六本木で働く・住む人に、街についてのインタビューをして、リレーで繋げる当企画。今回登場してくれたのは、前回の小川さんがお気に入りの場所としてあげてくれた武蔵野美術大学 デザイン・ラウンジ(東京ミッドタウン・デザインハブ内)にお勤めの山下さんです。
Q 01
六本木といえば_________。(一言で表すと?)
A
「芸術で、街の文化を今まさに変えようとしている街」だと思います。そうした文化政策の事例としては、たとえばロンドンにあるテート・モダンという近現代美術館。もともと火力発電所で、役割を終えて取り壊されるのを待つだけの建物になっていたのを、1990年代に当時の理事会が目をつけて美術館として再生しました。それをきっかけに、まわりのあまり治安のよくなかった工場・倉庫街がどんどん変わっていったんです。
実は私がロンドンに留学していたときの教授が、政治家として、そのテート・モダンをつくったひとりでした。芸術によって地域が変わっていく、変えていくのは面白いなと思って文化政策を研究するようになったのですが、六本木もまさにそういう街だと感じています。
日本でいうと、トヨタの豊田市、旭化成の延岡市、YKKの黒部市など、企業が中心となった地方都市はいろいろあります。関東だと、三井不動産も柏市の柏の葉キャンパスエリアでプロジェクトをやっていますね。既存の街を抜本的に変えようとしているという点で、森ビルと三井不動産による芸術を文化エッセンスとして取り入れた六本木の街づくりは、非常に興味深いと思います。
Q 02
あなたがオススメする、六本木のベスト3は?(飲食店を含む、あらゆるお店でOK)
A
1位 HASEGAWA SAKETEN 酒友
酒屋さんが経営している日本酒専門のバーです。ソファ席も低めにしつらえられていて、おいしいお酒をしっとりと飲める空間。2軒目におすすめですね。「東京ミッドタウン前」交差点近くのペットショップの裏にあります。
2位 HONMURA AN
六本木界隈のお蕎麦屋さんの中ではここが一番のお気に入り。固くて角がピッとしている更科系の麺がいいんですよね~。シンプルだけどすごくおいしい、洗練されたお蕎麦屋さんです。
3位 ぬる燗 佐藤
全国各地の120種類以上の日本酒が揃う日本酒専門のお店です。お酒はもちろんですが、食事もまたおいしいんですよ! 店名のとおりぬる燗がメインですけど、「熱燗にして」って言ったらちゃんとしてくれます(笑)。
Q 03
六本木にある、お気に入りの景色は?
A
仕事場でもあるデザインハブのラウンジから眺める、夕方から夜にかけての景色です。冬よりも夏の季節がいいですね。空の様子がじわじわと夜に向かって変化していく様子が好きです。デザインハブ自体は19時までやっているのですが、デザイン・ラウンジは18時で閉まるので、一般のお客様は見ることのできない、ここで働いている人たちだけの特権。ちなみにミッドタウンにあるビルボードライブ東京からも同じような風景が見られると思います。
Q 04
六本木のアフター5の過ごし方は?
A
うーん、六本木って、「遊ぶ場所」としてはまだ自分には早すぎる気がするんですよね。六本木で遊ぶというと、バブル時代とかサパークラブに行くみたいなイメージがあって。そういう意味では、まだ六本木を遊びきれていないですね。あ、でも、Q2で挙げたようなお店にはよく行っています。アフター5でなく休日なら、アクシスギャラリーやAGITO、TIME&STYLE MIDTOWNに行くこともよくあります。
Q 05
六本木ならではのリフレッシュ方法は?
A
僕にとって六本木は仕事やアクティブなことをするための場所なので、リフレッシュできる場所は思いつかないですね。わりと街自体がいつも張り詰めている感じがあるので。
仕事の息抜きをしようと思ったときには、ミッドタウンの中を探検しています。この間、初めて2階のukafeがあるあたりを発見しました。他にも、地下1階のプレッセプレミアムから浅野屋に上がるエスカレーターから外に出られることに気づいて、そこに置いてあるちょっとしたテーブルで、おじさんたちと一緒に休憩したり。ここの道を行ったら、どこにつながっているんだろう、なんて考えながら歩くと面白いですよ。
Q 06
身の回りのお気に入りのデザインは?
A
「カンパーナ・ブラザーズ」というブラジルの兄弟がデザインした "Sushi Bowl" 。5年くらい前にサンパウロ近代美術館で購入した、直径30センチくらいの入れ物ですね。日本ではほとんど売っていないし、売っていたとしてもものすごく高価なので......。
カンパーナ・ブラザーズは、どこにでもあるいろいろな素材をぎゅっと詰め合わせて作品にしています。"Sushi Bowl"はSushiロールをイメージしたフェルト素材でできていて、他にも端材でつくった椅子だとかユニークなものがたくさん。文化性や素材感の中に時代性が表現されている。その場所にいる、その人でないとつくれないものが好きなんですよね。
Q 07
六本木をもっと良い街にするには?
A
景観が良くなるとか街の人の質が良くなるとか物価が上がるとか、一言で「良い街」といってもいろいろな側面があると思います。それらを総合して、抽象的に「もっと良い街」にするならば、何にせよとにかく森ビルと三井不動産に頑張ってもらうしかないですよね(笑)。
芸術で街を変えるには、率先して引っ張っていく誰かが必要。ただ六本木の場合、もはや国や都の力でどうしようという段階ではないような気がしていて、ある程度のプロパティとかリソースを持っている企業が変えていく方が合っていると思います。その立場にいるのが、ビジネスとして街に関わっている森ビルと三井不動産。東新宿でいう伊勢丹にも、同じようなイメージがありますね。どんどん頑張ってほしいと思います。
Q 08
前回出演した方(小川さん)とのつながりを教えてください。
A
デザインハブで月に一度行われている「折詰め会」に、小川さんが参加してくれているご縁で知り合いました。
no.022
山下 亮さん
30代・アシスタントディレクター
六本木歴2年半