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INTERVIEW
145
蓮沼執太×毛利悠子音楽家 × 美術家 Shuta Hasunuma × Yuko Mohri / Composer × Artist
Shuta Hasunuma × Yuko Mohri / Composer × Artist

『六本木の“お隣さん”に突撃できる、自由なピクニックを』【後編】

社会からはみ出るための免疫となる“毒”を街中に。

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update_2023.03.15 photo_yuka ikenoya / text_akiko miyaura

音楽という視点から「蓮沼執太フィル」というコレクティブの組織やインスタレーションなどの作品制作を行う蓮沼執太さん、日用品や楽器、機械の部品などを用いてインスタレーション作品や彫刻作品を制作する毛利悠子さん。お2人は、音や構成(コンポジション)に注目する共通点から、過去にコラボレーションもしてきました。現在SCAI PIRAMIDEで開催中の赤瀬川原平写真展「日常に散らばった芸術の微粒子」では、赤瀬川原平氏が残した写真の選者を務めています。そんな彼らが今回の展覧会や普段の制作を通じて考えた、街とアーティストの関係、コロナ禍以降の社会のあり方、そして他者との繋がりについて、お話を聞きました。

前編はこちら

六本木の分断に交わりを生む「隣の晩ごはん」。

毛利悠子今回の展覧会(赤瀬川原平写真展「日常に散らばった芸術の微粒子」)で赤瀬川さんの写真を選ばせていただいたけど、図々しいくらい入り込む感覚というか、失礼しますねって踏み入る感じが、「突撃!隣の晩ごはん」のヨネスケ感があるなと思って(笑)。

蓮沼執太急に六本木未来会議に似合わない、昭和のネタを出してきたね(笑)。

毛利でも、むしろ六本木で「隣の晩ごはん」してみたくない? 問題は、私たちが誰もが知る超有名人じゃないってこと。いきなり、知らない人が家に来て「あなたの家の夕食見せて」って言ったらビックリするじゃない?

蓮沼たしかに。今って街での暮らしが分断されている感じがするんだよね。資本主義的に人間が分厚い壁をつくって、それぞれが生活していて。でも、そこへ無知を装いながら「晩ごはん見せてください!」って突撃して、「あ、こういうものを食べて、普段生きているんだ」って交われば、分断の壁が少しなくなる気はする。そう考えると、六本木で「隣の晩ごはん」をやるってアイデアは、結構いい線いっているかもしれない。

毛利そもそも、私はご飯がめちゃめちゃ気になる方で、日本の地方や海外に行くと、現地の人が何を食べているのか、オススメの食材や料理は何かをまず聞く。今度、『光州ビエンナーレ』のインストールで韓国に行くんだけど、真面目に仕事の話をしてるフリしながら「ところで、普段、何食べてるの?」って聞いちゃうと思う。

食の話って、一気に街が分かる。それに、食器も地域ごとに違うじゃない? 食べ物と建物、食器って密接で、すごく文化的素材なんじゃないかと考えたら、急にすごく深く感じて。きっと昔からある現地の絵画や彫刻、建築なんかともすごく繋がっているんだろうなと思う。

蓮沼たしかに衣食住が西洋化している中でも、食はまだ半分くらい文化が残っている感じがするよね。僕も食が大好きだし、毛利さんと同じで地方や海外に行くと、最初に「おいしいもの教えてください」って聞いちゃうんだよね。あえて何も分からない状態で行って、地元の人に聞くのが一番いいな。どの地域にも、「この人に聞けばいい」っていう人が大体いる。なんとなく雰囲気とか、振る舞いで分かるというか。

毛利振る舞いは大きいかもしれない。食好きな人って、基本、空間をシェアしたい人だから、わりと社交的で、いわゆる仕事以外の話もちゃんとできる人だと思う。

蓮沼食って人と人を繋ぐものなんだろうね。話は戻るけど、そういう意味でも六本木で「隣の晩ごはん」はいいと思う。要はおいしいか、おいしくないかを分かろうとするとか、どういう食器を使って、どんなマナーで食べているかを見て生活の背景を知るとか。それぞれの生活文化があって、お互いが理解しようとするってことだと思うから。

本当は考えが違うはずなのに、みんな同じに見える。

毛利互いへの理解を深めるというのもそうだけど、みんながもう少しだけ自由に好きなこと、思ったことを素直にできるようになればいいなって思う。そうすれば、みんなが見ている社会がよりはっきり見えてくると思うんだよね。今って、みんなが同じというか。本当は考えてることってバラバラなはずなのに、私が教えている美大ですら、みんな決められたことだけを考えているように見える時もある。私がいる学科は半分以上が留学生なんだけど、「なんで、日本はこうなの?」って質問されることも多い。例えば、校内の展示してはいけない場所を展示空間として使う時はドキュメントを提出する必要があったり、電気を使う許可を取らなければならなかったり。一応、ネゴシエーションのトレーニングという側面もあるけど、どこかお作法になっちゃっているところもある。

蓮沼たしかに。ルールに従うということも必要だけど、いかにルールから外れて、抜け穴を見つけて楽しめるかみたいなことも大事で。そういう自分たちのルールづくりが、僕たちはたぶん得意な側だと思うんだよね。自由に何かをする感性って、少しずつ経験して成功したり失敗したりしながら、出来上がってくるもの。だから、もう少し柔らかく、幼稚園ぐらいから好きにやれるようになればいいのになとは思う。

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行き詰まった社会を変えるには、いい意味での毒も必要。

蓮沼大学もそうだけど、組織に所属していると、その中に当然社会があるわけじゃない? 大きな社会だけじゃなく、すごく小さな社会もあって。アートの文脈でもマーケットという社会性もあるだろうし、文脈、戦略としてもドメスティックなものと国際的なものの差分もある。音楽だって市場優先な構造がある中でどうやっていくか、みたいな話もなる。

アートという形から一歩引いてみて、社会で活動をやっている身として大きく捉えると、それぞれの社会でいろんな資本主義が育ちすぎていて、出来上がっているシステムの中にコンテンツとして入っていくという形になるんだよね。そうした時、どうやって構造の仕組みを変えるかとか、どう異物を加えてパラダイムを変化させていくかとか、そのくらいしかできないなというのも感じる。ただ、行き詰まり感のある今の社会づくりに、やっぱり風穴も開けていかないと、とも同時に思うんだよね。

毛利そのためには、毒が必要なんじゃないかと思う。コロナ禍前の話なんだけど、エコール・デ・ボザールの学生たちを連れて、東京オペラシティの『イサム・ノグチ ─彫刻から身体・庭へ─』(2018年)に行ったんだよね。その時、みんながすごくインスピレーションを受けたみたいで、突然その場で踊り出したの。面白いな〜って眺めてたんだけど、決して人として悪いことはしていないのに、係員に止められちゃったんだよね。でも、最初は小さなダンスから始めていけば、10年後くらいになったら、めちゃくちゃ大きな動きになっているかもしれないじゃない? ダンスはひとつの例だけど、要は少しずつ毒を広げて免疫をつけていくってことができたらいいよね。

蓮沼時間をかけて徐々に慣らしていく、みたいなね。

表現を通じてみんなが社会からはみ出せる自由さを伝える。

毛利私たちが、その毒のひとつになれたらいいんじゃないかな。服をリメイクしているブランド「途中でやめる」の山下陽光くんが、「今、どこどこに100円を隠しました。どうぞ探して」みたいなことをSNSにたまに流すんだけど、ああいうゲリラ的な表現って毒としていいなあって。クリエイターと見る人とのヒエラルキーをなくして、どこでも自由に表現できるとなれば、さらにいい。

蓮沼そうね。みんなで純粋に楽しむこともいいけど、それぞれが自分なりに新しい発見や再発見をして、「これ、見てよ」ってシェアするのも大事。そういう意味で、ゲリラ的なものでストリートに出て開放的に発見していくのはいいと思う。

毛利もし、私たちが六本木で何かやるなら......例えば、蓮沼くんはもうすぐアルバム『symphil|シンフィル』が出るけど、そういう音楽活動を生かして路上ライブをして、私は街中でゲリラ展示をするみたいなコラボができたら面白いかもね。あと、自由にピクニックができる場所が街なかに増えればいいのにとも思う。

symphil|シンフィル

symphil|シンフィル

蓮沼執太のプロジェクト「蓮沼執太フィル」の約5年ぶりのスタジオ・アルバム(2023年3月22日リリース予定)。「自分自身を大切にすること。そして、他者や自分以外の世界を肯定して共に生きること」と「回復」「共在」がコンセプトとなっている。ジャケットのイラストは、Johanna Tagada Hoffbeck、デザインは、佐々木暁が手掛けている。4月2日には、東京オペラシティ コンサートホール:タケミツ メモリアルにて『ミュージック・トゥデイ』を開催予定。

蓮沼何か食べながら、僕の演奏を聴いて、毛利さんの展示を見て。

毛利そうそう。お花見の時くらいだもんね、みんなが街で自由にパーティーできるのって。それこそ、お花見だと「隣の晩ごはん」もしやすい(笑)。

蓮沼たしかに(笑)。日本人は特にそうだと思うけど、「How are you?」みたいな他人とコミュニケーションが取れる言葉がないから、人に何か聞けない空気がある。だからこそ、無知になってガンガン他人の領域に足を踏み込んでいく、「隣の晩ごはん」的な表現は作戦としては、やっぱりありだなと思う。

毛利あとは有名人じゃなくても、みんなが気軽に突撃できるライセンスみたいなものがあったら楽しいだろうね。そういう表現を通じて、社会からはみ出ることができたらなって。「YouTuber」はそんなライセンスに近いのかもしれないけど、やってることはテレビタレントの縮小版みたいなのが多いし......、私たちも「突撃!隣の晩ごはん」なんて言ってるから同じようなもんか(笑)。ともあれ、私たちの表現が毒となって街に免疫がついて、結果、みんなが自分の好きなことを自由にできる空気になればいいな。

撮影場所:赤瀬川原平写真展「日常に散らばった芸術の微粒子」(会場:SCAI PIRAMIDE、会期:2023年1月26日~3月25日)

取材を終えて......
昔からお互いをよく知る、蓮沼さんと毛利さんだからこその対談。終始和やかなムードで、笑いが絶えない取材現場でした。お2人の話は人柄を表わすように、とても純粋性が高くて、いい意味でシンプル。好きなことができる自由を得るために少しはみ出す一歩、分断された壁を壊すために無知に踏み込む一歩、スマホ文化の弊害を打ち破るために人間らしさを取り戻す一歩。どれもが思った以上に大きな一歩ではあるけれど、誰もができる歩みでもある。お2人の表現活動は、その一歩を踏み出せる力と勇気と覚悟をくれるような気がします。ぜひ、六本木の「隣の晩ごはん」も見てみたい! 心がふわっと軽くワクワクする時間でした。(text_akiko miyaura)

前編はこちら

蓮沼執太

蓮沼執太 / 音楽家
蓮沼執太 / 音楽家

1983年東京都生まれ。蓮沼執太フィルを組織して、国内外での音楽公演をはじめ、映画、演劇、ダンスなど、多数の音楽制作を行う。また「作曲」という手法を応用し物質的な表現を用いて、彫刻、映像、インスタレーション、パフォーマンス、ワークショップ、プロジェクトなどを制作する。2013年にアジアン・カルチュラル・カウンシル(ACC)のグランティ、2017年に文化庁・東アジア文化交流史に任命されるなど、国外での活動も多い。主な個展に2016年「compositions : rhythm」Spiral、東京、2017年「作曲的|compositions」Beijing Culture and Art Center、北京、2018年「Compositions」Pioneer Works 、ニューヨーク、2018年「 ~ ing」資生堂ギャラリー、東京、2020年「OTHER "Someone's public and private / Something's public and private」void+、東京 などがある。また、近年のグループ展に2020年「太田の美術vol.3「2020年のさざえ堂―現代の螺旋と100枚の絵」太田市美術館、群馬、2021年「Faces」SCAI PIRAMIDE、東京など。第69回芸術選奨文部科学大臣新人賞(2019年)を受賞。

毛利悠子

毛利悠子 / 美術家
毛利悠子 / 美術家

1980年生まれ。コンポジションへのアプローチではなく、環境などの諸条件によって変化してゆく「事象」にフォーカスするインスタレーションやスカルプチャーを制作。近年の個展に「I/O」(アトリエ・ノールト、オスロ、2021年)、「Parade(a Drip, a Drop, the End of the Tale)」(ジャパンハウス サンパウロ、2021年)、「SP. by yuko mohri」(Ginza Sony Park、東京、2020年)、「Voluta」(カムデン・アーツ・センター、ロンドン、2018年)、「毛利悠子:ただし抵抗はあるものとする」(十和田市現代美術館、青森、2018年)など。また「第23回シドニー・ビエンナーレ」(シドニー、2022年)、「アジア・アート・ビエンナーレ2021」(台中、2021年)、「第34回サンパウロ・ビエンナーレ」(サンパウロ、2021年)、「グラスゴー・インターナショナル2021」(グラスゴー)、「第9回アジア・パシフィック・トライエニアル」(ブリスベン、2018年)、「第14回リヨン・ビエンナーレ」(リヨン、2017年)、「ヨコハマトリエンナーレ2014」(神奈川)など国内外の展覧会に参加。2015年に日産アートアワードグランプリ、2016年に神奈川文化賞未来賞、2017年に第67回芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞。2015年、アジアン・カルチュラル・カウンシル(ACC)のグランティとして渡米。2018年に文化庁文化交流使東アジア文化交流使として中国に滞在。2022年、アンスティチュ・フランセ・シテ・アンテルナショナル・デ・ザール2020 ローリエットとして渡仏。 https://www.mohrizm.net/

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