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INTERVIEW
110
寒川裕人現代美術作家 Eugene Kangawa / Artist(THE EUGENE Studio)
Eugene Kangawa / Artist(THE EUGENE Studio)

『複雑化した社会のほころびを見つけ、小さな行動を積み重ねていく』【後編】

遠い未来ではなく、ほんの少し先の社会を描く。

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update_2019.11.13 photo_yuka ikeya / text_ikuko hyodo

現代美術を中心とした活動を展開し、人工知能、都市計画、教育、バイオテクノロジーなどまでにその領域を広げるTHE EUGENE Studio創設者、寒川裕人(Eugene Kangawa)。国立新美術館で開催中の『カルティエ、時の結晶』では、ノンキャプションシステムというまったく新しい作品解説システムを発案しています。自身の展覧会での経験から、作品と鑑賞者の理想的なあり方を追求したこのシステムに込めた思いとは。若き現代美術家が考えるアートの可能性とともに伺いました。

前編はこちら

本当に知りたいのは、技術ではなく、哲学。

 幸いにも、様々な領域を見て回る機会がありました。例えばバイオテクノロジー、人工知能、都市、モビリティ、農業など......どの分野も実際に覗いてみないとわからないですよね。関わる人々が実際に考えていることは、本に書かれていることとはまた違います。そういった研究に携わることは、今は好奇心とライフワークのような感覚になっています。本当に知りたいのは技術ではなく、それが今生まれる哲学。重要なのは、そこで得た感覚をどうやって作品に圧縮できるかな、ということ。50年前に、当時最新の絵の具と筆で描かれた絵があったとして、それだけでは面白みはない。

大きな未来の話ではなく。

 おそらく今は時代の変わり目で、将来振り返った時に、停滞ではなく、いろいろな動きがあったように見える時代になるのだと思います。ひと昔前は大きなマニフェストや原理を掲げれば、物事はある程度動かせたのかもしれませんが、その残り火の煽りを浴びるのは、次の世代。その渦中の現在においては、極端にもう一度0に戻して100にすればいいという話は意味がなく、複雑化した社会のほころびがあれば、ひとつずつ細かく対応して修正していくしか方法はない。

 これは決して悪く捉えているわけではなく、それが僕たちのタイミングなのだろうし、皆もおそらく一生懸命行動を積み重ねているのだけれど、その結果、もしかしたら失敗する可能性だってもちろんある。そうしたらまた次の世代が、全体に通じていた哲学を見直したりして、50年後や100年後になるかもしれないけれども、何かまったく別のことをやっていくでしょう。振り返ってみても大きな未来の話はほとんど効果がなかったし、過熱するようなマニフェストは本来それほど機能しないもの。冷淡と皮肉も停滞を生んだだけ。今はそういうことがあったということをよく踏まえて、小さくてもいいので行動していくしかない。その中で美術は、行為そのものであり、哲学を担うような、そういった一端であってほしいですね。

カルティエ、時の結晶

カルティエのジュエリーとともに展示されている剣は、鎌倉時代の「三鈷剣」で、特徴的な形状の三鈷柄に、現代の刀匠に鍛えさせた刀身をあつらえた杉本博司によるミクストメディア。

展示手前から
《ネックレス》カルティエ、2018年
ホワイトゴールド、計199.02カラットのアフガニスタン産バロックシェイプ エメラルド 22個、スピネル、ガーネット、オニキス、トルコ石、ダイヤモンド
個人蔵

《イヤリング》カルティエ、2018年
ホワイトゴールド、計10.87カラットのアフガニスタン産バロックシェイプ エメラルド 2個、スピネル、ガーネット、オニキス、トルコ石、ダイヤモンド
個人蔵

 SFは今や"Science Fiction(サイエンス・フィクション)"の略ではなく、"Speculative Fiction(スペキュレイティヴ・フィクション)"という意味合いが強くなっています。宇宙の戦争も含めて巨大な未来を派手に描くのは物語としてはたしかに面白いけれども、ディストピア的雰囲気を帯びたものが多いのも事実で、SFが創ってきたイメージというのは、よく考えてみると影響が大きい分、案外罪深いのかもしれない。描く側は自由だけれど、当事者だったらそんな未来は来てほしくないということがある。

 自分の作品でも遠い時代の話をするつもりはなく、未来という言葉のイメージも実はそれほど好きではありません。「ほんの少し先」や「ほぼ現実」であっても、我々がその時点で知らないことは未来と言えます。今こうして話していることも、10分前の自分から見れば未来になるわけです。未来という言葉の持つ意味合いは、その程度の感覚かもしれません。

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不自然な差異をなくすために。

 生まれはアメリカですが、主に多くの時間を過ごしたのは神戸です。東京を拠点にしたのは10年ほど前で、そこで初めて六本木をゆっくりと見ました。最初の印象は台北に訪れた時と近かったかもしれません。六本木と乃木坂の間には一段下がったエリアがありますが、そこを通った際、手前に古いお店などが並んでいて、影になっている小さな公園の背後、木の間から、霞みがかった六本木ヒルズが突然現れた。まるでファイナルファンタジーVIIのような世界で、街が縦ではなく横軸に分かれている。品川や都庁前もそうですが、空中の通路とその下にも通路が存在するので、高低差が非常に大きい街という印象があります。ここでの高低差は山と谷の地形の話だけではなく、差異をつくろうとしたから生まれたもの。ここにあるのは、自然に生まれる文化の差異だけではない。それが六本木という街の成り立ちなのかもしれません。

 そういう大きなスケールの中で最近思うのは、木や縁石などをケアするだけで、街の印象は少なからず変わるということです。この間、ロサンゼルスにしばらく滞在していたのですが、貧富の差が大きく、あるエリアにはスプリンクラーが設置され、恒常的な緑があって、道路もきれいに整えられていました。一方で通りを挟んですぐ横にある治安のよくないとされるエリアは、まず木が枯れていたりして、まったく異なる印象を受けました。六本木も21_21 DESIGN SIGHTの前に小川が流れていますが、ああいった景色が街の中央にあることが重要なのではないでしょうか。隙間になっているような場所を少しずつ修正していくほうが、大型の何かを壊して新しくつくるよりも負担が少ないだろうし、楽しもうとする人が増えそう。

 僕たちや次の世代が、社会にある不自然な差異の違和感に徐々に気づき、やがてある側面においてはフラットになっていくはずだと思っています。それは別に社会主義に戻るというような極端な話ではまったくなく、ある日いきなり変わるわけでもなくて、やはりここでも細かい修正を重ねることで結果的に不自然な差異がなくなっていくのでしょう。造られた貧富による差異が機能しなくなった時、六本木は街に点在するハードが巨大である分、どんな変化を遂げるのか、社会の変化に追いつけるのか、が興味深い。生活の様式はどう変容して、幸福度はどのくらい高くなっているのか。それに対応する形を見い出せるのか。隙間を埋めていくことで空間の使い方を一変できる可能性もあるし、細かく修正していくことで非常に魅力的な街になるかもしれない。あるいは使い道が見出せず、徹底したエンターテインメント、夢の街として機能し出すかもしれませんね。

様々な人生と作品の循環。

 最初の話に戻りますが、生活と作品は循環しています。鑑賞者にそれぞれの人生があるように、作品にも作家にも人生がある。それにその日のコンディションや、何に乗ってどの街を通ってきたか、前日に誰かと話したこと、見聞きしたニュース、あるいは半年前の出来事など、あらゆる指標がある中で作品と鑑賞者が接近して何かが起こる。作品を通して他者の人生を変えたいわけではないけれども、多かれ少なかれ変わっていく可能性がある。それは今日かもしれないし、100年後の誰かかもしれない。それが美術の面白さなのだと僕は思います。

会場構成:新素材研究所 © N.M.R.L./ Hiroshi Sugimoto + Tomoyuki Sakakida

【展覧会概要】
展覧会名:カルティエ、時の結晶
会期:開催中~12月16日(月)
会場:国立新美術館 企画展示室2E

取材を終えて......
30歳にしてすでに華々しいキャリアを持つ現代美術家は、冷静に社会を俯瞰して問題点を洗い出し、アートという手段でほころびを修正していこうとする、地に足のついた考え方の持ち主でした。はたしてそれがジェネレーションによるものなのか、本人の個性なのか、ここで結論を出すことはできませんが、美術に対する信念は言葉の端々から伝わってきました。『カルティエ、時の結晶』のノンキャプションシステムを体験すると、その思いがより実感できるはずです。(text_ikuko hyodo)

前編はこちら

寒川裕人

寒川裕人 / 現代美術作家(THE EUGENE Studio)
寒川裕人 / 現代美術作家(THE EUGENE Studio)

THE EUGENE Studioは日本のアーティストスタジオ。サーペンタイン・ギャラリー(ロンドン)「89+」(2014)、資生堂ギャラリー(東京)個展「THE EUGENE Studio 1/2 Century later.」(2017)、国立新美術館『漆黒能』(2019)のほか、資生堂ギャラリー100周年記念展でのイギリスの建築家集団アッセンブルとの展示、青森県立美術館「青森EARTH2019:いのち耕す場所」、アメリカ三大SF賞の小説家ケン・リュウとの共同執筆など。そのほか人工知能や都市、バイオテクノロジー領域他の研究開発等に過去に招聘、2017年に出版された『アート×テクノロジーの時代』(宮津大輔著、光文社新書)ではチームラボらとともに日本を代表する四つのアーティストとして特集されている。寒川裕人(Eugene Kangawa)は1989年生まれ。

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