PROJECT REPORT インタビューで得たクリエイターのアイデアを、リアルな場で実現する「アイデア実現プロジェクト」

六本木未来会議アイデア実現プロジェクト#07 「六本木未来大学」第10回 「齋藤精一さん、プロジェクトを成功させるディレクションって何ですか?」講義レポート【後編】

update_2017.3.8 / photo_ tsukao / text & edit_yosuke iizuka

六本木未来大学の第10回講師は、ライゾマティクスの代表を務める齋藤精一さん。現在10年目、インタラクティブな広告プロジェクトや先鋭的なメディアアート作品で注目されるクリエイター集団・ライゾマティクスが手がけてきたさまざまなプロジェクトは、どのような考え方でつくられてきたものなのでしょうか? 2017年1月31日(火)に行われた講義の様子をお届けします。

前編はこちら

現代は、かつてないほどの変化が起きている時代。

情報のあり方、業界や業態、人々の考え方、働き方......。現代は、さまざまなことが「大きく変わる時代」だと齋藤さんは言います。たとえば、インテル創業者のひとり、ゴードン・ムーアが唱えた「半導体の集積率は18ヶ月で2倍になる」という「ムーアの法則」は、すでに去年あたりから成り立たなくなりはじめています。ほかにも、2045年にはシンギュラリティ(技術的特異点)が訪れてコンピュータの能力が人間を超えると言われていたり、今生きている人の寿命はおよそ90歳で、いずれ135歳まで寿命が延びるだろうと言われていたり。

「今までとはまったく違う速さでテクノロジーが進化し始めている中、ビジネスのあり方も大きく変わっています。エクスポネンシャル(指数関数的)といわれていて、今まではユーザー数が一次直線的に上がっていっていたのが、ウーバーとかエアビーアンドビーでは、最初は15人だったのが、150人、1,000人、15万人という上がり方をするんです。個人メディアがどんどん普及して、今までのビジネスの法則とか情報流通の法則とかが大きく変わってきている。広告的に見るとターゲットもどんどん変わっていて、20代の追体験がまったくわからないみたいなことも言われています。人も企業も業界も、大きく変化しているんです」

そんな現代において、クリエイティブディレクションに限らず、すべての人が「非分野主義」的であることが重要、と齋藤さん。

「非分野主義は、MITメディアラボ所長の伊藤穰一さんが掲げている『Anti-disciplinary』という言葉を、僕が勝手に訳したもの。これまで話してきた『下流から上流へ』という話と非常に近いんです。たとえば、今まではマーケティングを見るのはマーケティングをやってきた人だけだった。でも、これだけ情報があるなら、プロダクトデザイナーがマーケティングに対して何か一石を投じることとかがあってもいいですよね。ライゾマティクスがアーキテクチャーを立ち上げたように、まったく違う業界からの視点で切り込むということはアリだと思うんです。僕の場合は建築に再び戻ったわけですが、自分の軸足はありつつも、できるだけいろんな分野と融合させるということですね」

「非分野主義」のわかりやすい例が、例えば、MITメディアラボなどで進められている、生きた細胞を利用した「バイオプリンター」。今までの日本の大学のシステムでこの研究をしようと思うと、たとえば生物学の学科に入って4年、大学院で2年学んだあと、電子工学で同じように6年間学んで、足掛け12年間。ところが、MITメディアラボでは、その両方を同時に学ぶことができます。

「こういう考え方が、これからすごく増えてくるだろうなと思っているんです。ひとつのプロフェッショナルであることは大事ですが、クリエイティブディレクションをはじめどんなことにおいても、分野をできるだけ多く横断するということが重要になると僕は思っています。そのためにも、他業界でも通じるプロトコルを持とうということ。たとえば僕の場合は、エンターテイメントの分野で使う言葉と、建築の分野の人たちと話すときの言葉はまったく違いますが、自分で共通言語を持って話していこうということをやっている。これは、ディレクションをする人間として持たなければいけない考え方だと思っています」

【クリエイティブディレクションのルール#7】
できるだけ多くの分野を横断し、共通プロトコルを持つ

考えるよりも、まずつくってみる。

「あとは『考えるよりつくる』ということも重要です。よく文字だらけの資料がありますよね。それだけ思考を重ねているということは、すでにモノがつくれる段階までいっているということだと思うんです。そうであれば、PDCAと言われているように、一度つくってみて失敗することも含めて進めていくことが大事だなと思うんです。つまり、想定失敗をするということ。これを認めてくれるクライアントはまだまだ少ないのですが、僕らはあえて一度失敗してPDCAを回していくということをやっています」

【クリエイティブディレクションのルール#8】
あえて失敗していいものを生み出す

スイミーのような「離散性」のあるチームに。

「僕はこれから、『量子論の時代』に入ると思っています。クアンタム・ストラクチャーとかよく言いますね。デジタルの本質は『離散性』にありますが、ウーバーにしろ、エアビーアンドビーにしろ、今まではひとつの固まりととらえられていたものを、細分化して考えることで成功している。レオ・レオニの『スイミー』という話がありますよね。今までの企業が大きな魚だったとすると、これからの企業やものづくりって、小さな魚の集積で大きい魚をつくるということになると思っています。大きな魚は、潮の流れが変わったら大きく旋回しますよね。でも、小さい魚は分散してもう一度戻ることができるんです」

一人ひとりが非分野主義的に振る舞い、異なるバックグラウンドから意見を出して、ひとつのものをつくる。そういうチームのあり方が、これからは必要になってくると齋藤さんは教えてくれました。

【クリエイティブディレクションのルール#9】
"量子論的"なチームをつくる