分にあることですね。たとえばこのムラタ有子さんの絵の筆づかいが個人的に好き、でも十分。そう感じた作品が、自分という存在が貴重で重要なものだって気づかせてくれる。感じ方はその人だけのもの、ひとりの自由があるのがアートなんだと思います」
――作品を選ぶ選択肢を与えてくれるのがギャラリー、ということですか?
「ギャラリーはパーソナルな場所ですから。ゴーギャンの作品を買うのは一般の人にはあまりにも大変だけど、ここならプライスリストもありますし、買うことを前提に作品を観ることができますよね。『自分の悩みなんてたいしたことないな』なんて思わせてくれる絵に出会うこともあると思いますよ」
――最後に、六本木をデザイン&アートの街にするにはどうしたらいいと思いますか?
「ウチの向かいの駐車場にグラフィティが描かれていて、その隣はお寺。六本木はそういう雑多なものが混ざった街。アートだってそうでしょう、こういう街だからこそアートも生きるのかなと思います。クリエイティブな若い人が、もっと気軽に事務所を持てるような環境になるといいですね」
取材後、「僕におすすめの作品はありますか?」と聞いてみると、「同世代くらいの作家さん、占部史人(うらべふみと)さんは面白いですよ。たこ壷を載せたミニチュアのトラックを......」と、かなり気になる情報が。
島田さんのお話を聞いて、「アートを所有する」ことの魅力が、ちょっとだけわかったような気がしました。
編集部 飯塚
information
「GALLERY SIDE 2」
住所:東京都港区六本木3-3-5 橋本ビル1F
TEL:03-6277-6703
開廊時間:12:00~19:00
休廊日:日曜・月曜・祝日
http://galleryside2.net/