85 蜷川実花(写真家 / 映画監督)後編

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ひと目見てそれとわかる独特の世界観で、写真のみならず映像やアート作品も数多く手がけている蜷川実花さん。メインプログラム・アーティストとして参加した『六本木アートナイト 2017』のキーワードのひとつが「東南アジア」でしたが、偶然にも最近はアジアでの活動が増えているといいます。2017年11月には上海で大規模な個展が控えている蜷川さんに、アジアにおける六本木の未来についてお聞きしました。

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update_2017.10.11 / photo_mariko tagashira / text_ikuko hyodo

展望台と美術館をセットにしたのは画期的な発明。

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六本木ヒルズ森タワー52階にある、海抜250メートルの屋内展望回廊と、海抜270メートルのオープンエアの屋上「スカイデッキ」を有する展望施設。展望台のチケットで53階の森美術館にも入館することができる(展覧会によっては入館不可)。また屋内展望回廊には、ギャラリースペース「スカイギャラリー」を併設している。

 六本木には小学生のときに父が連れてきてくれて、「ここがディスコだよ」などと教えてもらいながら散策をした思い出があります。小さい頃は特に、自分には関係のない夜の街というイメージが強かったし、大人になってからもわざわざ行く理由がそれほどなかったけど、六本木ヒルズができて変わりました。

 六本木がアートの街になるなんて当時は想像できなかったし、六本木ヒルズの展望台と美術館がくっついているって、天才的な発想ですよね。だって展望台に行ったら、ほぼ強制的に美術館にも行くことになるじゃないですか(笑)。

 アートって自分とは関係ないと思っている方もたくさんいるだろうけど、実際に体験することによっておもしろいと思ってくださる方もきっといるはずなので、これくらい"流れで行かされる感"があったほうがいい気がする。アート界における発明だと思います。

人々の欲望とアートが混ざり合う稀有な街。

 私の場合、六本木イコール、六本木ヒルズと東京ミッドタウンになっちゃっているところがありますね。美術館ももちろんよく行くし、ごはんも食べに行くし、映画を見るのも六本木が多いかな。あとスタジオがたくさんあって撮影でよく使っているので、六本木に住んだほうがいいんじゃないかっていうくらい、しょっちゅういます。たとえば六本木スタジオで撮影して、事務所に戻って打ち合わせをして、夜は六本木ヒルズで会食があったりすると、1日2、3往復することになるから。最近は本当に、六本木と事務所とアジアの行き来ですね(笑)。

 今の六本木のアートのイメージを、もっと推進していきたいですよね。だって世界中の都市で、六本木みたいなところがアートの街になっている例ってあまりないと思います。欲望の渦巻く街だった背景がありつつ、アートの街になっている混ざり具合が珍しいし、おもしろいですよね。

 ギャラリーなんかもどんどん増えてきてはいるけど、今はまだアート関連の建物が点在している状態で、線にはなっていない。ニューヨークって気がついたら結構な距離を歩いていたりするんですけど、それって魅力的なギャラリーやお店が連なっているからなんですよね。六本木はヒルズとミッドタウンの間がアート好きにとってはまだつまらないから、これが点ではなく線になっていけばいいなと思います。

アジアのリーダーになるには、今が踏ん張りどころ。

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毎年8月下旬の土日に、麻布十番商店街を中心に開催されている、「麻布十番祭り」という通称でおなじみの納涼祭り。主催は麻布十番商店街振興組合で、今年で51回目を迎えた。各国大使館による国際バザールや人気レストランが出店する屋台、全国約50の市町村が特産品やご当地グルメを販売する「おらが国自慢」などが人気。

 六本木アートナイトももっと進化して、夜店とかが出たらおもしろいんじゃない?『未来ノマツリ』が今回のテーマだったけど、お祭りの中心にアートがあったら楽しいですよね。それか、麻布十番祭りと六本木アートナイトを一緒にやっちゃうとか。六本木のイベントはきちんとしすぎているところがあるから、麻布十番祭りみたいな下町感が出るともっとおもしろいはず。距離的にも全然歩けるし、六本木アートナイトと麻布十番祭りに来る人は若干かぶっていそうだから、なかなかいいアイデアなんじゃないかな。

 東京はなんだかんだいってもみんな来てくれるし、文化の中心であり、憧れの対象ではあると思うんですけど、今はその求心力が薄れてきて、急速にいろんなところに分散しつつある気がします。たとえば中国の人に、日本の芸能人で誰を知っているか聞くと、90年代の流行りで止まっちゃっているんですよね。それ以降のことはあまり知らないし、興味もない。

 なかには日本の洋服だったり、アートをすごく好きな人もいたりするけれど、もう一度以前のような求心力を東京が取り戻して、文化面でアジアのリーダーになれるよう戦略的に動いていかないと。もっと危機感を抱かないと、あっという間にいろんな都市に追い抜かれてしまうし、興味がますますほかのところへ向いてしまうんじゃないかな。今が踏ん張りどころですよね。