今回の展覧会レポートは、サントリー美術館からです。
3月29日(土)から始まった「のぞいてびっくり江戸絵画―科学の眼、視覚のふしぎ―」展の内覧会に参加してきましたので、レポートします。
今回の展示は、江戸時代後期に西洋科学によってもたらされた<視覚文化>の変化が主となっています。全部で5つの章に分けられており、それぞれ異なった技法が盛り込まれています。展示期間の前半と後半で展示内容が変わるという事なので、どちらもご覧頂けると更に楽しんでいただけると思います。
さて、江戸時代後期は徳川吉宗の輸入緩和によって西洋文化がたくさん入ってきた時代。 それまでの日本芸術にはなかった手法が積極的に取り入れられるようになりました。
第1章では、遠近法を採用した絵画が紹介されています。手前のものは大きく、奥の景色は小さく、という現代美術の基礎はこの頃から日本にとりいれられたものだったのですね。和洋折衷のはじまり、といった印象を受ける作品たちです。今回の展示では、特に時代背景や科学技術の影響を一つ一つじっくりとご覧いただきたいと思います。
第2章では、鳥瞰図をテーマに展示されています。こちらは、当時の望遠鏡。竹で作られた屈折式で、とても長いものとなっています。次の第3章では顕微鏡が紹介されており、こういった西洋からの「視覚」に対する技術が、新しい美術作品の制作に大きく役立ったという事が今回の展示のポイントです。
顕微鏡の出現で研究されるようになったのが、雪の結晶のパターン。こちらの図説では、多様な雪の結晶が記されています。また、雪華文様は、当時の古河藩主・土井利位の印籠にモチーフとしても使用されました。
そして、「のぞいてびっくり!」というタイトルの通り、こちらの展示は穴をのぞくと立版古が!立版古は、江戸時代に楽しまれたペーパークラフトのおもちゃのようなもの。遠近法に加えて立体的な視覚効果が得られる画期的な表現方法で、見る人を驚かせます。
江戸時代の美術...というと、なんだか難しそうで腰がひけてしまいますが、今回の展示は子供も楽しめる、遊び心のある作品が盛り込まれています。
今回、私の中で一番の見どころは、こちらの影絵。
みなさんご存じの、歌川広重の作品です。滑稽な男の恰好が現在でも人々を楽しませます。 バリエーションも多く展示されていて、教科書に載っていた作品が実際に見られるなんて感動!
江戸時代後期は、"光と影"に対する意識が高まり、それらに注目した作品が発展していった時代でもありました。光と影を意識することで、作品に更に趣が感じられるようになっています。
これまで江戸絵画にほとんど目を向けてこなかった私ですが、今回の展示を拝見して江戸文化の面白さが少しわかったような気がします。
後半には、メインビジュアルとして使用されている「みかけハこハゐがとんだいゝ人だ /歌川国芳/町田市立博物館」も登場するそうなので、是非足をお運び頂き、江戸文化に触れていただきたいと思います。
【編集部 T】
展覧会名:「のぞいてびっくり江戸絵画―科学の眼、視覚のふしぎ―」展
会場:サントリー美術館 東京都港区赤坂9-7-4 東京ミッドタウン ガレリア3階
会期:2014年3月29日(土)~5月11日(日) ※作品保護のため会期中、展示替をおこないます。 ※各作品の展示期間については、美術館にお問い合わせください。
開館時間:10:00~18:00 (金・土は10:00~20:00) ※4月28日(月)、5月4日(日)、5月5日(月・祝)は20時まで開館 ※4月19日(土)は「六本木アートナイト」のため24時まで開館 ※いずれも入館は閉館の30分前まで ※shop×cafeは会期中無休
休館日:毎週火曜日 ※4月29日(火・祝)、5月6日(火・休)は開館
入館料: 一般 当日 1,300円/前売 1,100円 大学・高校生当日 1,000円/前売 800円 ※中学生以下無料 ※障害者手帳をお持ちの方は、ご本人と介護の方1名様のみ無料 ※4月19日(土)は「六本木アートナイト割引」のため一般および大学・高校生は一律500円
割引:きもの割:きものでのご来館で100円割引 HP割:ホームページ限定割引券提示で100円割引 携帯割:携帯/スマートフォンサイトの割引券画面提示で100円割引 ATRo(あとろ)割:国立新美術館、森美術館の企画展チケット提示で100円割引
音声ガイド:500円 ※英語版もございます。
主催:サントリー美術館、朝日新聞社
協賛:三井不動産、三井住友海上火災保険、サントリーホールディングス
展覧会ホームページ:http://suntory.jp/SMA/