今年初めての展覧会レポートはサントリー美術館からです!
1月25日(土)から始まった「IMARI/伊万里 ヨーロッパの宮殿を飾った日本磁器」展の内覧会に行きましたので、レポートいたします。
<ドイツ・ベルリンのシャルロッテンブルク宮殿「磁器の間」の拡大写真パネル>
「伊万里焼」の展示ということで、和風のイメージを持って行った展覧会ですが、今回の展示は単なる伊万里焼の展示ではありません。
17世紀初頭のヨーロッパ貴族の高級実用品として愛され、輸出をされた伊万里焼ですが、今回は、この輸出用伊万里を中心に展示をしている、いわば「里帰り展示」です。
会場で驚かされるのは、展示スペースの至るところにヨーロッパ宮殿をイメージした装飾が施されていたり、実際の宮殿内写真が会場を彩っている点。これは、宮殿を訪れた気分で楽しめるように工夫されたもので、展示装飾とともに展示作品を鑑賞すると、伊万里という日本の陶磁のイメージが全く変わります。
展示は1660年代の輸出開始時代から1750年代の公正な輸出時代終焉までを4章で構成しています。
第1章では、青磁の染付焼物を中心に、中国の技術を取り入れた伊万里焼も、中国の模写が多い印象です。日本の生活様式に合った器やポットではなく、どことなくヨーロッパの生活様式を感じることができる形にも注目です。
第2章では、柿右衛門様式が登場。ドイツの有名な陶磁器メーカー「マイセン」の図案にある「ドラゴン」のシリーズは、当時の伊万里焼の柿右衛門窯をはじめ、中国の景徳鎮窯などの図案を写したと言われています。
繊細な色絵の磁器の数々、私たちが現在使っている西洋陶磁器のルーツが日本にあるなんて、なんだか不思議な気分です。日本人の持つ繊細な絵付けはヨーロッパ貴族を魅了したに違いありませんよね。
<色絵相撲人形(二組)>有田窯 1680-1710年代 大阪市立東洋陶磁美術館
私が、この第2章で異質だと思い注目したのがこの相撲人形。
柿右衛門様式のこの色絵相撲人形は、日本の伝統芸能を活き活きと感じます。この作品は同種のものがイギリスのバーリー・ハウスにもあるそうで、一説には、ドアストッパーとして使われていたのでは、といわれています(笑)。
第3章では、ヨーロッパの宮殿や邸宅を彩った絢爛豪華な作品が登場します。
左右対称になった大型の壺や瓶など、見ごたえのある作品が宮殿をイメージした装飾とともに楽しむことができます。
まさに最盛期のヨーロッパの宮殿にふさわしいダイナミックな作品の数々です。
3Fのシャルロッテンブルク宮殿の拡大写真パネルの横に展示されたティーカップのディスプレイにも注目です。鏡張りのキューブにディスプレイすることで、まるで沢山のカップが飾られているように見える工夫がされていますね。
(左)<色絵傘美人文皿>中国・景徳鎮窯 清時代・1730-40年代 佐賀県立九州陶磁文化館
(右)<色絵傘美人文皿>有田窯 江戸時代・1730-40年代 大阪市東洋陶磁美術館
第4章はいよいよ輸出時代の終焉です。 2つの絵皿が並べて展示されたこの陶磁は、オランダ人の画家が描いた美人図をもとに、中国の景徳鎮と有田でつくられたお皿ですが、同じ原画で構図は同じですが、微妙に違いがあります。よくよく見ると、日本でつくられた皿は、夫人の服装が日本的になっていたりと、オリジナルの美人図に代わっているのです...! 私はこの作品を見て、この頃から、価格競争などの市場に挑戦するための「日本らしさ」「オリジナリティ」を意識していたのではないか、という意識の高さを感じました(実際にそうであったかは定かではありませんが...)。 こうした絵付けや繊細なタッチの作品は、ヨーロッパに輸出された陶磁にも、現在の日本のものづくりのルーツを思わせるものであると、改めて外(海外)から日本を見た気持ちです。
日本では馴染みのない脚がついたコーヒーポット(温めながら飲めるように工夫されたもので、中東由来なのだそうです)など、ヨーロッパを彩った日本の磁器を存分に感じながら、この展示を楽しんでください。
ちなみにこれらの作品のほとんどは、この後2015年12月に台湾の故宮博物館のオープニング展を飾るために3年間貸し出されるそうで、日本には当分里帰りができません。 この期間に、是非ご覧ください。
【編集部 M】
【展覧会名】
「IMARI/伊万里 ヨーロッパの宮殿を飾った日本磁器」展
【会期】
2014年1月25日(土)~3月16日(日)
【休館日】
毎週火曜日休館
※2月11日(火・祝)は開館
【開館時間】
10:00~18:00 (金・土は10:00~20:00)
※2月10日(月)は20時まで開館
※いずれも最終入館は30分前まで
【会場】
サントリー美術館
【主催】
サントリー美術館、読売新聞社
【協賛】
三井不動産、あいおいニッセイ同和損保、サントリーホールディングス
【観覧料】
一般:1300円、大学・高校生:1000円、中学生以下無料
【展覧会ホームページ】
http://suntory.jp/SMA/