PROJECT REPORT インタビューで得たクリエイターのアイデアを、リアルな場で実現する「アイデア実現プロジェクト」

六本木未来会議アイデア実現プロジェクト#07「六本木未来大学」第14回「佐渡島庸平さん、ファンづくりのために必要なコミュニティって何ですか?」講義レポート【前編】

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update_2017.9.13 / photo_yuta nishida / text_akiko miyaura

受講者が匿名で質問をアップできるサービス『Sli.do(スライ・ドゥー)』を活用した、新鮮な講義を行ってくれた佐渡島庸平さん。コミュニティをつくる上で、また活性化する上で必要なことは何か。ご自身が手掛けた大ヒットコンテンツ『宇宙兄弟』のファンコミュニティや、コミュニティのプロデュースを学ぶ場「コルクラボ」の事例などをまじえながら、ここだけの話あり、雑談ありの楽しい授業を行ってくれました。2017年8月30日(水)の講義の様子をレポートします。

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受け身ではなく、自分ごととして講義を受ける意識づけ。

講義冒頭。マイクを持つと、さっそく受講者たちにひとつの課題を提示した佐渡島さん。

「今から5分間、となりの人と雑談をしてみてください。僕から"どんな情報を聞きだそうと思ってここへ来たか"を話して、その会話に出てきた、おもしろそうな話題を『Sli.do』に挙げてほしいんです」

今回の未来大学はいつもと少し違う様子。佐渡島さんは、質問やコメントをリアルタイムで集めて表示、共有できるオンラインサービス『Sli.do』を駆使して話を進めます。予想外の始まりにワクワクした表情を浮かべる人、少し恥ずかしそうに声をかける人、さっそく会話を楽しむ人......。少しずつ会場に、受講者たちの声が広がっていきます。そして、5分が経過すると、佐渡島さんは『Sli.do』に挙がった「受け身の人も巻き込める、コミュニティのファシリテーションの仕方とは?」という質問をピックアップし、話を始めました。

「こういった講義やイベントって、講師の話を聞くだけの学校形式が多いじゃないですか。きっと、2時間程度の講義の間は"へ~"と楽しく聞けると思うんです。でも、受け身で聞いていると1、2週間後には話の内容をほとんど忘れてしまう。または僕の使った単語のうち、いくつかだけが頭に残り、自分流に解釈して違う話として記憶する、みたいなことが起きるんですよ。でも、『Sli.do』なんかを使いながら自分ごととして向き合うと、話の吸収度合いも楽しさも変わる。だから、公演前には5分、10分、アイスブレイクの時間をつくって、全員が1回は発声している状態をつくるようにしているんです」

誰と何を話せばいいのかわからない。会話の迷子が多い現代。

そんな言葉で受講者たちの意識を変えると、コミック編集者であった佐渡島さんが、なぜ「コミュニティ」に注目したのかという話へ。その魅力を語っていきます。

「みなさんも、いくつかのコミュニティに属していると思うんですね。まず学校、それから会社、家族まわりや地域......。昨今はそういったコミュニティの絆が弱まって、仲間同士で情報を得ることが少なくなってきた。それでも、少し前は代わりにテレビや雑誌、マンガといったマスメディアから情報を得て、同じ話題で話すことができていたんです。でも、今は圧倒的に"見るもの"が変わって、みんなが共通の話題を探すことが難しくなっているんですよね」

見るものだけでなく、趣味が多様化しているため、「誰と何の話をすればいいかわからない」のが現代。そんなとき、ある知人の話がヒントになったと言います。

「『mixi』で、プロ野球の日ハムファンコミュニティの主をしていた知人がいて。数年の間にオフ会を何度かやっていたのですが、そこで出会った人たちが何組も結婚したと言うんですよ。なぜかというと、コミュニティって"何を話題にすればいいのか"がわかりやすいから。共通の趣味の話でいきなり盛り上がれるので、人との距離が近づきやすいんです。合コンだと名前や職業、出身や趣味なんかを言い合いながら、時間をかけてお互いにピッタリくるテーマを探すわけですよ。でも、オフ会にはそれがないんです」

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同じ話題で盛り上がれる場の大切さを再認識。

ファンコミュニティの主である知人の話に興味を持ちながらも、当時は半信半疑。けれど、知人の言うことも一理あると思い、佐渡島さんが編集を担当したコミック『宇宙兄弟』のファンを集めたオフ会を自ら開催しました。その名も、「『宇宙兄弟』の焼肉忘年会」。

「作者の小山宙哉さんが来るわけでもなく、ただファンが集まって焼肉を食べるという会。何ひとつ特別なことは用意していないのに、このイベントのチケットが即完したんですよ。さらに驚いたのは、50代の男性と20代の女子大生が同じ話題で盛り上がって、むちゃくちゃ仲よくなる姿を目の当たりにしたこと。しかも、その日出会った人たちで、朝までカラオケに行ったりしていて。その様子を見て、共通の話ができる場って重要だなと思ったんです」

コミュニティのパワーを目の当たりにした佐渡島さんは、そののちFacebook上に秘密のグループをつくり、忘年会に参加した人たちを招待。オンライン上でも、ファンが活発に会話を始めたと言います。

「マンガの単行本って、発売時期が決まっていないので、ファンであっても情報を見逃して、いつの間にか読まなくなることもあるんですよ。でも、仲間同士でコミュニケーションを取れる場があると、自然と情報に気づくんですよね。つまり、彼らのコミュニケーションはマスメディアでいう告知。しかも、出版社の告知より仲間の会話で気づくほうが、情報の伝わり方が早いんです」

【クリエイティブディレクションのルール#1】
仲間同士がコミュニケーションできる場をつくる

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仲間同士の会話がコンテンツを奥深いものにする。

講義の合間にも、疑問に感じたことを受講者たちが『Sli.do』にアップ。佐渡島さんは話しながらも画面をチェックし、リアルタイムで会場の声を取り入れていきます。ここでピックアップしたのは、「あふれた情報から迷わずファンを導くには?」という質問。佐渡島さんが手掛けた漫画のクチコミを投稿するサイト『マンバ』を例に話を進めていきます。

「『マンバ』で最初に大切にしたのは、"会話を読ませる"ということでした。普通の発想といえば、普通の発想ですよね。ただ、マスメディア側の発想だと、しっかり論考した批評家の言葉を載せようと考えたりするのですが、『マンバ』でやったのはユーザーの会話を読ませること。といっても、実際、他人が知らないマンガについて会話していても、わかるはずがないんです(笑)。でも、だからこそ気になって読みたくなる。人が行動するのって、"わかっているとき"とは限らないんですよね。よくわからないけど、楽しそうな会話を見ると加わりたくなっちゃうんです。そう考えると、情報を伝えるのに最適なのは会話。コンテンツとしては一見チープに見えるけれど、たくさんの時間と人をつぎ込んで生み出した会話は、ひとりの人が深く語るより、奥深いコンテンツになるんです」

ここで浮かび上がったのが、コミュニティの会話の雑さをどうおさめるか、という問題。

「複数の人間が、違うタイミングで書き込むので、当然、話があちこち飛ぶんです。かつ、どうすれば会話が連続するのか、コンテンツがおもしろい雰囲気になるのか、コントロールするのも難しい。結局、それだけ雑多な会話を最終的にいい方向を向けるためには、UI・UXをしっかり設計をすることが非常に重要なんですよね。この"コミュニティを編集する"という行為こそが、インターネット時代の"雑誌づくり"に当てはまるんだと思います」

【クリエイティブディレクションのルール#2】
雑多な会話をいい方向に向けるUI・UXの設計をする