六本木を遠く離れて、イタリアはミラノにやってまいりました。目的はデザイン業界では毎年この時期になると話題にあがる「ミラノサローネ(正式名称 i saloni)」。正直、これまでいろいろな雑誌やインターネットでミラノサローネについて調べてみたり、聞いたりしていたのですが、「国際家具見本市」という言葉のみが先行して、結局はどんなイベントなのか、といことがよくつかめていませんでした。
そこで、今週の編集部ブログは、ミラノサローネからのレポートを織り交ぜつつ、展開してこうと思っています。
さて、ミラノ初日。サローネの時は毎年寒い日が多いそうですが、あいにくの雨模様のミラノ・マルペンサ空港。昨日はTシャツを着るくらいの陽気だったようなので、気温は一気に急降下。
空港から市内中心部へは車で40分程度。天気のせいか、車から見る景色は春はまだまだ遠いという印象です。
ホテルチェックイン⇒ランチを経て、早速視察開始です。(ミラノグルメレポートは後日。)
ミラノサローネの公式スタート日は明日、4月9日(火)から。本日はプレスデーなので、一般の人が入れないところも多いのですが、まずは、すでに自由に見ることができる所が多い、「ミラノ大学」から。ミラノの中心のドオモ広場から徒歩数分のところにあります。
ここでの見どころはパナソニック株式会社によるインスタレーション「Energetic Energies」。太陽光パネルによる「創エネ」、蓄電池による「畜エネ」、LED照明による「省エネ」。これらによるエネルギーマネジメントを、都市のプロジェクションを通じてエネルギーの情景として見せています。昨年もここミラノ大学でのインスタレーションに出展していたのですが、今年も手がけたのは注目の建築家平田晃久さん。
未来の都市の模型のようなものをつくろうと思った、と語る平田さん。エネルギーと都市の関係性について考えさせられる内容でした。天井から街に暮らす人たちのプロジェクションがされていて、動的な側面も見え隠れします。中にはキャッチボールをしている人なども登場するので、是非見つけてください、とご担当の方がおっしゃっていました。
地元ミラノの小学校のこどもたちと行灯をつくってエネルギーのことを考えるワークショップも実施しているそうで、明日は13時からこどもたちがつくった行灯とともに登場するそうです。
ミラノ大学内の講堂では、オープニングのレクチャーが開催されていて、平田さんも登壇されていました。
大学内には他にも沢山のインスタレーション展示が。
「ハイブリッドな建築とデザイン」というテーマを掲げているこのエリアでは、国際家具見本市ということばを大きく超えるインスタレーションが多いことが印象的でした。また、一つ一つの作品の構造が本格的で、常設展示です、といわれればそうみえるものもいくつかあり、若手の作品が多いというエリアでしたが、ミラノクオリティーを感じました。
さて、本日後半に訪れたエリアは、市内から車で10分程度のところにある、「トルトーナ地区」。ここでも年々展示を行うメーカーやデザイナーが増加しているそうですが、メイン会場のスーパースタジオ周辺を中心に、街中に展示場が点在しています。
まずは株式会社カネカの展示へ。有機EL照明の幻想的な空間"Infuse"。空間デザインは株式会社シナトの大野力さん。そして照明デザインは岡安泉さん。コンセプトは「環境に潜む光」とのことですが、実際に大野さんに見どころをレクチャーしていただきました。
有機ELが無数に立ち並ぶ床面には横の壁からスモークが流れ出し、幻想的な光を演出しています。何かを照らしているのではなく、光自体を見せるのではなく、その中間の光の状態を演出したいとのことで、波うち際にたっているような、光と空間の間に境界線がない空間が広がっていました。ずっとたっていると幻想的であり、かつ未来的な場所にたっているようです。
テキスタイルデザインは安東陽子さん。天井の布には入口側からみると、ゆらゆら光が揺れて見えるようにスーパーオーガンジーという、金属の細かい粒子をスパッタリングした(ふきつけた)技術が利用されています。反対側にはカラーリングがされていて、はいった時とでる時の光の見え方が変わります。
光が空間に染み入る、不思議な体験ができました。
トルトーナのもう一つの注目インスタレーション、IXI supported by 東芝による展示「SOFFIO」。soffioとはイタリア語で呼吸や息吹という意味だそうですが、先ほどの会場でもお会いしたデザイナー岡安泉さんがこちらも手がけているそうなので、見どころレクチャーをお願いしました。
LEDの光が単に省エネや光源として存在するのではなく、それを超えた力があることをインスタレーションで表現したかったとおっしゃっていましたが、この展示では空間に人工的に小さな輪っか状の虹をつくりだしていました。イメージでいうと蛍の光のようでしたが、確かに、利用されているのは、LEDで、どこの家庭でも利用されているような光なのですが、そこには全く違った表現として演出されていました。
この会場を見終わった後は、トルトーナ地区にひろがる無数の展示会場へと繰り出します。印象的だったものをいくつか写真で紹介します。
そして、一番インパクトがあったのがこちら。moooiというブランドの展示会場。そのスケールにまず脱帽。まるでリアル店舗にいるような大規模な展示で、ミラノでの力の入れようを感じさせます。家具とアートが壮大に融合する美術館のようでした。
ミラノサローネの特徴として、デザインに興味があるデザイナーさんだけでなく、ミラノの人全員が観客となってイベントに足を運ぶことだそうで、サローネの時期は多くの人が会場におしよせ、デザインにふれて、自分なりのデザイン論をあちこちで日常的に話しているそうです。
そしてこのトルトーナ会場ですが、インスタレーションに利用されている空間は空き倉庫などではなく、普段は縫合や車など様々な工場や店舗がある区画を利用しているそうです。ミラノサローネの時期になると、店舗営業を一時停止して、中を空っぽにして希望出展者を募り空間を有料で貸し出す、そういうビジネスモデルなのだそう。普段は花屋だったり、自動車整備工場だったり、様々だそうですが、展示のために休業する仕組みがエリア全体でおこっているのはすごいことです。
本日の見学はここで終了。明日はいよいよメイン会場である、フィエラへ向かいます。続きのレポートをお楽しみに。