72 西畠清順(プラントハンター)前編

西畠清順(プラントハンター)

「ひとの心に植物を植える」をテーマに、世界中で植物にまつわるプロジェクトを手がける、そら植物園 代表で、通称"プラントハンター"の西畠清順さん。「六本木アートナイト2016」では、名和晃平さんとともに、六本木の街に文化の夜明けを象徴する「森」を出現させます。清順さん曰く「未来を考えるのは植物を考えることと同じ」。その理由とは?

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update_2016.10.5 / photo_ryoma suzuki / text_kentaro inoue

すべては、植物からはじまった。

 このインタビューのテーマは「六本木×未来×植物」と聞いてますが、僕に言わせれば、未来イコール植物。大げさにいえば、未来を考えるのは植物について考えるのと同じだと思っています。

 歴史を見れば未来がわかるって、よく言いますけど、4億5000万年前に植物が地球に上陸したとき、この地球には文化もなければ、宗教もアートも何もありませんでした。そういう意味では、植物はすべての素。最先端の技術を追求すればするほど、本当に大切なものは何なのか、その大本に立ち返らないといけない。感度のいい企業、時代をつくるようなクリエイターやアーティストは、みんなそれに気づきはじめている、今はそんなタイミングでしょう。

 僕は関西人なのであんまり詳しくないんですけど、六本木は、時代の最先端が具現化された場所だと感じています。この街が、東京で、日本で、あるいは世界で指折りの場所を目指すとしたら、当然、緑や植物についても先進的であるべきですよね。

「何本植えました」ではなく「あるよね」と気づかせる。

 六本木で街頭インタビューをして、「この街って緑多いですか?」って聞いたら、「多い」って答える人はけっこう多いんじゃないかと思うんです。でも、「東京ミッドタウンにどんな木植わってました?」「あそこの通りの街路樹なんでしたっけ?」って聞いたら、「あれ、何の木やったかな......」ってなるはず。

 みんな、ここに有名建築家の手がけた建物があるとか、おいしいパン屋さんがあそこにある、という情報には詳しいのに、自分が住んでいる街の街路樹の種類すらわからない。企業のCSR活動なんかを見ていても、「どこどこに木を何本植えました!」っていう、本数重視の場合がほとんど。

 でも、もっと質重視、メッセージ重視で、人の心を打つやり方は絶対あるはず。たとえば「今の3倍六本木に木を植えよう」じゃなくて「ここにちゃんと木があるよね」って気づかせる考え方が大切。まずはそれを六本木から発信できたら、世の中変わるんじゃないかな、って。

「たかが」を「されど」にするのはプレゼンしだい。

代々木VILLAGE
コンセプトプロデュースを小林武史氏と大沢伸一氏、インテリアデザインを片山正通氏が手がけた商業施設。敷地の大部分を占める庭には、樹齢500年のオリーブの大木や100年に一度咲く花、世界一痛いサボテンなど、世界中から集められた植物が植えられている。

 "気づかせる"ひとつのヒントは、手前味噌ですけど「代々木VILLAGE」がいい例。そこでは「共存」をテーマに、世界各国を代表する植物が集まって仲良く暮らす世界をつくっています。

 ガーデナーやランドスケープの人たちは、どうしても植物をデザイン、コーディネートしようとしますが、本当に大切なのはコンセプト。だから僕はその枠を1回取り払って、普通は絶対しないような組み合わせを選びました。中国の木の横にペルーの木があって、その横にアルゼンチンの木、オーストラリアの木......。そうすると「これ、一緒に暮らしてて大丈夫なのかな?」って心配になりますよね。これも"気づかせる"ひとつの方法。

 木のプロフィールを書いたプレートにも、難しい科名・属名・種名ではなく、僕のつぶやきみたいなコピーを載せています。それがすごく面白いって言われて、実際いくつかの市町村から街路樹のプレートをつくってほしいという依頼もありました。そう「たかがケヤキ」を、いかに「されどケヤキ」にするかは、プレゼンテーション次第なんです。