33 箭内道彦(クリエイティブディレクター)

箭内道彦(クリエイティブディレクター)

「六本木の街から課題やテーマを抽出して、それを解決するための具体的なアイデアやアクションを提案してほしい」という編集部の要望に対して、クリエイティブディレクターの箭内道彦さんが出してくれたテーマは、なんと「世界平和」。ということは、六本木は平和ではないのでしょうか? そんな疑問に答える形で、インタビューはまず、箭内さんがもつ六本木という街についてのイメージからはじまりました。

update_2013.8.21 / photo_ryumon kagioka / text_kentaro inoue

なぜ六本木は、怖い「気がする」のか。

 六本木って怖い「気がする」街ですよね。それは、たぶん、知らない国の言葉が飛び交っていたり、きらびやかな装いの人がたくさんいたり、様々な国籍の人が目の前を歩いていたりするからだろうな、と思ったんです。怖いといっても、危険という意味ではなくて、僕がなんとなく気後れしてしまうということ。ふだん僕は原宿で働いているんですが、原宿はそんなに怖いイメージはないんですよ。

 なんでだろうって考えたら、原宿は、みんながかっこよくなりたい、おしゃれをしたい、かわいくなりたいっていう「志」をもって集まってくる場所だからなんですね。言ってみれば、まっすぐで清らかというか。遠くから来ている人も多くて、早く帰らないと電車がなくなっちゃうから、夜8時以降なんて街はガラガラですし。それに比べて、渋谷とか六本木って、素敵な女性と知り合って......という希望とか、一旗上げるまでは故郷には帰れないという気合いとか、そういう念が渦巻く空気感があるでしょう。ちなみにこれ全部、僕の個人的なイメージなので、怒らないでくださいね。

 今の若い人は別だと思うけれど、僕らの世代には絶対、外国人コンプレックスもありますよね。それは、外国人より顔がおっきいってことだったり、背が低いってことだったり、足が短いってことだったり。あとは単純に、英語がしゃべれないとか、お酒が強くないとか。そのコンプレックスで、僕らは勝手に自滅してきたんじゃないかって思うんです。怖さの原因は結局、相手が何者かがわからないからでしょう。どこの国のどういう人なのか、何歳なのかもわからないから、自分より屈強に見えたり、自分より不良に見えたりする。僕だけが思ってるのかなあ(笑)。

集まっている人の多くは「おのぼりさん」?

 六本木って世界の最先端、東京のど真ん中みたいに思いがちですけど、実際にそこにいる人の多くは、たぶん全国のいろんな土地から集まってきた人たちなんですよ。僕を含めて、東京の人口の半分は地方出身者だっていうじゃないですか。外国人だってそうで、みんながみんなニューヨークから来ているはずがない(笑)。オレゴンとかオクラホマとか、大都市から離れた素朴な土地から来た「おのぼりさん外国人」だってたくさんいると思うんです。

 しかも、そういう人たちが、原宿みたいに地方色を出してなくて、おのぼりさんであることの隠し方を知っている。あとは一方で田舎を忘れたい、ふるさとを捨てたいって人が集まっているような気もします。たとえば地方にいたときは冴えないOLだった。だけど六本木に来てミニスカートをはいてたら、みんなからいいねいいねって言われる。そんな姿、昔の友だちには見られたくなる......みたいな。それはそれで、とても素敵なことだと思います。人が生まれ変わることのできる場所として。

アマンド

アマンド
戦後すぐに創業し、港区を中心に洋菓子販売と喫茶店を手がける。六本木店は、バブル時代には、待ち合わせのメッカとしても有名に。

 僕は、ときどきテレビに出たりして、福島の出身だって知っている人もいるから、道を歩いていたり仕事をしていても、「僕も福島なんです」「俺も安積高校(注:箭内さんの母校)なんです」「第何期なんです」なんて、うれしそうに話しかけてもらうことがたまにあります。今まではきっと、そのことを隠してたりしてたくせにね(笑)。そんなこともあって、アマンド前の交差点を歩いている人たちが、単純にどこから来たのかを知りたいって思ったんです。