78 青木保(国立新美術館長)×落合陽一(メディアアーティスト)後編

青木保(国立新美術館館長)×落合陽一(メディアアーティスト)

2007年1月には国立新美術館、同年3月には東京ミッドタウン(サントリー美術館)がオープン、森美術館を含めた六本木アート・トライアングルも10周年を迎えました。記念すべき対談のゲストは、国立新美術館長の青木保さんと、六本木で生まれ育ったメディアアーティストの落合陽一さん。この街に造詣の深い2人が、六本木の過去と未来、アートの役割について語ります。

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photo_tsukao / text_kentaro inoue

目抜き通りの空中に絵を描きたい。

Fairy Lights in Femtoseconds
レーザーでプラズマを発生させ、空中に三次元の光の像を描く仕組み。落合氏の研究チームが2015年に開発し、YouTubeなどでも大きな話題に。2016年には、アルスエレクトロニカのインタラクティブアート+部門で入選。

青木この間、ミラノでクリストの講演を初めて聞いたんです。彼の作品は、建造物を全部布で覆ってしまうもので、実は空から全体を見るとものすごく美しい。しかも景観の中にきちんと収まりながら光彩を放っている。日本では規制が多くて難しいらしいけど、たとえば六本木でもそういうことをやったらどうかな。

落合僕は空中に絵を描きたいんですよね。「Fairy Lights in Femtoseconds」という作品があって、お金があれば、もっとでっかくできるんですよ。どこかのお金持ちが数億くらい使ってくれたら、六本木の目抜き通りの上に、「なんかいつも光って浮いてる構造物あるよね」っていう状態をつくれるんですけど......。

青木六本木は地縁的なしがらみがないから、やりやすいんじゃない?

落合そうですね、たぶん法令さえ適切にクリアすれば、地元からは怒られたりはしないと思います。ドンキの上のジェットコースターは反対されて動かなくなったけれど、他はたいてい大丈夫でしたから。何が建っても、そんなもんだろって納得する。寛容なんです。

青木インドに、建物がすべてピンクの街がありますよね。たとえば六本木も、指定の色以外は使っちゃダメにするとか、チェーン店にしてもアーティスティックなものを取り入れなければいけないとか。同じスターバックスでも、六本木に出店するとなったら、それだけの覚悟をもってやってもらう。

 新しいものをつくろうとするなら、ある意味、文化的な"規制"をしなくちゃいけないんですよ。パリなんて、アパートの窓ひとつ壊れても勝手には直せないでしょう。だから街並みがつながるし、世界から街を見にやってくる。

お台場はガンダム、六本木は現代アート。

青木ニューヨークをはじめ有名な街って、ひと目でそこがどこの街かわかりますよね。だから、六本木も世界の人がパッと見てわかるようになるといい。

落合そう、この街は裏通りから写真を撮ったときに、歌舞伎町なのか六本木なのか見分けがつかない。ここが六本木であるというアイデンティティがないんです。

青木新美も東京ミッドタウンのほうから来ると、建物が見えないのが悔しくて。だから、風船でもシンゴジラでもいいけれど、そういうのでかく空に浮かんでいて、お客さんが「あれなんだろう?」と驚いてやってくるようになったらいいなと(笑)。

落合たぶん、お台場ならガンダムやシンゴジラで、六本木なら現代アートなんでしょうね。そういう意味で、森ビルさんがママンつくったのは英断だと思うんです。あの銀色の塔だけが建っていたらディストピア的な光景ですが、やつがすべてを引き受けている感じがして。

六本木にはもっと変なものを増やすべき!

落合六本木のランドスケープといえば、昔は街角から見える東京タワー、今は東京ミッドタウンと六本木ヒルズですが、どちらもありえないビジュアルじゃないですよね。ロアビルの並びのロボットが飛び出したカラオケZoneも、金属感があって不思議だったホテルアイビス六本木の1階もなくなって、普通になっちゃった。今やポケストップで見れるくらい。

 空いている土地はだいたい駐輪場か駐車場だし、そういう土地の使い方が、街のブランド価値を低下させていることに気づくべき。そう、六本木にはもっと変なものを増やすべきですよ!

青木それが可能だって期待させてくれるのが、六本木のいいところかもしれませんね。

落合他の街では絶対できないですから。これからいくつか再開発があるので、それに合わせて、ありえないようなでかいものをつくったらいいと思うんですけどね。

青木落合さんあたりに頑張ってもらって、小学生から老人までいろんな人を集めて、これはいい、これは悪いって街並みを評価をするワークショップをやったら面白いかも。

落合あとは、六本木交差点のソフトバンクの上にある広告がすごく目立つので、池田亮司さんがタイムズ・スクエアでやったインスタレーションみたいなことができたら面白いだろうな......とか。そういうランドスケープを変えるものがあると、みんなの意識も変わるんですよ。