六本木未来会議
byTOKYO MIDTOWN
六本木未来会議
byTOKYO MIDTOWN
  
  • JP / EN
  
                    
  • INTERVIEWインタビュー
  • CREATORクリエイター
  • EVENTイベント検索
  • PROJECTプロジェクト
  • BLOGブログ
  • ABOUT六本木未来会議について
thumbnail
thumbnail
  • 利用規約
  • お問い合わせ
  • facebook
  • twitter
  • mail
  
Thumbnail Thumbnail
INTERVIEW
164
吉村靖孝建築家 Yasutaka Yoshimura / Architect
Yasutaka Yoshimura / Architect

『高低差のある六本木の街を、階段で縦横無尽につないでみる』【前編】

建築家が不在となった建築に宿るもの。

  • HOME
  • INTERVIEW
  • NO164 吉村靖孝 『高低差のある六本木の街を、階段で縦横無尽につないでみる』【前編】
  • TOTOギャラリー・間
  • 吉村靖孝
  • 建築家
PDF
update_2025.01.22 photo_tada / interview_rumiko inoue / text_ikuko hyodo / edit_shawn woody motoyoshi

多角的な視点で、現代社会における建築の可能性を模索する、建築家の吉村靖孝さん。TOTOギャラリー・間で開催されている《吉村靖孝展 マンガアーキテクチャ—— 建築家の不在》は、吉村さんの7つのプロジェクトを7人の漫画家がオリジナルストーリーにするというユニークな試み。展覧会のステートメントにもあるように、吉村さんは2年ほど前に脳出血を発症しており、本展を創り上げる期間と、病気が治癒する期間が図らずも重なった。なぜ漫画なのか、そして「建築家の不在」とは一体どういうことなのか? 展覧会の開催を迎える吉村さんにお話をお伺いしました。

後編はこちら

漫画と建築の親和性を読み解いていく。

 TOTOギャラリー・間で開催される《吉村靖孝展 マンガアーキテクチャ―― 建築家の不在》では、僕が手がけた7つの建築に関する作品を7人の漫画家に描いてもらい、そこから内容を広げています。ギャラリーから声をかけてもらったのは、今から2年近く前。その頃、脳出血を発症したために2カ月半ほど入院生活を送っていました。そして退院した直後に、展覧会のお話をいただいたんです。それから少しずつ準備をしてきて、現在に至っています。

《吉村靖孝展 マンガアーキテクチャ――建築家の不在》

《吉村靖孝展 マンガアーキテクチャ―― 建築家の不在》

吉村さんが手がけた7つのプロジェクトを、漫画家7人がそれぞれのストーリーとして描き下ろすことにより、建築の新たな解釈の可能性を探る。「吉村さんは既成の常識を疑いながら、批評性を持って建築を提示してきた方。『建築はひとりのものではない』と言い続けてきた吉村さんの作品に、他者が介入することで本人も考えていなかったものになるかなと。吉村さんがいたから実現できた企画であり、このダブルミーニングが面白いと思っています」と本展のキュレーター。TOTOギャラリー・間にて、2025年1月16日(木)~3月23日(日)開催。

 展示の構成について説明すると、3階が漫画のフロアになっていて、7人の漫画家による作品を拡大して展示し、全編を読めるようにしました。フロアの中央では、展示されている漫画からインスピレーションを得て、再解釈したものを建築模型にしています。なので、3階は漫画、4階は模型と表現方法は異なりますが、ベースになっている建築作品を展示している仕組みになっているんです。テラスでは、等倍に拡大したスケールフィギュアを11体展示しています。スケールフィギュアは、建築パースに人を加えて、イメージを湧きやすくするためのものであり、どれも今まで手がけた作品で実際に使っていたものになります。

7人の漫画家

7人の漫画家

コルシカ × Nowhere but Sajima(2008年)、川勝徳重 × Red Light Yokohama(2010年)、德永 葵 × 窓の家(2014年)、三池画丈 × フクマスベース(2016年)、宇曽川正和 × ホームトゥーゴー#001(2019年)、メグマイルランド × 滝ヶ原チキンビレジ(2021年)、座二郎 × VERTIPORT(進行中)が創意を尽くして描く。
画像:© Nacása & Partners Inc.

 そもそも漫画というアイデアは僕から提案したのではなく、どういう展示にしていきたいか、その取っ掛かりを考えるワークショップのなかで、たくさん出てきたキーワードの中のひとつだったのです。僕自身は、漫画についてそれほど詳しくないのですが、そういう人でも漫画ならそれなりに読んでいたりするし、まったく興味がないという人はなかなかいない媒体ですよね。今は、本の売り上げの4割くらいを漫画が占めていると聞いたことがあります。大抵の人にとって身近な存在といえる漫画を題材にして、何かできることはないのかなと考えました。

 理由はわかりませんが、建築家を目指している、あるいはすでに建築家だけれども、もともとは漫画家になりたかったという人も結構いるみたいで。たとえば、TOTO出版から出ている『HOLZ BAU 増補版 ホルツ・バウ 近代初期ドイツ木造建築』という本には、建築家の描いた漫画が挟み込まれていたりします。今回の展覧会のような、大々的なコラボレーションは初めての試みかもしれませんが、漫画と建築は意外と相性がいいのではないでしょうか。

『HOLZ BAU 増補版 ホルツ・バウ 近代初期ドイツ木造建築』

『HOLZ BAU 増補版 ホルツ・バウ 近代初期ドイツ木造建築』

近代初期のドイツ木造建築の知られざる名作を日本の建築家がリサーチした、創造的探求の記録。著者の福島加津也、冨永祥子、佐脇礼二郎は建築家。本橋仁は建築史家。ところどころに入っているカラーの漫画(ドローイング)は、漫画家としての実績もある冨永祥子が手がけている。2020年の発売後、即完売となり、増補版がTOTO出版より2022年に出版された。

「建築家の不在」が意味すること。

 僕の建築を作中に出さなくても良いと、漫画家のみなさんに依頼するときにお伝えしました。というのも、4階には種明かしともいえる模型があるので、3階の漫画からは、どんな建築なのかわからなくても構わないと言ったのですが、あがってきた漫画を見ると、結局みなさんが作品のなかで取り上げてくれていました。僕の建築が、漫画というフィクションの世界に存在していることがとても新鮮で、僕自身もそこから想像を広げてみたいと思えるような素晴らしいものでした。

 展覧会のタイトルに「建築家の不在」というフレーズを入れたのは、僕の脳出血にも由来しています。発症して間もない頃は、言葉が出てこないような状態だったのですが、それがだんだん治っていく過程と、展示の準備の過程がぴったりと重なっていました。建築家が不在のまま展示をすることはできるのだろうか、という問いがこのフレーズの始まりなんですけど、僕が脳出血にかかったことも漫画家に報告したうえで、漫画を制作していただくことができました。そもそも、建築家の不在とは何なのか。つくる側に意図があるかどうかは関係なく、建築家が独自の作家性を獲得しているかもしれない、という仮説に対して、僕の想像を超えてくる部分が多々あって、面白いと感じました。

 もちろん、その建築自体に作家性があるかどうかという話でもあって、僕自身が作家性を出せるかわからないままやり取りをしていくなかで、それが消えてしまった先にどんな建築が存在するのかを見てみたいという気持ちもありました。結果的には、それでも作家性は「ある」と思ってしまったのだけど、作家性が消えていくプロセス自体を楽しむことができたと今は思っています。

int164_main_02

それでも消えない、作家性。

 本来、僕は作家性を出したいと思っている建築家ではなく、それは消えていくものだろうと普段は考えています。とはいえ、それでも消せない部分がある気もしています。今回展示される7つの作品をまとめて鑑賞すると、作家性としか言いようのないものが見えてきて、作家性を消したい自分と、出したい自分の両方が共存しているのかなと思ったのは、新たな発見ともいえます。

 どんな作家性を感じたのかというと、たとえば、僕は建築を複製することに対して抵抗が全然なくて。そう考える建築家はあまりいないんじゃないかと思うんです。僕が手がけたいくつかの建築は、複製することを前提にさえしていて、それゆえに敷地がなかったりします。だから移動も可能だったりするのですが、実はそういうところに僕の作家性というものがあるのかなと。

脳出血を発症して、この2年で起こったこと。

 脳出血を発症したのは、2年前の1月14日です。展覧会の始まる日が2025年1月16日なので、まさに2年を越えた頃になりますね。発症直後は、本当に何もできませんでした。まず言葉が出てこなくなって、失語症と診断されました。でも、この2年間でだいぶ治ってきているので、いつか完治するんじゃないかと思っています。今は何よりも治ることが一番大事だと思っているので、そこに100%のエネルギーを費やしている状態です。脳出血になる以前の睡眠時間は1日4時間くらいで、ショートスリーパーと言っていいくらいだったんですけど、今はその倍は寝るようになりました。人間にとって睡眠は大事ですね。

 病気の前後で、人生観や建築家観みたいなことがどう変わったのかも、今はあまり考えないようにしています。なのでこの2年間で大きく変わった価値観や心境などは、それほどないと思っているのですが、みなさんがやっていることを俯瞰的に素晴らしいなと思うようになりました。あらゆる人が当たり前にやっていることを、すごいなって思うんです。展覧会の準備でずっとやり取りしてきたTOTOギャラリー・間のみなさんもそうですし、こうやって取材してくれている六本木未来会議のスタッフのみなさんも。自分が全然できないからこそ、そう思います。

撮影場所:『吉村靖孝展 マンガアーキテクチャ―― 建築家の不在』(会場:TOTOギャラリー・間)

後編はこちら

吉村靖孝

吉村靖孝 / 建築家
吉村靖孝 / 建築家

1972年愛知県豊田市生まれ。1995年早稲田大学理工学部建築学科を卒業、1997年同大学院修士課程修了。1999-2001年文化庁派遣芸術家在外研修員としてオランダのMVRDVに在籍。2005年吉村靖孝建築設計事務所を設立。2013-18年明治大学特任教授。現在、早稲田大学教授。
吉岡賞(2006年)、アジアデザイン賞(2009年)、グッドデザイン賞特別賞(2010年)、住宅建築賞金賞(2010年)、JCDデザインアワード大賞(2011年)、日本建築学会作品選奨(2011、2014、2018年)、AP賞(2014年)、WADA賞(2016年)、日本建築設計学会賞大賞(2018年)など受賞多数。
主な著作に『超合法建築図鑑』(2006年/彰国社)、『EX-CONTAINER』(2008年/グラフィック社)、『ビヘイヴィアとプロトコル』(2012年/LIXIL出版)など。

他のクリエイターを見る
  • TOTOギャラリー・間
  • 吉村靖孝
  • 建築家
SHARE twitter facebook

RELATED ARTICLE関連記事

PICK UP CREATOR

  • 林士平
    林士平
  • 篠原ともえ
    篠原ともえ
  • 奈良美智
    奈良美智
  • 大貫卓也
    大貫卓也
  • のん
    のん
  • 山縣良和
    山縣良和
参加クリエイター 一覧

RANKING

ALL
CATEGORY
PAGE TOPPAGE TOP

PICK UPピックアップ

  • 六本木未来大学
  • クリエイティブ・カウンセリングルーム
  • 連載 六本木と人
  • 連載 デザイン&アートの本棚
  • クリエイターの一皿
  • 連載 デザイン&アートの本棚
  • ピックアップイベント

PARTNERパートナー

  • AXIS
  • 国立新美術館
  • サントリー美術館
  • 21_21 DESIGN SIGHT
  • Tokyo Midtown Design Hub
  • FUJIFILM SQUARE
  • 森美術館
  • ラクティブ六本木
  • 六本木ヒルズ
  • facebook
  • twitter
  • contact
  • TOKYO MIDTOWN
  • 利用規約
  • 個人情報保護方針
  • 個人情報の取扱いについて
  • Cookieおよびアクセスログについて
  • プラグインについて
  • お問い合わせ

Copyright © Tokyo Midtown Management Co., Ltd. All Rights Reserved.