PROJECT REPORT インタビューで得たクリエイターのアイデアを、リアルな場で実現する「アイデア実現プロジェクト」

六本木未来会議アイデア実現プロジェクト#07「六本木未来大学」第14回「佐渡島庸平さん、ファンづくりのために必要なコミュニティって何ですか?」講義レポート【後編】

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update_2017.9.13/ photo_yuta nishida / text & edit_akiko miyaura

受講者が匿名で質問をアップできるサービス『Sli.do(スライ・ドゥー)』を活用した、新鮮な講義を行ってくれた佐渡島庸平さん。コミュニティをつくる上で、また活性化する上で必要なことは何か。ご自身が手掛けた大ヒットコンテンツ『宇宙兄弟』のファンコミュニティや、コミュニティのプロデュースを学ぶ場「コルクラボ」の事例などをまじえながら、ここだけの話あり、雑談ありの楽しい授業を行ってくれました。2017年8月30日(水)の講義の様子をレポートします。

前編はこちら

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人がネット上で楽しめるのは、ピンポイントの細かい話。

コミュニティが盛り上がり、ファンが増えていくためには何が必要なのか。そう考えたとき、佐渡島さんは"細かい話"の重要性に気づいたと言います。

「みんながネットで話題にして楽しめるのって、大上段に構えた話じゃなく、とにかく細かい話。たとえば、僕が古館伊知郎さんの番組に出演したとき、お会いした瞬間、"ヨハネスブルグの『Daruma』って行ったことあります?"と聞かれたんですよ。僕はそのひと言で、いきなりテンションが上がっちゃって。"どうしてご存知なんですか?""行きたかったんですけど、親が連れて行ってくれなくて"って、ひと盛り上がりしちゃったんです(笑)。『Daruma』というのは、南アフリカにある日本料理店。古館さんは、僕が中学時代を南アフリカで過ごしたことを調べてくださっていたんですよね。それで、20年ほど前にご自身が現地を訪れたときに行った日本料理店を思い出して、話し掛けてくださった。人って、こういうすごく細かい話ができるとうれしいんです。それは、"こんなこと"を話せる相手、タイミングが簡単に見つけられないからなんですよね」

ピンポイントのマニアックな話題を話せる相手、タイミングに出会う可能性があるのが、ネット上。ほとんどの人には当てはまらない、「針の穴を通すような"細かくてドンピシャな話題」に遭遇できるきっかけが、コンテンツにはたくさん用意されているのです。

「マスメディアの仕事をしていたころは、"全員が興味を持つような、全体に網をかけられるようなコンテンツはないかな"と考えるわけです。でも、ネット上のコンテンツのつくり方ってまったく違うんです。"その人が卒倒するくらい深い話ができるコンテンツが、どうしたらできるかな"と考える。そういうコンテンツが増えると、コミュニティが活性化され、人が深く繋がることができると思うんです」

自分と同じ仲間を見つけることで、安心できる居場所ができる。

佐渡島さんは、よりリアルな感覚を呼び起こすため、現実でコアな話ができる相手に出会える確率をコミックの読者でたとえていきます。1,900万部以上の売上を誇る『宇宙兄弟』は、誰もが知るビッグコンテンツ。けれど、1巻あたりの部数で考えると、テレビの視聴率にして1%未満だそう。学校なら、1学年2~3クラスの学校なら、同じ学年に"すごく読んでいる人"がひとりいることになります。

「学校というコミュニティでさえ、同じ趣味を持った人ひとりと、なかなか出会えないのが現状なんです。しかも、現実の世界って"出身県がいっしょ""同じ学校"という、雑なくくりでコミュニティがくくられる。その中で、細かい話ができる仲間と出会えるのは、大きな喜びになるんですよね。僕が大事にしているのもそこで。コミュニティは情報伝達の上でも重要ですが、同時に人の幸福度を変えていくことになると思っているんですよ。ピンポイントで自分と同じ仲間を見つけると、心がリラックスして安心感を覚える。そんな居場所をつくりたくて、コミュニティをビジネスとしてやっていきたいなと思うんです」

【クリエイティブディレクションのルール#6】
コミュ二ティで幸福度を変える

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「どこか怖い」「何かイヤだ」を感じさせないコンテンツに。

講義が後半に差し掛かるころ、「今日、『Sli.do』に書き込んだという人、どれくらいいます?」と会場に問いかける佐渡島さん。受講生の3、4割が手を挙げるのを確認すると、次の話へと入っていきます。

「6割くらいの人が、まだ書き込んでいないということになりますが、その人たちがひとつも質問が浮かんでいないかといったら、そうではないはず。思い浮かんでいることはあるけど"わざわざ、こんな質問してもいいかな""このコメントを見たら、相手がどう思うかな"と考えてしまって、書き込めない人が多くいると思うんです」

ここでキーワードとして出てきたのが、"安心・安全の確保"という言葉。これは、自身が主宰する「コルクラボ」でも、合言葉のように口にしていると言います。

「講義を聞くだけのスクール型なら、差されたり、確認されたりということがないので、ある種、安心・安全が確保されるんです。でも、『Sli.do』に書き込むなど主体的になろうとすると、安心・安全がちょっと脅かされるわけですよね。そういった状況において、参加者の安心・安全をどう確保するか。そこに徹底的にこだわることが、コミュニティの活性化につながるんです」

人は日々、いろんな場面でストレスを感じながら生きているもの。たとえば、会社で仕事を頼まれたものの、わからないところがある、失敗するのが怖いという状況だと「何となくイヤだ」という感覚が生まれます。

「ネット上のサービスもそう。使うこと、書き込むことを躊躇するのは、なんか怖いという思いがあるからですよね。ただ、ネット上だとサッとコンテンツを去ればいいので、現実より安心・安全について敏感ではないかもしれません。ただ、活発にやりとりがされているコンテンツは、そこに対するケアがしっかりできているんです」

【クリエイティブディレクションのルール#7】
「安心・安全の確保」にこだわり、コミュニティを活性化させる

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メディアにとって、時間を決めて守ることは超重要事項。

安心・安全が重要であることは大前提。その上で、佐渡島さんが今考えているのは、その先にある「信用、信頼」だと言います。

「知らない人に信用を築くときって、最初はほぼやれることがないんです。できることと言ったら、時間を守ることなんですよ。そもそもメディアが最初にやるのは、スケジュールをつくること。新聞社なら朝刊なのか夕刊なのか、テレビなら朝のニュースなのか、どの時間帯に放送するドラマなのかと決める。TwitterやYouTube上の有名人と言われる人たちも、朝に上げる、1日何本上げるというようなスケジュールをつくって、守っていますよね。それが信用になると同時に、思考せず思い出してもらえる状況を作れるんです。また、彼らはスケジュール通りできないときは、必ず告知をする。すると、"何で遅れるんだろう"という興味が沸くんですよ」

「何が起こるんだろう」という興味が見たい、読みたいを刺激する。

人の興味を惹くという意味では、"期待を先につくっておく"ことが重要だそう。佐渡島さんいわく、「おもしろさって、いきなり出されても響かない」。あまりに急だと、「あれ? 今、おもしろいこと言ったのかな」と、曖昧になってしまうことが多いと言います。

「おもしろいこと言うよ、と期待を起こすことって大事なんですよ。芸人さんの"振り"みたいなものですね(笑)。Twitterをうまく使えてない人は、重大発表があるときに、情報解禁の時間につぶやいちゃう。そうすると、リツイートが伸びないんです。先に"重大発表まで1週間""あと1日"みたいにすると、みんなが"何か起こるんだろう""こんなことかな"と予想するため、見たい、読みたいという気持ちが生まれますよね。すると、実際に発表したとき、"これか!"とリツイートが広がっていくわけです」

【クリエイティブディレクションのルール#8】
期待をつくり、相手の中に"先に"感情を起こす