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舘鼻則孝(アーティスト)

レディー・ガガのアイコンともいえる「ヒールレスシューズ」をデザインしたのは、現在21_21 DESIGN SIGHTで行われている企画展「イメージメーカー展」にも参加している舘鼻則孝さん。今回のメイン写真の撮影は、展示されている自身の作品の前で行われました。舘鼻さんは、なぜモノづくりをはじめ、アーティストとなったのか、そして将来の夢は......。見出しからもわかるとおり、驚きの発言、目白押しです。

update_2014.9.3 / photo_hiroshi kiyonaga / text_kentaro inoue

モノづくりをはじめた理由は、コミュニケーションが苦手だったから。

イメージメーカー展

イメージメーカー展
世界中のクリエーターに影響を与えてきたジャン=ポール・グードをはじめ、「イメージメーカー」のスピリットを持つ、三宅純、ロバート・ウィルソン、デヴィッド・リンチ、舘鼻則孝、フォトグラファーハルの作品を紹介する企画展。2014年10月5日(日)まで、21_21 DESIGN SIGHTで開催されている。

 僕がアーティストになった理由を、すごく簡潔にいうと、自分探しをしているということですね。自己表現することによって、自分を客観的に見ることができるじゃないですか。自分が何者であるかというのが最大のテーマなんですけど、それを常に探求しているというか。では、なんでそんなことをするかというと、自分に自信がないから。そもそも僕は、コミュニケーションが苦手だからモノづくりをするようになったんです。

 もちろん今はこういう仕事もあるので、話すのだけは上手になったけど、訓練したからできるようになっただけ。子どもの頃から人と会話するのが苦手で、代わりに選んだのがモノづくりをすることだったんです。たとえば、かわいい女の子に、手づくりのブレスレットをプレゼントするとか、お母さんに「一緒に遊んで!」って言いたいけど勇気がないから、ずっと折り紙を折って気を引いてみるとか(笑)。

 どちらも会話はしていないですけど、コミュニケーションは成り立っています。もし僕が靴をつくっていなかったら、アーティストになることもなかったし、今日の公開インタビューでみなさんとお会いすることもなかったでしょう。ということは、やっぱり作品がコミュニケーションツールになっているということですよね。

世界で認めてもらうために、日本のファッションを学ぶ。

 最近では彫刻なんかも制作するようになりましたが、自分が最初に選んだ仕事はファッションデザイナーでした。なぜ、それを選んだかというと、人と関われる仕事だと思ったから。靴とか洋服って、誰かが履いたり着たりするものじゃないですか? もちろん絵画とか彫刻も誰かの持ち物になる可能性はあるけれど、それ以上に人に帰属するし、人を飾るツール。誰かに喜んでもらえたり、人のためになるモノづくりは何かと考えたときに、一番身近だったんです。

 大学のときは染織の勉強をしていて、着物を染めたり下駄をつくったりしていました。ファッションデザイナーになるって決めたとき、自分が目指すのは世界だなって思ったんです。理由は簡単で、僕らが着ている洋服って、そもそも日本のものではないから。フランス料理の料理人になりたい人がパリに行くのと同じように、せっかくなら本場で勝負したかっただけ。

 では、外に出るにあたって何が武器になるか。自分にしかできないことを突き詰めて考えて、行き着いたのが「日本らしさ」でした。日本人だから、もちろんフランス人にはなれないし、海外で海外のファッションを学んでも勝てない。世界で認めてもらうには、日本のファッションを勉強するのが、結果的に近道じゃないかって。最近、海外で仕事をする機会も増えてきましたが、より日本人らしくというのを心がけています。見た目ひとつをでもそう、昔は髪を染めたりしていましたが、それもしなくなりましたね。

「とにかくすぐにつくって」レディー・ガガからのオファー。

 大学を卒業したばかりの2010年3月、最初にアプローチしたのも海外でした。東京藝大の卒業制作でつくったドレスと靴の写真を自分で撮って、メールに添付して世界中に送ったんです。もちろん人脈なんてないですから、ネットサーフィンしていろんなスタイリストや出版社のホームページを探しては、コンタクトのところからメールアドレスを手に入れて。

ヒールレスシューズ

ヒールレスシューズ
レディ・ガガのアイコンとしても知られ、NYのメトロポリタン美術館にも収蔵。革のほかクリスタルやスタッズをあしらうなど、さまざまな素材のものが。前出の「イメージメーカー展」には、実際に履ける試着コーナーも。

 だいたい100通くらい送ったと思うんですが、返事をくれたのは3人だけ。有名でもないんですから、当たり前ですよね。ちなみに、ひとりはロンドン在住の有名なファッションブロガーのスージー・ロウ。もうひとりが、日本に住んでいるアメリカ人ジャーナリスト。最後がレディー・ガガの専属スタイリストをしている、ニコラ・フォルミケッティだったんです。

「1週間後には来日してミュージックステーションに出るから、とにかくすぐにほしい」と言われてつくったのが「ヒールレスシューズ」です。何がよかったんですかね? 僕はいつも「古典と現代」をテーマにしていて、日本のアイデンティティというか文化的に価値のある部分と、現代の要素をコラボレーションさせることで、未来の道すじを表現したいと思っています。ガガさんもいわば未来をつくる人ですから、そういう部分に共感してもらえたのかもしれません。