六本木で働く・住む人に、街についてのインタビューをし、リレーでつなげる当企画。今回登場してくれたのは、飯倉片町のイタリアンレストラン「DE・SOT・BAR・NOZAKI」のオーナーシェフ・野﨑幸彦さん。18歳で修業をはじめて以来、30年以上この街を見てきた野﨑さんが語る、六本木の今と昔とは?
Q 01
六本木といえば_________。(一言で表すと?)
A
僕らの世代からすると、六本木といえばディスコとか、キャンティとか。自分が働きはじめた30年前は、なにしろ「大人が遊んでいる街」という感じ。それから、麻布十番にも駅ができて、六本木ヒルズや東京ミッドタウンができて......。人はたくさん来るようになったけれど、面白みはなくなってしまった気がします。
表通りはチェーン店ばかりで、個人のお店がなくなり、オシャレなおじさんも減ってしまった。駅がなくて、不便なところがよかったのにね(笑)。でもやっぱり、好きは好きなんです。なんだろう、このザワザワしている感じとか、ネオンが心地いいんでしょうね。
Q 02
あなたがオススメする、六本木のベスト3は?(飲食店を含む、あらゆるお店でOK)
A
1位 南蛮亭
六本木交差点の近くに、もう40年以上前からある焼き鳥の名店。ここのおやっさんはとにかくかっこいい。元フレンチの料理人で、昔でいう「不良」ですね(笑)。最近は店にいたりいなかったりですが、おやっさんが焼くと何を頼んでも本当にうまい。素材への、火の入れ方がすばらしいと思います。
2位 AXIS
ここも、もうできて35〜36年になるでしょう? 30年以上もたつのにまったく変わらず、古いのに古さを感じさせない、お金のかけ方がすばらしい。うちの店はAXISビルのすぐ脇にあるので、「六本木と人」にも登場していたリビング・モティーフの店長・谷口さんをはじめ、食べに来てくれる人も多いですよ。
3位 DE・SOT・BAR・NOZAKI
思いつかないので、最後はうちを入れてもらって。ちなみに、うちの店にはコースもメニューもワインリストもないんです。理由は、コースって、お客さんではなく店側の都合だから。とはいえ、おまかせしかないみたいな店も嫌なので、頼み方は自由。「サラダとパスタをちょっと」とか「お肉はたくさん食べたい」とか、希望を言ってもらえれば合わせますし、「カキがはじまったから食べる?」なんて、おすすめすることも。常連さんが多いので、ほぼ勝手につくることが多いですけど(笑)。
Q 03
六本木にある、お気に入りの景色は?
A
やっぱり、六本木交差点から見る東京タワーですかね。夜景は好きじゃないのに、ネオン越しに眺める東京タワーは好きだなあ。六本木はなんだかんだいって安全だし、何でもあるし、24時間どこでも開いている。こんな街、世界にないですから。見慣れてすぎてしまっていて、ふだんは何とも思わないですけど。
Q 04
六本木のアフター5の過ごし方は?
A
お客さんが途切れたら10時くらいに店を閉めることもあれば、深夜2時くらいまで開けていることもありますが、まず、まっすぐ家には帰らないですね(笑)。仕事が終わると、たいがいはバーに寄り道。後輩か知り合いの店に飲みにいくのが、"アフターミッドナイト"の定番コースです。
Q 05
六本木ならではのリフレッシュ方法は?
A
そもそもリフレッシュしたいって思うこと自体がないんですが......昔からテニスが趣味なんです。六本木とはあまり関係ないですが、この近辺にテニス仲間が多いので、青山や赤羽橋のコートでプレイしたり、区民大会に出たり。
休日に、気の合う仲間とボールを打ち合うのは本当に気持ちがいい。終わったあとにおいしいお酒を飲むのも含めて、最高ですね(笑)。
Q 06
身の回りのお気に入りのデザインは?
A
料理人だし、調理道具がいいかなと思って。このオイスターナイフ、かっこいいでしょう? 日本にはなかなか、こういういいデザインのものがないんですよ。
これは、フランスの「DHILLERIN(ディルラン)」というプロ仕様の道具屋のもの。ヨーロッパで修業していたとき、先輩に連れていってもらって一目惚れして、いくつも買って、それから20年以上ずっと店で愛用してますね。
Q 07
六本木をもっと良い街にするには?
A
まわりでもみんな言っていますが、外苑東通りの歩道が狭くて、毎日通っていてイライラしますよね。道を広くして、東京タワーまでドーンとつなげてくれたら、表参道どころじゃない、すごい名所になると思うんですけど。
あとは、Q 01でも言った「面白み」の部分ですが、これはなかなか難しい問題で。まだまだけっこう面白いお店はあるけれど、そういうのはネットを見てもなかなかわからないから......。それがうまく伝えられて、昔のように「大人のための街」になったらいいですね。
Q 08
前回出演した方(貞森亨さん)とのつながりを教えてください。
A
ご近所さんです。うちや貞森さんのお店がある飯倉片町は、六本木の中でも大人が来る場所。昔から静かで、大きな商業施設もないから、ここを目指して来る人だけが集まる。いいお店がたくさんありますよ。
no.048
野﨑幸彦さん
40代・オーナーシェフ
六本木歴30年