PROJECT REPORT インタビューで得たクリエイターのアイデアを、リアルな場で実現する「アイデア実現プロジェクト」

六本木未来会議アイデア実現プロジェクト#07 「六本木未来大学」第12回「田川欣哉さん、テクノロジーを使った クリエイティブ組織の作り方って何ですか?」講義レポート【前編】

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update_2017.6.21/photo_mariko tagashira/text & edit_akiko miyaura

UI・UXのデザイン設計、プロダクトデザイン、インタラクティブアート、ブランディングなど、自らもデザインエンジニアとして幅広い分野で活躍しながら、「Takram」代表としてクリエイティブ組織を創造してきた田川欣哉さん。今回は、「はじめて社外の人に話す内容が大半」という"Takramのつくり方"や具体事例とともに、組織づくりの考え方、経営論、人材育成法などを明かしてくれました。2017年6月2日(金)に行われた、その講義の模様をお届けします。

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いかに学び続け、牽引し続ける人たちでいられるか。

この日の会場は超満員。「今日はTakramの中の人間も知らないような、Takramの会社のつくり方をバラしてしまおうという会にしようと思って(笑)。この日のためだけに、スライドを作ってきました」という、田川さんの大胆な宣言から講義が始まりました。

Takramは、2006年に田川さんの自宅の押入れにパソコンとイスを入れ、仲間と2人で起業したのが始まり。11年目を迎える現在は40名以上のスタッフ、東京・ロンドンの2拠点を抱える会社へと成長しました。もともとはデザインとエンジニアリングが仕事のベースでしたが、近年はブランディングや政府のビッグデータプロジェクトなど、手掛ける領域がどんどん広がっています。

「仕事の広がりにともなって、最近、Takramでは自らのビジョン、コアバリュー(価値観)についても、議論を進めています。"デザインイノベーションファーム"という基盤を持ちながら、国境や分野、文化など、さまざまな境界線を飛び越える仕事をしていきたい、というのが僕らのビジョン。そして、"ラーニング・オーガニゼーション""デザイン・ソート・リーダーシップ"といった考え方をコアバリューとして掲げようとしています。いかに学び続ける組織であれるか、デザイン思考にとどまらず、デザイン哲学にまで高めながら、周りを牽引できる人たちでいられるか。そんなことを論議しながら、日々、仕事に取り組んでいます」


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会社の課題を解決しながら、"まったく違う会社"へと変遷。

「外部の方に見せるのは恥ずかしいんですが」とスライドに映し出したのは、Takramの歴史。「押入れ起業」「無理な採用」など遊び心あふれる注釈が入ったグラフには、スタッフ数の推移と共に、「パイプライン導入」「国際化開始」といった組織の変化のタイミングが記載されています。

「大きくわけて、Takramは3つのフェーズを経験してきました。創業直後のフェーズ1の当初は大きな仕事もなく、時間を持て余していた時期です。そんなとき、『すごく難しくて、絶対失敗するプロジェクトだけどやる?』と声をかけてくれた人がいて。『何でもやります!』と挑戦したのが、NTTドコモさんのプロジェクトでした。それを機に猛烈に仕事が広がったのですが、同時にスタッフの補充が追いつかず、無理をして人を雇う中で、組織としては2年ほど足踏みをすることになりました」

そして、組織運用のスタイルを変えたのが創業6年目以降のフェーズ2。

「フェーズ1は "トップダウン型"の組織でした。それをフェーズ2では、経営上の役割を皆で分散して運営する"チーム型"に移行。ほかにも個別のプロジェクト運営はリードと呼ばれるプロジェクトリーダーに任せる方式へ、問題対応は"自分たちで考える"のではなく、"顧問陣に任せる"ようにするなど、フェーズ1のころとはまったく違う運営に変わりました。それらが奏功して、現状は健康的で超ホワイトな優良企業になりました(笑)。そして、昨年からは国際化を進めるフェーズ3に突入したところです」

【クリエイティブディレクションのルール#1】
仕事はチーム型にしてフラットな組織をつくる


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個人の持つ複数スキルは融合させず、分人化する。

Takramは、仮説を立てて実験を行う"プロトタイピング"に長けた集団。さまざまな分野において、新しいプロセスやアプローチ、ジャンルを生み出しながら、これまでにない価値を具現化し続けています。その骨格となるのが、「BTC」という考え方。

「ビジネス(B)、テクノロジー(T)、クリエイティビティ(C)の3要素を連動させながら仕事をするスタイルは、Takramの1つの特徴だと思います。もともとはTC軸のデザインエンジニアリングを主軸にしていたのですが、仕事をやればやるほど、Bを取り込んでいく重要性を実感するようになりました。集団、チームはもちろん、個人としてもBTCの各要素をどう取り込んでいくかは大きな課題。TC型、つまりデザインエンジニアリングを例にとると、デザインとエンジニアの中間的存在になることではなく、両方の専門性をキープしたまま、二つの領域を行ったり来たりしながら仕事をするのが僕らの目指すところです」

つまり、複数の専門性を"融合"するのではなく、適材適所で使い分けるようなアプローチができるハイブリッド人材を育成するということ。

「AとBを溶かし合わせて反応が起き、Cという違う物質になるのが融合ですよね。だとするとCが生まれた瞬間、AとBの要素はなくなってしまう。それは、ちょっと違うんじゃないかと思っているんです。先ほどのTC型=デザインエンジニアリングで言うと、デザインをしている時はプロのデザイナーとして考え、エンジニアリングの仕事をしている時は高いレベルでエンジニアとしての役割を果たす。デザイナーの自分とエンジニアの自分、どちらも捨てず、融合もさせず、2つの間を高速で行ったり来たりするような人材のイメージです。そのようなハイブリッドな状態を僕らは"振り子"とか"分人性"と呼んでいます。ちなみに僕の中には、多重人格的にエンジニアの自分、デザイナーの自分、マネジメントをする自分、の3つの人格がいて。その人格たちのハイブリッドな集合体が、僕という個人になっているという感覚なんです」


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細かいディテールを見る視点と全体を見る視点を具備する大切さ。

続けて、イノベーションを駆動するタイプのチームや個人の特徴は、「越境性と超越性」の2つの特徴を併せ持っていることだと、田川さんは言います。

「越境性というのは、分野を超えること。例えば、ソフトウェアのエンジニアが、ハードウェアのエンジニアリングをやってみるというようなことです。専門分野のフィールドを超えていくという意味で使っています。この越境性が水平方向のジャンプだとすると、もう1つのジャンプが垂直方向の超越性。よく"鳥の目と虫の目"という言い方をされますけど、細かいディテールの話をした次の瞬間、目線を思い切り引いて全体を見るというようなことです。企業のエグゼクティブが判断する目線まで上がって、物事全体を見るという話も、超越性。このように、越境性と超越性の両方を備えることが、具体的な形でイノベーションを起こす上では欠かせない要素だと思っています」

【クリエイティブディレクションのルール#2】
複数の専門性を持つハイブリッドな人材を育成

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