PROJECT REPORT インタビューで得たクリエイターのアイデアを、リアルな場で実現する「アイデア実現プロジェクト」

六本木未来会議アイデア実現プロジェクト#07 「六本木未来大学 by 水野学」 第3回「川村元気さん、エンタテインメントのデザインって何ですか?」講義レポート

update_2015.10.21 / photo_ tsukao / text & edit_kentaro inoue & yosuke iizuka

「電車男」「告白」「悪人」「モテキ」「バケモノの子」など数々のヒット映画を製作、さらに小説『世界から猫が消えたなら』『億男』が本屋大賞にノミネートされベストセラーになるなど、映画プロデューサー、作家として活躍を続ける川村元気さん。9月28日(月)の「六本木未来大学 by 水野学」第3回に登場した川村さんが教えてくれたのは、映画や小説をつくる際の「思考回路」について。まずは、現在公開中の映画「バクマン。」を中心に、映画づくりの話からどうぞ。

「マンガアクション」という発見が「バクマン。」誕生のきっかけに。

「重要なのは、面白さを『発見』すること。そして発見の組み合わせを『発明』すること。映画プロデューサーはシェフみたいなもので、まずはマンガや小説などからいい素材を発見する必要があります。そこに、監督や脚本家、俳優などクリエイターを掛けあわせて、工夫を凝らした宣伝広告を打ってお客さんに届ける。この組み合わせを間違えると、料理と一緒で、すべてが台無しになってしまうんです」

10月3日(土)から公開されている映画「バクマン。」は、『週間少年ジャンプ』で連載されていたマンガが原作、読者アンケート1位を目指す高校生マンガ家コンビが活躍する、川村さんプロデュースの最新作。冒頭の言葉どおり、この映画にもさまざまな要素が重層的に組み合わされています。その映画づくりのポイントを、「バクマン。」の製作過程を例に話してくれました。

「あらゆるコンテンツが生まれてきた『週間少年ジャンプ』の現場を映像的なダイナミズムで見せる、まずはそれを映画でやろうと思いました。ただ、マンガ制作を映像で描くのは難しい。そこで、大根仁監督と話し合い、CGやプロジェクションマッピングを駆使することにトライしたんです」

「バクマン。」においての最初の「発見」は、「マンガアクション」というコンセプト。マンガ制作の現場を表現するために、白い原稿用紙にプロジェクションマッピングを施して撮影したり、モーショングラフィックスでマンガそのものを動かしたり。通常はひとつのチームがすべてを担当するところを、オープニング、アフターエフェクト、CG、エンドロールそれぞれでチームをつくり競作させました。

「『ゼロ・グラビティ』なんかを観ると、リアリティ系のCGでハリウッド映画と戦う気にならなくて。僕なりに漫画を動かすのはどういうことだろうと考えて、大根仁監督やCGディレクターたちと一緒に、平面的な美しさで見せる『マンガアクション』をつくっていきました」

CGと音楽と役者、三位一体で映画が完成する。

もうひとつの「発見」は音楽。大根監督と川村さんの中で、ロックバンド「サカナクション」に映画音楽を担当してもらうというアイデアが、「バクマン。」と結びつきました。

「映画音楽の王道はクラシックのオーケストレーションですが、『マンガアクション』というコンセプトを血肉化するには、ダンスミュージック的なものを掛け合わせるといいんじゃないかという感覚があったんです。サカナクションのメンバーが撮影前に20曲くらいのデモを上げてくれて、その曲を流しながら撮影、編集のときにはさらに40曲くらい届いて。最終的にそこから30曲ぐらいを選べるという贅沢さ。こんなふうにつくられた日本映画はないので、そのことだけでも異色作になると思いました」

「僕の対談集『仕事。』で糸井重里さんにも言われたことですが、僕たちの仕事は、いわばケーキにイチゴを乗せること。映画は1,800円というハードルの高いエンタテインメントなので、いくらケーキがおいしくても、そこにイチゴが乗ってないと、買おうという気にならないんです」

ここで川村さんの言う「イチゴ」とは、「バクマン。」のキャストのこと。佐藤健さん、神木隆之介さんという10代に人気の俳優を主演に、染谷将太さん、小松菜奈さん、宮藤官九郎さん、山田孝之さん、リリー・フランキーさんと、そうそうたる面々が演じています。

「原作と脚本と演出、そこにCGと音楽と俳優、それぞれの『発見』を重層的に組み合わせてつくった作品です。ここに映画的な楽しさがあると僕は思っています」

いくつもの「発見」の組み合わせるのが、ものづくりの基本。

川村さんのほかの作品、たとえば湊かなえさん原作の映画「告白」も、やはり「発見」を組み合わせてつくったもの。「なぜハッピーエンドの映画が多いのか」ともやもやした気持ちを抱えていたときに原作に出会い、"悪意のエンタテインメント"を目指して製作したのだそう。ご存知のとおり、この映画もヒット。

「僕は脳の半分くらいに『違和感ボックス』を持っていて、そこに気づきや思いつきをいつもためているんです。それが『発見』につながっている。ひとつの発見だけで作品をつくることもできるかもしれませんが、僕はそこからしつこく粘って、3つか4つの発見の組み合わせを『発明』する。この作業に延々と時間をかけるのが、僕のものづくりの基本になっています」

【クリエイティブディレクションのルール#1】
「違和感ボックス」にたまった気づきを形にする

INTERVIEW