なんだか涼しい日々が続き、過ごしやすい毎日ですがいかがお過ごしでしょうか。会期の始まる展覧会も多いこの頃、先日はサントリ―美術館にて行われております「生誕250周年 谷文晁」展のプレス内覧会に参加してきました。
こちらは関東南画の大成者である谷文晁(たにぶんちょう 1763~1840)の生誕250周年を記念し行われる展覧会です。文晁は狩野派、円山、四条派、土佐派、洋風画からも影響を受け、さまざまな様式の作品を残しています。
今回の展覧会は作品ももちろん見所ですが、谷文晁の人としての魅力を感じることのできる展示になっていると学芸員の方からお話がありました。
こちらは谷文晁のプロフィール。好きなことは「米を食べること」と「早起き」なんだか面白いですね。
展示は序章~第四章と分かれており、文晁の人脈の広さや作品の素晴らしさを感じることができます。
文晁の画風は「八宗兼学(はっしゅうけんがく)」とよばれる貪欲なまでの学習態度が反映されており、彼の画風を定義することは容易ではありません。序章ではそんな〈様式のカオス〉とでも呼ぶべき様相である文晁の画風を知ることができます。
文晁は10歳の頃、加藤文麗(1706-1782)に入門します。文晁の"文"は文麗の"文"からとったそうです。文麗の画風は、当時の江戸狩野派によく見られる荒々しい運筆を特徴とし、文晁の初期作にも影響を与えています。そして、17、18歳頃には中山高陽門下の渡辺玄対(1749-1822)に師事します。画業の草創期に様々な画風に触れたことが、後に文晁の幅広い画域に大きく影響しているのです。
そして文晁を語るのに欠かせない人物が、松平定信です。文晁は田安徳川家に奥詰見習として五人扶持を受けて出仕し、老中松平定信(1758-1829)に認められて近習となります。それから文晁は定信の江戸湾岸巡視に同行し、各地の風景の写生を担当しました。また定信の命を受け、全国の古社寺や旧家に伝わる古文化財を調査します。この調査時の模写と記録は、全85巻の刊本『集古十種』として刊行されました。
そして今回の展示の目玉は「石山寺縁起絵巻」でしょう。松平定信は、古文化財の保存・整理分類からさらに一歩進めて、過去に失われた作品の復元に着手しました。「石山寺縁起絵巻」は巻六・七は詞書のみが存在し、絵を欠いていましたが、お抱え絵師の文晁によって補完され、約500年かかり完成したのだそうです。「石山寺縁起絵巻」(石山寺蔵)を文晁が写した模本がサントリー美術館所蔵となり、修復後初公開となります!
こちらはぜひその目でご覧ください。
最後の章ではさらに文晁の人との深い関わりを知ることができます。『集古十種』編纂のために訪れた大坂では、当時の文化ネットワークの中心人物であった木村蒹葭堂と出会います。文晁は後に蒹葭堂の肖像を描いており、親しい交流は蒹葭堂が没するまで続いたそうです。またその他にも多くの絵師と交流を持ったり、教育者としても優れていた文晁は渡辺崋山など、多くの門人たちを育てました。
このように文晁の人生を辿りながら作品を見ていると、文晁の人脈の広さ、また文晁という人物の魅力を感じることができますね。作品の細かさや美しさも素晴らしく、一つ一つじっくり見てしまうものばかり。
ぜひ皆さまも谷文晁の魅力を感じてください。
編集部アシスタントS
[展覧会名] 「生誕250周年 谷文晁」
[会場]サントリー美術館
[会期] 2013年7月3日(水)~8月25日(日)
10:00 - 18:00(金・土および7月14日(日)は10:00~20:00)※最終入館は30分前まで
[休館日] 火曜日※8月13日(火)は18時まで開館
[入場料] 一般:1300円、大学・高校生:1000円、中学生以下無料
[住所] 東京都港区赤坂9-7-4 東京ミッドタウン ガレリア3階
[展覧会ホームページ] http://suntory.jp/SMA
※展示替えあり