PROJECT REPORT インタビューで得たクリエイターのアイデアを、リアルな場で実現する「アイデア実現プロジェクト」

六本木未来会議アイデア実現プロジェクト#04 森の学校 by 六本木未来会議 2015

update_2015.11.18 / photo_chikako murabayashi / text & edit_yosuke iizuka

「森の学校 by 六本木未来会議 2015」イベントレポート
青空教室と絵画教室。あらゆる人に開かれた、屋外の学び舎。

「Tokyo Midtown DESIGN TOUCH 2015」の期間中に行われた「森の学校 by 六本木未来会議」は今年で2回目。"校長"を務めた椿昇さんを含めた9人の先生たちが、10月17日(土)、18日(日)、24(土)の3日間、青空のもとで屋外授業を行いました。また、今回からあらたに、芝生の上で自由に絵を描ける「絵画教室」も開催。10月16日(金)から24日(土)の9日間にわたって、「見えない根っこを描いてみよう」をテーマに、たくさんの人が参加しました。子どもも大人も楽しんだ、屋外で行われた2つのプログラムの様子をお届けします。

鈴木康広/撮影:青木遥香 ドミニク・チェン/撮影:新津保建秀

こちらは「青空教室」の時間割、椿校長推薦のクリエイターによる授業が9コマも。座学にワークショップ、ディスカッションに体操と、多彩なラインナップとなりました。まずは初日に行われた、鈴木康広先生の授業からどうぞ。

自分のイメージと誰かのイメージの「間」にある境界線。
〈感察〉「感覚の線をひく」鈴木康広先生

10月17日(土)、雨のため館内での開催となった1限を担当したのは、クリエイターインタビューにも登場してくれた現代美術家の鈴木康広さん。内容は、参加者のみなさんに「『六本木』と聞いてイメージする色」の色鉛筆を持参してもらい、"感覚の線を引く"というもの。まずは、一人ひとり、持参した色鉛筆で六本木のイメージを紙に描いていきました。

「みなさん、きっと、ふだんなら使わないような色で絵を描いたことが新鮮だったと思います。印象から捉えた世界が目に見える世界と違うことが少しわかってきましたか?このまま絵を楽しみたいところですが、今日はこれから『境界線を引く鉛筆』をつくってもらいます」

「境界線を引く鉛筆」とは、異なる2本の色鉛筆を縦に切り、くっつけて1本にしたもの。これで線を引くと、2色の間に実体のない境界線を引くことができるという、鈴木さんの作品のひとつでもあります。今回は、参加者がペアになって、互いに半分にした色鉛筆を合体させることに。

完成した「境界線を引く鉛筆」がこちら。かんなで半分に削ったものを、木工ボンドで圧着すればできあがりです。紙に描いた、水色の線と紺色の線の「間」が、鈴木さんの言う「境界線」。

「ひとりなら自由気ままにイメージできるけれど、『あなたはどう?』となったときに、『線』が引かれます。今日もできた1本の鉛筆を巡って『どっちのものだ?』っていうことになるでしょう(笑)。国と国の間で起こるようなことが、自分たち一人ひとりの中にもあるということが、遊びの中から見えてきた感じがします。このプロジェクトは今日が初めて。これから、たくさんの『2人の線』に立ち会い、集めていきたいので、可能なら1cmくらい僕に分けてくださいね(笑)」

アイデアを実現するための、コンピュータプログラムになってみる。
〈情報〉「コンピュータの仕組みをカラダで体感してみよう」ドミニク・チェン先生

雨が上がり、2限目はいよいよ屋外での授業がスタート。担当するドミニク・チェン先生は、起業した会社でソフトウェアの開発を手がけるほか、メディア関連の著書も多数という、コンピュータのエキスパート。

「僕が生まれた頃にはメールもなかったのが、今ではエベレストに登頂している友人から瞬時に写真が送られてきたりする。そんな魔法のようなことが増えてすごいと思うかもしれませんが、コンピュータの中身は決して魔法ではありません。どんなアイデアでも、コンピュータの言葉に翻訳してあげれば実現できるような時代です。そこで今日は、みなさんにコンピュータの一部になってもらって、その中身を体験してみましょう」

チェン先生が説明しはじめたのは「コラッツの予想」と呼ばれる、「どんな整数でも、偶数の場合は2で割り、奇数なら3を掛けて1を足すことを繰り返すと、最後は必ず1になる」という数学の問題。この計算を4人一組で協力して行うことで、コンピュータのアルゴリズムを体感しようというワークショップです。

「Aさんは数字を書いて伝える役、Bさんはそれが奇数か偶数か判断する役、CさんとDさんは偶数の場合と奇数の場合に計算する役です。2チームに分かれて、スピードを競ってみてください。どうやったら早くできるか、工夫してみて」

数字を伝えたり計算したり、参加者のみなさんは大忙し。2回、3回と回数を重ねるにつれ徐々にスピードも上がっていき、最後はある工夫をした片方のチームが圧倒的に速く計算を終えました。

「偶数・奇数を判断するBさんが、紙を見せるだけにしたんだよね。ちょっとした違いだけど、ループすると大きな差が出てきます。みなさんが体験したように、コンピュータの中では大変な量の労働作業が行われている。こういうコンピュータが得意なところと、実現したいアイデアを練るという人間が得意なことをかけあわせれば、生活を変えるようなプログラムを世の中に提案できるんです」

建物になりきることで、建物の気持ちがわかる!?
〈体育〉「けんちく体操」チームけんちく体操(米山勇先生、高橋英久先生、田中元子先生、大西正紀先生)

「今日はみなさんと勝負したいと思います! 私は『けんちく体操』を開発した博士、いさーむ・ヨネ。勝負するのはここにいる3体のロボット、けんちく体操マン1号、けんちく体操ウーマン、けんちく体操マン2号。どっちがいいのかの勝負ですよ」

3限目の先生、チームけんちく体操のみなさんは、建築物を体で表現する「けんちく体操」の生みの親。2013年に日本建築学会教育賞(教育貢献)を受賞、その活動を海外にも広げつつあります。ルールは簡単、建物の写真が出たら、よく観察して、すぐに自分の身体で表現すること。まずは、足を踏ん張って両手を伸ばして頭上で合わせる、基本技の「東京タワー」からスタート! ところが博士から「思い切りが足りない、大人は全員、不合格!」と厳しい判定が。

続く2つ目は、金色のオブジェが特徴的な浅草の隅田川沿いに建つ「スーパードライホール」。これには「踏ん張りがきいていて、かっこいい! これはかっこいいよ!」と博士のテンションもアップ。博士が「合格」と認めた2人の子どもが、みなさんの前で実演。

けんちく体操は、しばらく姿勢をキープして"建物になりきる"ことも大切。その後は、お題の建物が複雑な形になっていくと同時に人数を増やしていき、2人で「江戸東京博物館」や「元麻布ヒルズ」、3人で「ロンシャンの教会」や「パルテノン神殿」などに次々とチャレンジ。

最後は10人ほどのグループで対決。写真は「シドニーオペラハウス」、何とも美しいけんちく体操が完成。博士からは「重なり具合のバランスが絶妙。建物の奥行き感もきちんと出ているところがいいね!」と絶賛のコメントが。

その後も、「国立新美術館」や「築地本願寺」などなど、さまざまな名建築を体で表現して楽しみました。最後に先生たちからみなさんに伝えられたのは「これから記念撮影をするときは、どこでもけんちく体操で!」というメッセージ。記念撮影は、それぞれが好きなポーズで。みなさんすっかり「けんちく体質」になってしまった様子でした。