3連休の最終日、11 月24日、六本木ヒルズ森タワー・49Fのアカデミーヒルズにて開催されていた「六本木アートカレッジ」に参加してきました。
六本木アートカレッジは、2011年秋にスタートし、特別開催を含めると今回で5回目の開催とのこと。ファインアート、ファッション、伝統芸能、エンターテイメント、ミュージック、ソーシャルデザインなど様々なテーマのもと、「自分にとっての『アート』とは何か?」を、感じ・考え、自分なりのこだわりのあるライフスタイルを確立するヒントを得られるイベントということもあり、今回も沢山の参加者でにぎわっていました。今回のテーマは、「つなぐ みんなの!」。沢山の講座を自由に組み合わせて受講できる、1日限りのアートスクール。
今回は全20講座が行われたのですが、その中から、六本木未来会議のクリエイターインタビューでも出演していただいた、箭内道彦さん、猪子寿之さん×津田大介さんの講座の内容を前半、後半にわけて、レポートさせていただきます。
クリエイティブディレクター箭内道彦さんによる講座
J-WAVE presents 0円の仕事〜NO LIFEWORK, NO LIFE.〜
1時間の講座をすべてレポートしたいのですが、今回は、心に残ったフレーズやエピソードを中心に...。
まずは箭内さんとアートの関わりから。東京芸術大学の美術学部を卒業していて、当時はアートにどっぷり関わられていたそうですが、学生時代、アートがしっくりくる感覚がなかったそう。というのも、当時の美術に関わる学生の潮流としては、「一生アートをつくり続ける」、そして「アートと共に死ぬ」という気概で日々創作活動に勤しみ、つくりたいものが何かを追求する、そんな姿勢が主流。その中で箭内さんはお金持ちのために1つ1,000万円の壷をつくるよりも、100円均一の茶碗で10万人を幸せにしたい、という感覚を持っていて、卒業後、広告代理店である博報堂に入社するわけですが、当時の美術大学内では、企業に就職することは、社会に魂を売る行為=カッコ悪いという風に見られたんだそう。
博報堂時代も多くの仕事を手がけられ、1996年から、No Music, No Life. というコピーで一世を風靡したタワーレコードのコーポレートボイスをディレクション。こちらは今でもよく耳にするフレーズなので、みなさまにも馴染み深いかも知れません。
ここから講義の本題にはいります。
まず、「ライフワーク」とは?
箭内さんによると、ライフワークとは、「ただ(無償)でもやりたい仕事」のこと。コラムニストであり、「広告批評」の創刊者でもある天野祐吉さんが、仕事をやめて自分のやりたいことだけができる状態を「隠居」とよび、これまで数多くの偉人が、社会的な勤めを終了した後、自分の好きなことをする中で、偉業を達成してきた、と教えてくれました。
そんな箭内さんにとってのライフワークの一つは、フリーペーパー「月刊風とロック」。2005年に1号を発刊し、すでに101号を発刊。箭内さんが編集長、カメラマン、インタビューアー、デザインディレクションなど、一人何役も担っています。出演するのは、箭内さんの好きな人オンリー。自分が自分のお金を出資して発行するものなので、自分の好きなものでコンテンツを構成する、という強い信念があり、創刊以来、ずっと変わっていないポリシーとのこと。
2014年は、100号発刊を記念して、豪華アーティスト陣を迎え、風とロックの主題歌もつくったそうですが、風とロック100号に付録としてつけただけで、一般販売等は全くせず、そんなわけで無料だから印税も発生しないし、アーティストへのギャラも発生しない、そんな「好き」や「楽しい」が集まった、風とロック。TOWER RECORDSで配布しているそうなので、是非、手にとってみてください(一部店舗を除く)。
箭内さんのもう一つのライフワークは被災地支援。こちらは、すでにご存知の方も多くいらっしゃるかもしれないので、今回のレポートでは割愛しますが、これからも、一生続けていく約束を自分自身と故郷とされていらっしゃるそうです。
ここからすごく心に残った内容にはいっていくのですが、講義のスライドタイトルと共にお読みください。
まず...
「なりたい職業より、やりたいこと」
毎日誰かを幸せにする、という感覚を持ったり、今自分のついている職業の中にライフワークを探し続けることが大事。
「giving win」
win-winの関係という言葉はありますが、箭内さんのライフワーク的思考で大事にしているのが、giving winというフレーズ。誰かに何かを捧げるのはもったいない、損している、と感じるのがwin-winですが、実は、人に与えることによって、一番大きな何かを得られるのでは?というgiving win発想を大事に。
「High Risk, No Return」
最近は、Low (またはNo)Risk、High Return という概念が多いようですが、箭内さんの好きな概念は、High Risk, No Return。偶然にも江頭2:50さんも同じ言葉を大事にしているのだとか。すぐにはリターンはなくても、5年、10年たつうちにものすごくすごいものが返ってくるのに気づくかも知れない、とのことでした。
箭内さんの広告にはいつも何かあったかいものを感じていましたが、あらためて、箭内さんの愛を感じる講義でした。まずは、日々の暮らしの中で、ライフワークを探してみようと思います。
イベントレポート後編は、津田大介さん×猪子寿之さんの「突き抜けるアート〜社会と人をつなぐもの〜」を近日公開いたします。お楽しみに。
編集部 井上
Information
イベント名 六本木アートカレッジ
会場 アカデミーヒルズ(六本木ヒルズ森タワー49F) 日時 2014年11月24日(月・祝)10:00~18:30
※イベントはすでに終了しています。 参加費 4,000円
定員 1,000名
主催 アカデミーヒルズ
特別協力 国立新美術館、サントリー美術館、森美術館、凸版印刷株式会社
協力 株式会社umari、AIT、オズマガジン、JAXA、J-WAVE、Discover Japan、ナナクロ社(50音順)
協賛 大林組株式会社
URL http://www.academyhills.com/school/artcollege/2014/index.html