43 八谷和彦(メディアアーティスト)×小松宏誠(アーティスト)

八谷和彦(メディアアーティスト)×小松宏誠(アーティスト)

先日行われた「六本木アートナイト2014」で、「風の谷のナウシカ」のメーヴェをモチーフにした「オープンスカイ:M-02J」(写真)を展示した八谷和彦さんと、水しぶきにより池の底の模様に動きが生まれるインスタレーション「鳥のように_ディスプレイ_毛利庭園」を手がけた小松宏誠さん。このおふたり、実はアートコンペ「Tokyo Midtown Award 2008」では、審査員と受賞者という関係でした。インタビューは、まずはそのときの思い出話から。

update_2014.6.4 / photo_ryoma suzuki / text_kentaro inoue

ただ悔しかったTokyo Midtown Award。

オープンスカイ:M-02J

オープンスカイ:M-02J
2003年からスタートした「風の谷のナウシカ」に登場する航空機「メーヴェ」を参考に「パーソナルジェットグライダー」をつくるプロジェクト。2013年には、ジェットエンジンを搭載した機体の飛行にも成功した。

鳥のように_ディスプレイ_毛利庭園

鳥のように_ディスプレイ_毛利庭園
六本木ヒルズ内、毛利庭園の池の底に光の模様を沈め、水しぶきによって動きを生み出すインスタレーション。鳥の求愛行動(ディスプレイ)のように、池そのものが存在をアピールしているような風景をつくり出した。

Tokyo Midtown Award

Tokyo Midtown Award
2008年に設立された、東京ミッドタウンが主催するコンペティション。アートコンペとデザインコンペの2部門で、「JAPAN VALUE」を基軸テーマに作品を選定。小松氏は孔雀の羽を針にした360個の時計からなる「求愛しつづける時計」(写真)で、2008年に佳作を受賞。

八谷小松さんが受賞したのは、Tokyo Midtown Award アートコンペの初回、この賞にはどういう作品がふさわしいのか、その方向性もまだ定まっていない段階。いろいろ迷いもあったけれど、審査員全員、公共空間の中に展示されるという条件の中で、なるべくチャレンジングな作品を選ぼうという意識だけは共通していました。

小松一番楽しい時代ですね。もともと僕は、建築からこの世界に入ったので、発表の機会をつくろうと、コンテスト荒らしみたいな感じでコンペに応募していたんです。新しくできた賞で、(当時は)若手の縛りもある、これはやるでしょう! みたいな。しかも六本木で展示をすれば、いろんな人が見てくれるかもしれない。当時はまだ、ギラギラしてたので(笑)。

八谷この年、グランプリは該当作品なしだったけど、結果発表を受けたとき、「グランプリ出してよー」、みたいな気持ちってありました?

小松岡本太郎記念現代芸術大賞(現・岡本太郎現代芸術賞)とかも、ずっと出ていなかったので、そういうのはなかったです。みんな、設定した枠組みを超えるものを見たがっていたんだと思うし。それよりも、僕の作品は佳作だったので、やったーという感覚はまったくなくて、ただ悔しかったですね。

八谷今だからいうと、僕、小松さんのもっといい作品を知っていたので......。本当はそういう見方はよくないかもしれないけど、よい過去作を知っていると「君はまだまだやれるはず」って思ってしまう(笑)。

小松たしかに「求愛しつづける時計」は、自分の中でもメインの軸になる作品ではなくて、ちょっと違う方向も伸ばしてみようと思ってつくったものでした。

八谷コンペの最初の年って、審査する側もされる側も手探り。Tokyo Midtown Awardはそれからも、安定してきたかなと思っていたら、展示場所やテーマが変わっていっている。毎回同じだと、マンネリ化したり、こういうタイプの作品が受賞しやすいっていうパターンが決まってしまうので、それはいいと思いますね。

六本木は「ミニ東京」、ミッドタウンは優等生。

八谷ちなみに僕の中では、東京ミッドタウンは優等生のイメージで、たとえるなら"六本木小学校の生徒会長"。昼のこの街は、我々が代表しますみたいな(笑)。六本木は、いろんな面があって面白い街だと思いますね。

 歌舞伎町っぽいところもあるし、上野っぽいところもある、ミニ東京というか。たとえば、北側なんて上野っぽいですよね。サントリー美術館ではクラシックなアートも見られるし、落ち着いたイメージの国立新美術館もあるし。

小松若手のアーティストにとっては発表の場も多いし、森美術館とか本当に目指したいと思える場所もある。しかも、Tokyo Midtown Awardのように公共の場が解放されていて、チャンスが転がっている匂いもするし、アートナイトではゲリラ的なことをやる人もいる。それが受け入れられているかどうかは知らないですけど(笑)。

八谷どういうところって聞かれても、一言で言えない。安い店から高い店まで全部あるし、外国から来た人にとっては、夜遅くまで開いている店があるというだけでも価値がある。もちろん渋谷とか新宿でも夜遊びはできますけど、もうちょっと安全っていうのも、六本木のいいところかな。

小松ものすごくデザインされたおしゃれなところがあったり、反対にカオスなところがあったり、いろんな方向性があって偏っていない。僕、なんにしてもメインストリーム一本っていうのがあんまり好きじゃないので、振り幅があるのはいいと思いますね。

一夜限りのアートナイト、その難しさとは?

六本木夜楽会
六本木アートナイト2013から開催されている、六本木にあるさまざまな飲食店を舞台にクリエイター同士が語り合うトークイベント。今年は、八谷氏のほか、箭内道彦氏、真鍋大度氏、森本千絵氏など20名ほどが参加した。

八谷六本木アートナイトについては、本音をいうと「え、一晩だけなの?」みたいな気持ちがあります(笑)。僕、自分の展示が2ヶ所にあって、さらに六本木夜楽会というイベントにも参加していたので、イベントを楽しんだり、他の人の展示を見るヒマがまったくない。小松さんの作品も、申し訳ないんですけど、見にいけていないんですよ。出てる側からすると、せめてもう1日、プレビューの日があるといいなと思いますね。

小松同じくプレイヤー目線でいうと、屋外で展示をするときは、どこを狙えばいいのかが難しい。一晩限りだから、当日の天気にもめちゃめちゃ左右されるし、ターゲットは昼なのか夜なのか、雨でもOKなのか、とか。

八谷今回、僕が「オープンスカイ:M-02J」をミッドタウンの1階に置いたのもそう。あそこは、三方がビルに囲まれていて風が吹き込まないんです。実際、去年のアートナイトでも風で作品が壊れるのを見ていたし、秒速10メートルくらいの風が吹いたら普通に飛んでしまうので。

小松凧みたいに上げることもできるんですか? 風の谷みたいに飛ばしておいてほしいけど。

八谷海みたいに一方向からずっと風が吹くなら、ありえますけどね。

小松おお、それは見たい!

八谷もうひとつ見る側も含めた提案としては、歩行者天国。誰の言葉か忘れましたけど、「人は買い物をするときには必ず歩いている。車に乗ったまま買い物するやつはいない」みたいなのがあって。日曜日の銀座を歩いていると、すばらしいなと思うんです。昔は原宿にも歩行者天国があったし、下北なんかも事実上、車はほとんど入れなくなっている。道路を封鎖すると、街ににぎわいが生まれるんです。

小松たしかに。道を歩いていると、車だけテンションが違うので、覚めてしまうんですよね。

アルス・エレクトロニカ
毎年、オーストリアのリンツで開催されているメディアアートの祭典。リンツのさまざまな場所で展覧会やパフォーマンス、シンポジウム、コンペティションなどが行われ、世界中からクリエイターや観客が集まる。

八谷そうそう。たとえば、オーストリアのアルス・エレクトロニカなんかだと、オープニングの日には街のメインストリートを全部通行止めにしていて、そこにみんなが集まって、花火が上がったり、すごくお祭り感がある。たとえば夜12時から朝6時までだけでもいいから、来年のアートナイトは道路を歩行者天国にしましょうよ。