75 田川欣哉(デザインエンジニア)×ドミニク・チェン(ITアーキテクト)前編

田川欣哉(デザインエンジニア)×ドミニク・チェン(ITアーキテクト)

久々の対談形式となった今回、登場してくれたのは、デザインイノベーション・ファーム「Takram」を率いるかたわら、英国ロイヤル・カレッジ・オブ・アートで客員教授を務める田川欣哉さんと、アプリ開発などを手がける「ディヴィデュアル」共同創業者で、情報学研究者としての著作も多いドミニク・チェンさん。テーマは「六本木×未来×テクノロジー」です。

後編はこちら

update_2017.1.4 / photo_tsukao / text_kentaro inoue

六本木には「空気」が足りない。

TechShop Tokyo
サンフランシスコ発「会員制オープンアクセス型DIY工房」のアジア1号店として、2016年4月、六本木のアーク森ビル3Fにオープン。3Dプリンタはじめ約50種の工作機器、木工・金属加工の部屋、セミナールームを備える。ハッカソンや交流会などのイベントも。

田川欣哉(以下、田川)六本木とテクノロジーの関係ってなんだろう。イメージ的にはそんなにリンクしないけど(笑)。

ドミニク・チェン(以下、ドミニク)テクノロジーってあくまで手段でしかなくて、目的のほうが大事ですよね。だから今、六本木に足りないものを考えるといいかもしれない。

田川空気だ、空気!

ドミニク空気が足りない?

田川そう六本木には、いい空気が足りない(笑)。六本木の街の風景って、ベースはたぶん80年代にできて、そこに六本木ヒルズとか東京ミッドタウンみたいな、ようやく空抜けのあるところができた。平場と垂直とを組み合わせたところに、六本木の脱20世紀的なものが芽生えてる気がします。空気が足りないというのは深い意味もなくて、この街に来ると「空気を吸ってる感じが減る」気がするんですよ。

ドミニクそれって、空が見えないから?

田川首都高があるからかもしれないけど。でも、ここ(TechShop Tokyo)は天高が高いので、空気が吸えるなって感じがする。

ドミニク要約すると「抜け」ってことですかね。この間、岐阜と長野の県境にある木曽町というところに行ったんです。島崎藤村が「木曽路は山ばかり」と詠んだように、本当に山ばっかりで、おいしい空気しかない。

田川全然テクノロジーの話じゃないけれど、たとえば、古い街並みをザーッとつぶして、地上20階くらいのところにでっかい透明の屋根をバーンとかけて、雨の降らない芝生がドーンとあったりすると、すごく未来っぽいだろうなって(笑)。

ドミニクそれ、ちょっとかっこいいですね。

田川結局、未来って、現在との間にコントラストがあるからこそ"未来化"されるので、「空気がない」というのを反転させた場所をつくると、すごく未来っぽく見えると思うんですよね。だから、田舎につくる未来と六本木につくる未来は全然違うはずで。

情報よりも情緒が感じられる街に。

ドミニク地方に行くと、東京に戻りたくないなと思いません? 東京のほうが情報密度もあるし、テクノロジーも進んでいるんだけれど、より望ましい未来って、東京で稼いで地方でゆっくりと過ごしたいみたいな。それってなんかおかしいよな、と思って。

 きっと空気が足りないのを、人々は無意識的にせよ意識的にせよ感じとっていて、それが目に見えないストレスになっている。そこをなんとかするのはすごくいい、欲しい未来な気がしますね。

田川日々、息苦しいとは思いつつ、僕はかなりよく六本木には来てるんです。それは面白い場所があるからで、空気が好きだから来ているわけじゃない。でも、空気が増えると、そういう人たちはいなくなってしまうのかもしれない(笑)。

ドミニク僕も今年は、けっこう六本木に居ついてまして、六本木アートナイトでもいくつか企画に参加させてもらったし、グッドデザイン賞の審査員をしたり、デザインハブで展示のアートディレクションをしたり。

 アートナイトでは夜中の3時くらいまで対談をしましたが、そういうときは六本木に外国人を含めてすごくいろんな人が来るんだけど、みんな来て、去っていくだけ。本当に交流って生まれてるのかな、もっとできることがあるんじゃないかなと感じていて。それを、テクノロジーの力やプログラム的なことで解決できるかもしれない。

 テクノロジーというと、情報をどう提示するかという話になるけれど、田川さんのおっしゃる「空気」って、すごく共感するところがあって。情報よりも情緒、でも六本木には、まだあんまりそれが感じられ......って、こんなネガティブなスタートでいいんですかね(笑)。