国立新美術館では、2025年9月3日(水)より「日本の現代美術と世界 1989‒2010(仮称)」の開催を予定しています。それに先立ち、2024年11月8日(金)にプレスカンファレンスが実施されました。今回はその様子をレポートします。
2024年3月、国立新美術館とM+は、日本の美術に関する初の国際的なキュレーション協力を見据えて基本合意書に調印し、共同企画の開催を発表しました。香港の西九龍文化地区にあるM+は、現代の視覚文化を包括的に扱うアジア初の美術館として知られています。
プレスカンファレンスには、国立新美術館から館長の逢坂恵理子氏と特定研究員の尹志慧氏、M+からドリアン・チョン氏とイザベラ・タム氏が登壇しました。
本展は、平成元年を迎えた1989年から東日本大震災に見舞われた2011年という大きな節目に挟まれた20年間に焦点を当て、日本の現代美術をたどる予定。同館とM+のキュレーターが一体となって、従来とは異なる視点で探求していくとのことです。
逢坂氏は「近年、文化庁は日本の現代美術の振興、そして若手・中堅アーティストへの支援、海外発信の強化という政策を打ち出しています。当館では特に2022年から、発信力のある現代美術展の実施に力を注いできました」として、近年個展を開催した李禹煥氏、蔡國強氏、大巻伸嗣氏、田名網敬一氏、荒川ナッシュ医氏の名前を挙げました。
続けて「こうした流れの中で、海外からの視点も取り入れ、日本の現代美術を複数の視点で読み解く展覧会を構想するようになりました。そのパートナーとして、アメリカでキュレーターとしての経歴を持ち、日本の現代美術にも明るいチョンさんに共同企画の打診をしました」と、本展の経緯について説明しました。
チョン氏は「M+は、2024年の11月12日をもって開館3年目を迎えます。アジア初の視覚文化に特化したミュージアムで、ビジュアル・アート(視覚芸術)、デザインと建築、映像作品の3本柱によって構成されています」と、まずM+を紹介。
「香港に拠点を置いているということから、香港そして中国や近隣地域の作品・資料に重点をおいて多く集めているのは当然の帰結かと思います。しかし、コレクションそのものの構成比を見ていくと、実は日本からの収蔵品が大きな比率を占めています。M+が重視している分野のいずれを取っても、長い歴史の中で圧倒的な存在感を放っているからです」と、アジア圏における日本の重要性について語りました。
本展については「"日本の"などと限定的な捉え方はしません。国際的な風通しがよく、海外との接触によって刺激があった時代ではないかと思いますので、そこにフォーカスしていきます。また、この時代を実際に生きた人々にお話を伺い、これまで知られてこなかったエピソードも集約させていきたいと考えています」と説明。開催がより一層楽しみになるプレスカンファレンスとなりました。
なお、同館の公式YouTubeチャンネルでは、同日に開催されたシンポジウムのアーカイヴ映像が公開中です。こちらも併せてご覧ください。
編集部 齊藤
「日本の現代美術と世界 1989‒2010(仮称)」
会期:2025年9月3日(水)~2025年12月8日(月)
会場:国立新美術館 企画展示室 1E
主催:国立新美術館
共催:M+
キュレーションチーム
キュラトリアル・ディレクター:ドリアン・チョン(M+アーティスティック・ディレクター、チーフ・キュレーター)
キュレーター:イザベラ・タム(M+ビジュアル・アート部門キュレーター)、尹志慧(国立新美術館特定研究員)
公式サイト(URLをクリックすると外部サイトへ移動します):
https://www.nact.jp/