最近社会人になった人で、平成生まれがいるという事実に衝撃をうけたりしているけれども、確かに今年は平成24年。小渕元総理が昭和から平成へかわる際に、「平成」と筆書でかいた紙を掲げていた姿を思い出せる人もどんどん少なくなってしまうのだろうな、と時代のうつりかわりを感じる展覧会が現在フジフイルムスクエアで開催中です。
「昭和の記憶」〜写真家たちが捉えた復興と発展〜展では、64年間続いた昭和のうち、昭和7年(1932年)〜44年(1969年)に撮影された、首都東京の街と暮らしを写した写真が約150点展示されています。
木村伊兵衛、土門拳、濱谷浩、林忠彦、薗部澄、長野重一、田沼武能、熊切圭介という写真家8名による作品は、時代を鮮やかに切り出します。
銀座、浅草、新宿、渋谷など、現在の都心の写真が多く、今の姿と、昭和の頃を想像しながら比較することも面白いのですが、そんなに遠い昔ではない、昭和という時代が、すでに歴史となっている様がありありと描かれていて、これから30年後の未来を描きながら、今最も新しいと思っているものが全く古くなってしまうのかもしれないといった不安も描きだす、すごく引き込まれる展覧会でした。
1.モダン東京と下町
2. 戦時下の東京
3. 廃墟からの出発
4. 復興する街
5. 子どもが沢山いたころ
6. もはや戦後ではない
7. 所得倍増計画
8. いざなぎ景気
展覧会は上記の順で当時の写真が展示されているのですが、それぞれの時期を象徴する文化が散りばめられているのが本当に印象的でした。
マネキンガール、リフトガール(エレベータガール)、レコードガール(喫茶店でレコードをかけるスタッフ)といったガール族、モボ・モガと呼ばれたモダンボーイとモダンガールが溢れていた銀座。「今日は帝劇、明日は三越」というその時代のコピー。ストローハットのクリーニング。渋谷のハチ公の歴史、銀座のビアホールの昔、少子化の今とはまったく反対で、こどもが沢山いたころ。今その時代のこどもたちは団塊の世代と呼ばれ、定年を向かえている世代。花火大会は今も昔も多くの人が押し寄せて、空を見上げていたのだ、とか。プロレス中継への国民の関心は、今のサッカー中継につながるな、とか。当時のサラリーマンの様子。モーターショーの人気。高速道路が走る前の日本橋。高層ビルが連立する前の東京。札束を数える百貨店の女性店員(この札束の数はとてつもない)。そして極めつけが、うなぎ昇りの景気を象徴する赤坂の高級クラブ「ミカド」の写真。1,000人のホステスがフロアを埋め尽くす風景は、まさに昭和を象徴しているように見えます。
同時に、大正12年(1923年)の関東大震災後6年間半かかった復興後の街並みや、戦中東京大空襲で焼け野原となった東京が復興していく様子を10年単位の時間軸でみると、未曾有の震災にみまわれた後の復興へと希望を抱けたりもする。
写真が持つ意味をあらためて感じさせられた展覧会でした。9月23日には、記念トークショーも開催されるようですので、ご興味のある方は是非。
昭和33年から東京をずっと見下ろしてきた東京タワー。今日はなんだかタワーとともに多くの歴史を感じる一日でした。
編集部R
【展覧会情報】
[展覧会名] フジフイルムスクエア企画展 「昭和の記憶」展 -写真家たちが捉えた復興と発展-
[会場] フジフイルムスクエア(ミッドタウン・ウエスト1F)
[会期]開催中〜9月26日(水) 10:00-19:00 ※入館は終了10分前まで
[料金] 入場無料
[休館日] なし
[住所] 東京都港区赤坂9-7-3 東京ミッドタウン内 ミッドタウン・ウエスト1F
■記念講演会が開催されます。
9月23日(日)14:00-15:30 ※要予約 詳しくは公式サイトから。