PROJECT REPORT インタビューで得たクリエイターのアイデアを、リアルな場で実現する「アイデア実現プロジェクト」

六本木未来会議 アイデア実現プロジェクト#11「街中こいのぼり by 須藤玲子」

update_2016.5.18 / photo_chikako murabayashi / text_yosuke iizuka

暮らしに取り入れる、日本ならではのテキスタイル。

2016年4月22日(金)から5月8日(日)まで、東京ミッドタウンのガレリアに、日本の布でデザインされたこいのぼりが展示されました。これはテキスタイルデザイナーの、須藤玲子さんによる作品で、クリエイターインタビューで自身が語った「六本木でも、5月になったら街のみんなが参加して、こいのぼりをあげましょう」というアイデアが元になったもの。さらに「こどもの日」を目前にした5月3日(火)には、オリジナルこいのぼりをつくるワークショップも開催。その様子を、須藤さんのコメントとともにお届けします。

photo by NUNO

こいのぼりは、日本人と布の関係を象徴するもの。

今回のインスタレーションは、なんと日本では初。異なるテキスタイルでつくられた10匹が徐々に高く昇っていくようにレイアウトされているのは、こいのぼりの由来である「鯉が滝を昇って竜になり、天に昇っていく」という故事をイメージしたものだそう。

「『JAPAN VALUE(ジャパンバリュー)』をコンセプトに掲げている東京ミッドタウンが、今まで『こいのぼり』をテーマにしていなかったのが不思議なくらい。今回は、テキスタイルの色をつなげていくことで、鯉が滝を昇るうちにだんだん白くなって、最後は光になるようなイメージでつくりました。そして、実は1匹だけ、本当に光る子がいるのです。建物が閉まって誰もいなくなった夜中にぼんやりと光るようになっていて。もちろん誰も見ることはできませんけど、その様子を想像するだけで、なんだかいいでしょう?」

2008年にはアメリカのジョン・F・ケネディ舞台芸術センターで、2014年にはパリのギメ東洋美術館で、こいのぼりのインスタレーションを行ってきた須藤さん(写真はパリでの展示の様子)。そもそも、須藤さんがこいのぼりに着目したのは、海外の人に日本人とテキスタイルの関わりを伝えようとしたことがきっかけでした。

「西洋は石でできた空間の冷たさを布で遮断するから、暮らしの中にいっぱい布があります。でも、日本の場合、家の中にはテキスタイルはあまりなくて、役割はもっと象徴的。着物で地位や役割を表したり、紅白幕や白黒2色の鯨幕で場所を区切って式典を行ったりね。こいのぼりも同じで、武士が子どもの成長を願う儀礼的なものだったでしょう? そもそも布で魚をつくること自体、ちょっと面白いじゃない。だから外国人からすると、こいのぼりって、二度びっくりなわけ(笑)」

こいのぼりが古くからの日本人とテキスタイルの関係を象徴するものだからこそ生まれたこの企画。今回の展示は東京ミッドタウンだけで行われましたが、今後は六本木の街全体に広がっていったら面白い、と須藤さん。

「かつて日本の住宅地では、この時期になるといろんなところでこいのぼりが泳いでいたけれど、今は本当に少なくなりましたよね。大きな公園やイベントなど、特別な場所に行かないと、目にすることがなくなりました。生活に時間の余裕があったからかな、朝になると上げて、夕方になると下ろして。それで、あそこの家に男の子が生まれたのだってわかったりしてね。以前は、テキスタイルと生活がもっと近かったのだと思うのです」

いろんな布が街中ではためく光景を、六本木の街に。

「家でも毎年、玄関に2メートルくらいの大きさのこいのぼりを飾っているんです。みんな、ドアを開けたらびっくりしますよ。会社で小さな卓上こいのぼりもつくっていて、これもまたかわいい(笑)。思い出の詰まった服でこいのぼりをつくってもいいし、展示もアーティストを毎年もっと増やして、はみ出すくらいたくさんになったらかっこいい。こいのぼりじゃなくても、たとえば旗やのれんを街中で一斉に掲げたりしても面白いですよね。今日みたいに風がいっぱい吹いている日は、こいのぼりが本当に泳いでいるみたい。こういうの、すごくいいよね」

展示のほか、今回はこいのぼりづくりのワークショップも開催。展示作品とはまた少し異なったこいのぼりの形は、須藤さんがかつて甥っ子にプレゼントした、手づくりのこいのぼり。

「弟に息子が生まれたときにつくったから、80年代ですね。実家が古い家だから、伝統的なこいのぼりも泳がせていたのだけれど、そこに私がつくった、へんてこりんなこいのぼりもくっつけてくれたの。背びれや胸びれだけあって、目もウロコもないアブストラクトなデザイン。それがかわいいって近所で評判になって(笑)」

以来、さらにこれを抽象化させてインスタレーションとなり、ワークショップの型紙になり......。「私は別にこいのぼりの専門家ではないからね(笑)」とは言うものの、須藤さんのこいのぼりには、長い時間の積み重ねがありました。

INTERVIEW