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INTERVIEW
73
野田秀樹演出家 Hideki Noda / Director
Hideki Noda / Director

『オリンピック後まで残る「遺産(レガシー)」をつくるために』【前編】

突然やってきて夢のように消える「文化サーカス」を東京から。

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  • NO73 野田秀樹 『オリンピック後まで残る「遺産(レガシー)」をつくるために』【前編】
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update_2016.11.02 photo_tsukao / text_kentaro inoue

「NODA・MAP」を率い、数々の話題作を発表、国内外で活躍する劇作家であり演出家・役者の野田秀樹さん。「六本木アートナイト2016」に合わせて、多種多様なアーティストが出会い"文化混流"する新たなムーブメント「東京キャラバン in 六本木」を同時開催しました。東京キャラバンのリハーサル真っ只中の野田さんが語る未来の街、そして未来の文化のつくり方とは?

後編はこちら

文化的な街をつくるために必要なこと。

 日本の街って、どこも似ていますよね。旅公演をしていると、よくそう感じます。地方都市の駅前が全部一緒に見えるのは、そこにあるお店が一緒だから。海外にはチェーン店を入れるな、みたいに頑固な街づくりをしているところもあるように、いいか悪いかは別として、そういうやり方はひとつあるのかもしれません。

 一方で、アートみたいに文化的なもので街づくりをしたければ、突出すれば形にはなると思うけれど、やっぱり上っ面になってしまいがち。というのも、日本にはアートに理解を示す人も少ないし、とくに政治経済関係の上の人間には、まったく興味がないことが多いから。しかも、急にそういうポジションになった人に限って、海外の劇場を観に行って、すぐオペラ好きになっちゃう(笑)。「あんた、日本で何も見たことないだろう!」って。

 今も、2020年の東京オリンピックに向けた文化的な活動がいろいろあるけれど、みんなが本当にそれに興味があって、本気でやりたいと思っているのか、というのが一番大事なところで。って、これ、半分グチになっていますけど。

コンテンツの「数」から「質」に戻ったほうがいい。

 よく、いろんな街で「なんとかふれあいフェスティバル」みたいなイベントをやるでしょう? たしかにある程度ワクワクするかもしれないけれど、日本の場合、だいたいが子ども向け。ある年齢になって、ちょっと根性ひねくれてきた若いやつらが行くかっていうと行かない。どんなイベントにしても、コンテンツの取捨選択をする人の問題って、とても大きいと思うんです。

 たとえば僕は、東京芸術劇場の芸術監督をしていますが、就任当時、公共劇場なので稼働率がどのくらいとか、会議でそういうことばっかり気にして、内容は二の次になってしまっていた。芸術監督の仕事を一言でいうと、「こんな質の低いものはうちではやらないんだ」っていう頑固な姿勢かもしれない。最初にそう言ったら、公共の劇場でそんな例はないとか、なんで東京都のものを都民に自由に使わせないんだ、というクレームがくると。だったら「私が責任を取るっていうことで大丈夫ですか?」って説得した。つまり責任を被りたくない人が多いんです。

 今回の六本木アートナイトにも、同時開催する「東京キャラバン in 六本木」をはじめ多くのプログラムがありますが、公共事業的にたくさん参加アーティストがいれば盛り上がっている、という考え方はしないほうがいいと思っています。みんな数よりも、一度「質」に戻るべき。

「色」を見せることに臆病になると文化の意味がない。

 企画をするということは、自分たちが考えている「色」を見せること。そこで臆病になってしまうと、文化の意味がない。これが、日本が同じような街ばかりになってしまう理由でもあるんじゃないかな。もちろんクオリティクオリティとばかり言う必要ないけれど、最低、自分はこういうものが好きだっていうのを、はっきり通すことが必要でしょう。

 ちなみに、東京キャラバンというのは簡単にいえば「文化サーカス」。最初は、東京オリンピックに向けた文化プログラムをつくろうという話からはじまったのですが、どうもそういう会議っていうのは抽象論が多くて。「日本という国は、伝統とモダンが溶け合っていてすばらしい」とか、ごもっともなんですけど、じゃあ何をやるのっていうと、何も出てこない。

 そこで週末、街角に突然ひょこっと文化サーカスみたいのが現れて、翌日の夜にはパフォーマンスを見せて夢のように消えた......なんて体験があったら楽しいんじゃないかって。サーカスに限らず、自分の街に何かがやってきたらうれしいでしょうし、わくわく感もあるでしょう? もちろんコンテンツも大事だけど、そのプロセスだけでもけっこういいな、と。

東京キャラバン

「人と人が交わるところに『文化』が生まれる」をコンセプトに、多種多様なアーティストが集う文化ムーブメント。六本木アートナイト2016開催中、六本木ヒルズアリーナで行われた「東京キャラバン in 六本木」(写真上/撮影:篠山紀信)には東京スカパラダイスオーケストラ、宮沢りえ氏などが参加。写真下は、2016年8月にオリンピック開催中のリオで行われたワークショップの様子。

写真下は、2016年8月にオリンピック開催中のリオで行われたワークショップの様子。

野田秀樹(演出家)

どうやったらいいか、誰もわからないものを形にする。

 やろうと言ってはみたものの、正直ちょっと大変だな、って最初のうちは言い出しっぺを後悔していたんです。そもそも初めてのことで、どうやったらいいのか誰もわからない。でも今は、いろんなものに出会えて僕が一番得したなって気がしてます(笑)。今回の六本木についていえば、リオや東北を回って積み重ねたものがあるので、ある程度見えてもいます。

 もちろん、ある種のマニュアルは必要でしょう。でも完全にマニュアル化されて、"それをやるためにやる"っていう形になったら、このキャラバンも方法を変えないといけない。昔話になりますけど、自分が持っていた劇団を解散した理由のひとつがそれで、芝居をやるために劇団をつくっていたはずが、いつの間にか劇団を転がすために芝居を打ち続けるようになってしまったんです。

 そういう主客転倒が起こった瞬間にストップしなくちゃいけないし、どんなに勢いづいているものでも、その見極めをしないとおかしくなってしまう。ただ、人は食っていかなくちゃいけないから、そう簡単には言えないんですけど。

ビジュアルが強い時代だからこそ、大切にしたいのは言葉。

 実際キャラバンでやっているのは、現地で出会った人や伝統的なものとどうぶつかって、組み合うことができるかっていうこと。出たとこ勝負型だから誰が参加してくれるかが一番大きくて、たとえば今回、スカパラさんが音楽をやってくれることで、びっくりするほど面白くなったり。単純なコラボレーションじゃなくて、ほんのひとひねりできたら違うように見えるはず、というのをいつも考えています。まだまだ道半ばですけど、「こういうふうにしていこうよ」というポジティブな姿勢を見てもらえたら。

 アートもそうだし、フィジカルなものだとダンス、それからパフォーマンスを見てもそうですが、やっぱり今の時代って言葉がないんですよね。若い人はビジュアルには非常に強くなってきている、でも言葉が弱くなっている気がするので、そこに仕掛けていくことも意識しています。

 今回もほとんどポエムみたいな感じで、そんなにストーリーがあるものではありませんが、ボブ・ディランもノーベル賞をとったことだし、詩も見どころということでひとつ(笑)。

人や体験や記憶を、オリンピックよりも、もっと先まで残すために。

 東京キャラバンをオリンピック後の「遺産(レガシー)」にしたいなんて大きなことを言っていますが、キャラバン用の施設がつくられるわけじゃないので、場所さえあれば、ずっと続けられる。今回の六本木みたいに立派な舞台がなくても、「東京キャラバン in 東北」のように、小学校の体育館だってできないことはない。

 ただひとつだけ、キャラバンのシンボルで、名和(晃平)くんがつくった「エーテル」だけは、小さくても、どこにでも装置として象徴として持っていけたらいい。悲しいことに東北ではその予算すらもなかったけど......それくらいですよ。

 実際あとに残るものって、施設なんかじゃなくて、人だったり体験だったり記憶だったり、そちらのほうが大きい。東京オリンピックをきっかけにできた文化プログラムが形になって、ずっと残っていく。せっかく何かやるんだったら、そういうものをつくらないといけないし、みんなも面白いと思わないでしょう?

東京キャラバン in 東北

日本全国津々浦々をキャラバンする第一歩として、2016年9月に開催。リオから帰国したばかりの東京キャラバン参加アーティストや松たか子氏が宮城・福島を訪れ、地元の小学生、吹奏楽部、伝統芸能やお祭の担い手などと、新たな表現を創作するワークショップを行った。

後編はこちら

野田秀樹

野田秀樹 / 演出家
野田秀樹 / 演出家

1955年、長崎県生まれ。劇作家・演出家・役者。東京芸術劇場芸術監督、多摩美術大学教授。東京大学在学中に「劇団 夢の遊眠社」を結成し、数々の名作を生み出す。92年、劇団解散後、ロンドンに留学。帰国後の93年に演劇企画製作会社「NODA・MAP」を設立。『キル』『パンドラの鐘』『オイル』『THE BEE』『パイパー』『ザ・キャラクター』『南へ』『エッグ』など次々と話題作を発表。故 中村勘三郎丈と組んで歌舞伎『野田版 研辰の討たれ』『野田版 鼠小僧』『野田版 愛陀姫』の脚本・演出を手がけるほか、海外の演劇人と積極的に作品を創作するなど、演劇界の旗手として国内外を問わず、精力的な活動を展開。09年10月、名誉大英勲章OBE受勲。09年度朝日賞受賞。11年6月、紫綬褒章受章。

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