TOUR REPORT

第16回六本木デザイン&アートツアー 内原智史氏と巡る六本木ライティングツアー

第16回六本木デザイン&アートツアー 内原智史氏と巡る六本木ライティングツアー

update_2014.12.17 / photo_tsukao / text&edit_kentaro inoue & yosuke iizuka

六本木の冬の風物詩となりつつある、六本木ヒルズや東京ミッドタウンのクリスマスイルミネーション。先日、そんなさまざまな明かりが灯る六本木の街を巡るツアーが行われました。ガイドは、六本木ヒルズのイルミネーションを手がけるライティングデザイナー・内原智史さん。イルミネーションから建築照明、夜景まで、「光のデザイン」にじっくり触れたツアーの様子をレポートします。

毎年変わらずにある、街のホスピタリティとしての装飾。

まずは、約400mの並木を約110万灯のLEDが彩る「けやき坂GALAXYイルミネーション」から。ツアー開始と同時にイルミネーションが一斉に点灯し、多くの人でにぎわう中、内原さんの解説がはじまりました。

「日本では、クリスマスイルミネーションは商業目的でやることがほとんどですが、古くはクリスマスに木にろうそくを差して灯したという記録もあるように、キリスト教に由来するものですね。また、たとえば星空を見て感動したりするように、そもそも人間は光に感情移入をします。誰もがなぜか心を揺さぶられるんですけれど、その確かな理由はわかっていません」

「街路灯など、六本木ヒルズのベースライトは少し暖かみのある色。それに対して、イルミネーションは樹氷のように真っ白いデザインにしています。六本木のイルミネーション全体としては、この街にやってくる人たちを喜ばせようという趣旨があります。商業施設の宣伝活動という以前に、街がたくさんの人を迎えるためのホスピタリティという捉え方ですね。実はこのイルミネーション、はじまって以来、基本的にデザインを変えていません。それは、毎年同じものを見られるという安心感を与えたかったから。『冬の風物詩』といわれるようなものにしたいと思って、できるだけ変えなかったんです」

「昨年の六本木ヒルズ10周年を機に、セレブレーションカラーとして赤と白の2色が入れ替わるようにしてみました。この赤が、意外とチャレンジングなんです。信号と同化しては困るということで、警察にも協力してもらったり。日本では赤は警戒を促す色ですが、ヨーロッパ、とくにロンドンの街並の装飾には、キャンドルカラーと赤いオーナメントの組み合わせがすごく多い。それが、クリスマスの愛らしさであったり、ちょっと心があったかくなるような原風景を表現できるのではと思って、以前から赤いイルミネーションのアイデアは温めていました」

「振り返ると、東京タワーが見えますよね。この景色は、ここの資産だと思います。去年、東京タワーの灯りが消えた瞬間、連動したかのようにイルミネーションも消えて、『よくここまで演出したね!』と驚かれましたが、それは偶然(笑)」

photo_toshio kaneko

「今、たくさんの人が記念撮影をしていますが、撮り終わると帰っちゃうんです。そういう人たちに周遊してほしいと思って、今年は『隠れハート』のアイデアを提案しました。2ヶ所に設置したハート型のイルミネーションが、1時間に5分×2回灯るというもの。大掛かりなものよりも、口コミになる簡単なもののほうが効果的な場合があるんですよね」

「私は、日本の照明デザインの第一人者、石井幹子さんの事務所で10年ほど建築照明などを手がけていましたが、実はイルミネーションをデザインしたのは、ここ六本木が初めてでした。ライティングデザインの歴史はまだ浅いので、そうした新しい試みにチャレンジするチャンスはたくさん。これからはイルミネーションの世界に、デザイナーが参加することなんかも増えていくでしょうね」

イルミネーションは、コストパフォーマンスがいい?

「ここ毛利庭園では、けやき坂のイルミネーションと連動して赤と白を切り替えるということをやっています。一言で赤といっても、波長の異なる何種類かの光を混ぜていて、分量としては白と同量ですが、その配分はすごくデリケートなんです。赤は強すぎるとちょっと嫌みな色になってしまうので、そういうものは外して、何度もチェックを重ねて混合比を決めています」

「予算的なことをいうと、毛利庭園内にあるLEDライトなど装置の値段だけで、だいたい数百万円。設営するために同じくらいの人件費がかかりますが、たぶん今、日本中でクリスマスイルミネーションが増えているのはコストパフォーマンスがいいからでしょう。ちなみに、けやき坂の木には1本あたり5000球以上がついていますが、毎年、同じ人に設営してもらっています。回数を重ねれば熟練していくし、コスト以外にもいろんなメリットがある。職人さんからしても、これだけの人に見てもらえるというのはモチベーションになりますから」

「六本木ヒルズのイルミネーションが、2月15日くらいまで。そして3月に入ると、もうその年の年末のコンセプトづくりに入ります。1年中やっているので、毎年この時期には、もうイルミネーションはおなかいっぱい、という気分(笑)。私たちは他にも、いわゆるライトアップといわれるような屋外の仕事も多く手がけています。光には遠くまで届くという特別な力があるので、たとえ小さな光でも、都市を巻き込み、環境やエリアを超えてつなげることができる。そうした大きなスケールのものを描けるというのは恵まれていると思いますね」