68 川村元気(映画プロデューサー)

川村元気(映画プロデューサー)

「電車男」「告白」「モテキ」「バクマン。」など、映画プロデューサーとして数々のヒット映画を手がけるほか、ベストセラー小説『億男』、『理系に学ぶ。』『超企画会議』などの新刊著書も話題の川村元気さん。メイン写真の撮影は、川村さん原作の映画「世界から猫が消えたなら」公開中のTOHOシネマズ 六本木ヒルズで。まずは、六本木の街をエンタテインメントで変えるアイデアからどうぞ。

update_2016.6.1 / photo_tsukao / text_kentaro inoue

ソフィア・コッポラが撮りたくなる交差点とは?

超企画会議
ウディ・アレンと『モテキ』を作ったら? クエンティン・タランティーノとヤクザ映画を作ったら? ティム・バートンと『世界から猫が消えたなら』を作ったら? 名だたるハリウッドの巨匠と川村氏が本気の空想会議。

 歌舞伎町が再開発されて、TOHOシネマズ新宿のビルの上にゴジラの頭がついたじゃないですか? それがめちゃくちゃウケて、今、あそこの映画館って日本トップクラスにお客さんが入ってるんですよ。ゴジラ目当てに外国人もたくさん来るし、あの通り自体が変わっちゃいましたよね。どちらかというと、そういうベタなものよりも、かっこつけたことをやりたいなあと思いがちなんですけど、結局それじゃなかなか伝わらないんだなっていうのを改めて実感しています(笑)。

 渋谷のスクランブル交差点も、「ロスト・イン・トランスレーション」とか「カーズ」とか、いろんなハリウッド映画に登場していますよね。すり鉢状の交差点に、QFRONTの巨大なビジョンがあって、人が四方八方から行き来する。外国人がイメージする東京って、やっぱり歌舞伎町と渋谷のスクランブル交差点、まさにソフィア・コッポラが撮った場所。だったら六本木交差点が、ソフィア・コッポラがロケしたいと思える場所になるにはどうしたらいいか、考えてみるのはどうでしょう?

 やっぱり新宿とか渋谷とか六本木の面白さって、コンセプトが決まってないところだと思うんですね。流行っているものがどんどん入れ替わっていく、人の変化を飲み込んでいくというか。だとしたら、人間の欲望を映す鏡、人間の興味を飲み込む器をつくってあげたらいいと思うんです。

日本で一番キテる映像が流れる巨大なLEDスクリーン。

 たとえば、壁面に世界で一番巨大なスクリーンがあるビルが建っていたら、それだけで勝てるなって思いますよね。日本ってもう世界一のものがほとんどなくなっちゃってるじゃないですか。だから何か一個、六本木交差点に世界一をつくれたら面白い。それは多分に不動産関係の方の協力がいりますけど(笑)。

 映画でもアニメでも広告でもミュージックビデオでも、今日本で一番キテる映像が流れていて、それを外国人が見てうぉーっとなる。さらにその場でコメントをスマホから入力して飛ばすと、ニコニコ動画みたいにリアルタイムでそのスクリーンにコメントが載る。ニューヨークのタイムズスクエアにも、ちょっと似たところがありますよね。そのとき世界で一番勢いのある企業が広告を出していて、あそこに行くだけで、うわーってなる。スクリーンに流す映像は、日本を代表するクリエイターが順番でつくるのもいいし、僕もキュレーションができるなら、ぜひやってみたいですね。

 東京のいいところって、変化が早くて、レイヤーが複雑なことだと思うんです。アートも、音楽も、ファッションも、技術においてもCGや人工知能の独特な発展もあって、それぞれがガラパゴス的な進化を遂げている。そんな日本一を見せる器、世界で一番早く変化する街の象徴をつくる。いくら「こういうテーマだ」と一言でバシッといっても、東京という街の変化に追いつけない。それにワンコンセプトでつくられたものって、乗れない人が8割くらいになっちゃう危険もありますし。

ごった煮感、有象無象感、日本や東京のよさを体現する街。

世界から猫が消えたなら
余命わずかと宣告された「ぼく」の前に現れた悪魔は、大切なものと引き換えに1日の命をくれるという......。2013年本屋大賞にノミネートされ、130万部超のベストセラーとなった小説を映画化。永井聡監督。佐藤健、宮崎あおい主演。
http://www.sekaneko.com/

TOHOシネマズ 六本木ヒルズ
都心型シネマコンプレックスの先駆けとして、六本木ヒルズにオープン。独自規格の巨大スクリーンはじめ9つのスクリーン、最高級の音響設備、ボックスシートなどを備え、大作からアート作品まで幅広い作品を上映している。

 僕のつくる映画って、邦画の中でも異端というか横丁のジャンルだからか、いわゆる有楽町の日劇系じゃなくて「六本木シネマズ系」に編成されがちなんです。最近公開されたばかりの「世界から猫が消えたなら」も、ここ(TOHOシネマズ六本木)で初日の舞台挨拶をして、併設されたラウンジ「カーテンコール」で打ち上げをしました。

 六本木って、映画館があって美術館があってショッピングもできて、おいしいお店もある。ライブも観られるし、もちろん夜のお店もたくさん。ごった煮感というか、有象無象感というか、日本や東京のよさを体現している街。僕が世界で一番好きな街はニューヨークなのですが、やっぱり都市が好きなんです。

 それこそニューヨークなんて、映画があって演劇があって音楽があって、食があって、アートがあって、そこにいるだけで面白い。1年に1回くらいは行くようにしているんですけど、絶えずトレンドが変わって、1年たったら食も文化も何もかも次の流行りがきてしまう。その流動性が魅力ですよね。コロコロ変わることをどう受け入れるか、街が受け入れるやわらかさをどう持つか。ビルを建てたらそこから一歩も動きません、ということではない街づくりに魅力を感じます。