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INTERVIEW
155
石川直樹写真家 Naoki Ishikawa / Photographer
Naoki Ishikawa / Photographer

自分だけの尺度で街の新しい地図をつくってみる【後編】

常に未知な何かと出会えるように感覚を開いておく。

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update_2024.03.06 photo_tada / text_akiko miyaura

世界中を旅しながら、都市の混沌から極限の自然環境まで、同時代の地球を縦横に記録してきた石川直樹さん。14座ある8,000m以上の高峰のうち、13座の登頂に成功し、最後の山へ向かう遠征目前です(取材時)。今回は、世界各地を目まぐるしく移動し、撮影を続けてきた石川さんが体得した旅先の土地や人々との向き合い方や、厳しい環境下で順応することの意味、そして誰もが気軽に撮影できるようになった写真の未来についてお話を伺いました。

前編はこちら

環境に順応し、クリエイティブになるために。

 僕はまわりを変えるというより、自分を変えていくタイプだと思います。これまで8,000mを越える山々を登ってきましたが、例えば、ヒマラヤではまわりの環境を変えることはできない。空気が薄ければ、その中でも動ける身体に順応するしかない。極地では寒くても暖房をつけて温まることなんてできないから、自分が寒さに強い身体になるとか、寒さに耐えられるようにしっかり装備するということしかできませんよね。そうやって、その場その場で自分が土地に順応していく、ということを実践してきました。

 日常の暮らしも、同じだと思います。例えば、東京の街がクリエイティブであろうがなかろうが、自分がクリエイティブに生きていこうとすればいい。大人はそうやって意識さえあれば、自分の考えでどんな風にも動けるじゃないですか。でも、子どもは自分の思い通りに過ごすことはなかなか難しい。そう考えると、子どもたちにいろいろなきっかけを与えられる場が、都市にもっとあればいいなと思います。子どもたちにたくさんの可能性をつくることが、未来の街をクリエイティブにしていくことにつながるのではないでしょうか。

優れた本1冊を読み切ることは、ひとつの旅をしたことと同じ。

 地方に行くと、子どものための施設に力を入れているところがたくさんあります。もちろん東京にもありますが、地方の施設はもっと広々と遊べるような場所が多い印象です。あるといいなと思うのは、子どもが遊べる図書館ですね。机が並んでいて、みんな読書をしたり、勉強しているからうるさくしちゃいけない、というのが今の図書館。それもいいんだけど、子どもたちがもっと探検しながら動き回れるような博物館と図書館と公園が一緒になったような場があればいいな、と。館内も平坦ではなく、足の裏で異世界を感じられるような坂道や丘のようなものがあっていい。アスレチックとまでは言わないけれど、体を動かしながら、時々本を読んだり、休んだり、野外に本を持ち出せてもいいんじゃないか。子ども向けの施設なのに、事前予約が必要だったりすると、がっくりするんですよね。だから、もっとラフに、子どもたちが冒険できるような場所があればいいなあと思います。

 僕は、幼い頃から本を読むのが好きで、読書によって自分の素地がつくられてきた、と感じています。今はスマホなどに時間をとられて読書量が減っているけれど、中高生の頃は暇があれば本を読んでいました。電車内で本を読むのに夢中になって、降りなきゃいけない駅を乗り越しちゃったことが何度もある。本を読むって、旅をするのと一緒だと思うんです。遠い場所まで行かずとも、優れた本に出会って1冊読み切れば、それはひとつの旅をしたことと同じ。そういう体験を子どもたちに、ぜひしてもらいたいですね。

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六本木の芝生にテントを立て、昔の六本木に思いを馳せる。

 僕は幼少期から東京で過ごしていますが、当時から自然に触れる場所はあまりなかったので、自然のフィールドで遊ぶことにすごく憧れがありました。中高生の夏休みは、アウトドアの学校などに参加したりして。高校生の時に、カヌーイストの野田知佑さんに出会ったのも大きかった。彼の本には、たくさんの影響を受けました。

 自然に触れるための冒険合宿みたいなものは全国にあると思うのですが、六本木のような都心でも、何かしら子ども向けの学びのフィールドがつくれたらいいですね。例えば、ミッドタウンの芝生広場にテントを張って寝てみるだけでもいい。満月がこんなに明るいんだ、とか、暗闇って怖いんだな、日の出を迎えると暖かいんだ、という当たり前のことに触れる場になるといいですね。都市のど真ん中でテント泊って、僕もしたことがないから体験してみたいです。先ほどそれぞれの縮尺の地図があるという話をしましたけど、子どもたちと一緒に六本木の新しい地図をつくるのも楽しそうだなと思います。

 そういった子ども向けの活動は、どんどんやっていきたいと思っています。あとは、8,000m峰14座のうち今13座まで登って写真を撮ってきたので、最後のひとつを登りたい。今年4月の登頂を目指しているので、このインタビューが公開される頃には、もしかしたらまたネパールにいるかもしれません。

投げられるボールをキャッチするように写真を撮り続けたい。

 ヒマラヤでの撮影が近い目標だとすれば、ずっと先にある夢は宇宙で写真を撮ること。民間人でも宇宙船に搭乗できるようになってから、応募する気満々だったんですよ(笑)。でも、ヒマラヤ遠征と日程がかぶってしまって......。タイミングが合えばまたぜひ挑戦したいです。行ってみたいのは火星。標高約24,000mのオリンポス山を間近で見てみたい。普段、僕が登っている8,000m峰の3倍相当の高さと考えると、想像を超える光景なんだろうなとワクワクします。

オリンポス山

オリンポス山

火星にある楯状火山で、太陽系最大とされ、高さは約24,000m、裾野の幅は約600㎞と言われている。長らく死火山だと思われていたが、噴火した形跡なども発見されており、将来は噴火の可能性もあるかもしれないと言われている。

 そして、これからもフィルムで写真を撮っていきます。僕は、基本的に身体の反応で写真を撮る。例えば今、目の前に動物が出てきたら、僕は反射的に写真を撮るでしょう。「カッコいい」でも「面白い」でも「気持ち悪い」でも何でもいいんです。「なんだ、これ?」と体が反応したものを、ただ撮るというのがいいんですよね。

 狙いをすまして撮って、きれいな写真になるのも素晴らしいことだけど、僕は想像を超えたものに出会って、それを受け止めるように撮りたいんです。あと、写真のワークショップなどでいつも言っているのですが、SNSのいいねは「どうでも"いいね"」のいいねだから、そこを目指すと写真がダメになっちゃう、と。「いいね」を押すのって、みんな結構適当じゃないですか。承認欲求が一瞬満たされて嬉しく感じるけど、結局は消費されて終わってしまう。

 写真って、本来は時を止める魔法のような、すごく不思議なものだと思うんです。でも、SNSが普及して1日に何千万枚という写真が撮られている今、写真を撮ることが当たり前になりすぎて、みんな何とも思わなくなっていますよね。さらにAIとかも出てきて、何でもつくり出せる時代になってきた。だからこそ、僕はやっぱりフィルムで撮りたいな、と思います。光がもたらした化学反応で像が浮かび上がるわけで、コントロールできない何かが写真には常につきまとう。そうやって意図しない偶然と出会いながら、世界を記録することを僕はずっと続けていきたいと思っています。

撮影場所:国立新美術館

取材を終えて......
取材現場にいらした石川さんは、ひょうひょうとしているけれど、とてもエネルギッシュで、飾らずありのまま、そこに存在している。余計なものがないからこそ、感覚が研ぎ澄まされ、目の前で起こる出来事に敏感に反応できるのだと納得しました。当たり前のようで難しい、"分かったつもりにならない"こと。膨大な情報量に囲まれ、簡単に答えを知れる時代だからこそ、いつも心に置いておきたいとあらためて実感しました。14座制覇の吉報を楽しみに待ちつつも、何よりご無事で戻っていらっしゃることを願わずにはいられません。(text_akiko miyaura)

前編はこちら

石川直樹

石川直樹 / 写真家
石川直樹 / 写真家

1977年東京都渋谷区生まれ。東京芸術大学大学院美術研究科博士後期課程修了。人類学、民俗学などの領域に関心を持ち、辺境から都市まであらゆる場所を旅しながら、作品を発表し続けている。2008年『NEW DIMENSION』(赤々舎)、『POLAR』(リトルモア)により日本写真協会賞新人賞、講談社出版文化賞。2011年『CORONA』(青土社)により土門拳賞。2020年『EVEREST』(CCCメディアハウス)、『まれびと』(小学館)により日本写真協会賞作家賞を受賞した。著書に、開高健ノンフィクション賞を受賞した『最後の冒険家』(集英社)、『地上に星座をつくる』(新潮社)ほか。 主な個展に『JAPONÉSIA』ジャパンハウス サンパウロ、オスカーニーマイヤー美術館(ブラジル/2020-2021)。『この星の光の地図を写す』水戸芸術館、新潟市美術館、市原湖畔美術館、高知県立美術館、北九州市立美術館、東京オペラシティアートギャラリー(2016-2019)。『K2』CHANEL NEXUS HALL(東京/2015)、『ARCHIPELAGO』沖縄県立美術館(沖縄/2010)など。作品は、東京都現代美術館、東京都写真美術館、横浜美術館、沖縄県立美術館等に収蔵されている。最新刊に『Kangchenjunga』(POST-FAKE)、『Manaslu 2022 edition』(SLANT)など。

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