みなさんこんばんは。「六本木未来会議」編集部のIです。現在台風が関東を直撃しています。暴風域にはいって、帰りが大変そうです。
さて、先日、森美術館で行われた「アラブ・エクスプレス展:アラブ美術の今を知る」のプレスプレビューにお邪魔してきました。
本展覧会では、アラブ諸国の人々のリアルな生活に直結する「日常」というキーワードを中心に、総勢34組のアーティストによる作品群を観る事ができます。
皆さんはアラブと聞いてどんなイメージを連想されますか?
個人的なイメージと言えば、石油、砂漠、中東、イスラム教、ドバイと、ニュースなどでたまに耳にする情報ぐらい。さして分かっておりませんが、まずは作品を見て回る事に!
展示構成は
「1:日々の生活と環境」、
「2:「アラブ」というイメージ:外からの視線、内からの声」、
「3:記憶と記録、歴史と未来」、
「4:アラブ・ラウンジ」と、4つのセクションに分かれており、その中でも個人的に印象に残った作品をすこしご紹介します。
※写真1
リーム・アル・ガイス
《ドバイ:その地には何が残されているのか?》
2008/11年
写真はリーム・アル・ガイス氏の作品。一見すると工事現場の様にも見えますが、細部を良く観てみると労働者やビルなど様々なモチーフがちりばめられています。作品のタイトルにもあるように、急速に変化を遂げるドバイの現実に疑問を問いかけるダイナミックな作品でした。作者が女性というところも個人的には驚きです。
※ 写真2
アハマド・マーテル
《マグネティズム》
2012年
Courtesy: Edge of Arabia
この2枚の静かなモノクロ写真は、磁石と砂鉄を利用し科学的な現象を捉えた作品です。しかしイスラム教徒が一生に一度訪れるべき、カアバ神殿への巡礼風景を連想させます。砂鉄の粒ひとつひとつが、だんだん人にも見えてくるのが面白いです。
※ 写真3
ちなみにカアバとはアラビア語で立方体と言う意味だそうです。
続いてこちらの作品は、難しい会議に参加している男達を描いている様ですが、ところどころ女性のシルエットが紛れ込んでいます。彼らの妄想の様にも見え、権力者たちの無関心を避難している様にも思える作品でした。この作品を観ると、ふと日本の国会で居眠りしている議員の風景が思い浮かびました。
※ 写真4
ジャアファル・ハーリディ
《グッド・スタンプ》
2009年
所蔵:バルジール芸術財団、アラブ首長国連邦、シャルジャ
この作品は、作者が米国に旅した際、彼がイラク人であることを知った米国人が口々に発した言葉を作品にしたものだそうです。
イラク戦争による米軍の介入を謝罪しているのか、イラクの悲惨な境遇を同情しているのか? 真意が判然としないこの言葉を、ピカピカ光る電飾で飾ったユーモラスな作品。いったい謝る気があるのか無いのか?鑑賞者の気分によっても捉え方もかわりそうですね。
※ 写真5
アーデル・アービディーン
《アイム・ソーリー》
2008/12年
※ 写真6
そして個人的にもっとも印象深かったのはこちら。街や広場の美しい風景写真にみえますが、実はタイトルにもある通り、過去に公開処刑が行われた同じ場所、同じ時間に撮影された作品です。見ている作品からは想像し難いショッキングなシーンを打ち消す様に撮られた写真は、まるで嫌な事や都合の悪い事を忘れようとする人間の思考や、忘れてはならない過去の歴史等に危機感や疑問を問いかけている様にも。美しい写真から、多様な解釈や視点を想起させてくれる作品でした。
他にも紹介したい作品が沢山ありましたが、今回はこのあたりで。日本初となる「アラブ・エクスプレス展」、見終えたあとすこしアラブが身近に感じられる素敵な展覧会でした。皆様も是非足を運んでみてください。
※ 写真7
ハラーイル・サルキシアン
《処刑広場》
2008年