26 AXIS×takram×IDEO

AXIS×takram×IDEO

デザインを目的でなく手段として捉える取り組みとしてAXIS、IDEO、takramの3社主催で始まったクリエイティブセッション「コレクティブ・ダイアログ」。副題は「社会の課題にデザインの力を」。第1回目は六本木の「AXISギャラリー」を会場にワークショップが行われた。今回集まった3名は、この新しい試みの中心人物たち。未来へのアイディアへ辿りつくべく、まずは「コレクティブ・ダイアログ」とは何か、から聞きました。

update_2013.4.3 / photo_taro hirano / text_tami okano / edit_rhino

ワークショップでもピクニックでも。

コレクティブダイアローグ

コレクティブダイアローグ
学生から社会人まで幅広い世代・専門性を持つ人が集い、集団的対話をもって今の日本社会が抱える課題の解決に向けたアイデアや可能性を探るイベント。

渡邉康太郎(takram)「コレクティブ・ダイアログ」は、そのタイトルが示す通りコレクティブネス(集合性)がテーマで、多様な人が集まり、全員でさまざまな課題の解決に向けたアイディアを提案していくプラットフォームです。1回目はワークショップ形式で36人が集まったのですが、事前に「あなたが属しているコミュニティは何ですか?」という質問を投げかけていて、そのコミュニティを象徴するオブジェをひとつ、持ってきてもらったんです。

 建築家は定規を、市議会議員は議員バッチを持ってきたり、タワーマンションに住んでいる女性は、マンションの住民全員に配られるステッカーを持ってきたり。並べてみるといろんな単位のコミュニティがあった。そこから、あるひとつのコミュニティの課題に着目し、課題をいかに解決できるかを複眼的な視点で捉えてみる、ということを行ったんですね。

 デザインのためのイベントではなく、デザインをツールとして使うことに興味がある人たちのためのイベントです。だから、デザイン関係の仕事を持たない人たちにもたくさん集まってもらいましたし、「社会課題を解く」となったときに、広い視野で議論できる方として、ゲストには参議院議員の鈴木寛さんをお呼びしました。

 鈴木さんが普段から持っている問題意識のひとつに、世の中のあらゆるものは近代を卒業できていない、そこから卒業していこう、という「卒近代」があります。開催前に、3社のチームと鈴木さんとで企画会議をしていた際、「最初からトピックがわかっていて、ゲストに基調講演してもらうようなワンウェイのイベントの在り方は、近代の象徴である」と言われてしまい、結局話し合う課題をイベント前には設定しないことに決めました。当日まず集まって、みんなの問題意識を探ることからはじめる。それが第1回目のポイントでもありました。

田仲薫(IDEO)そのやり方も絶対と決めているわけではなく、次回はまた変えるかもしれないし、ゲストを秘密にしておくという方法もある。例えば次回は「六本木」というテーマだけ決めておいて、参加者は「六本木がテーマならデザイン関係者がゲストかなぁ」と思うかもしれないけれど、そこに農家の人が来たら、いい意味で裏切りがあって面白い。自分があまり想定していない、マインド外の人とその場を共にするほうが、話しがしやすかったり聞きやすかったりすることもあると思うんです。

渡邉大事なのは、社会課題を解くための手段としてデザインを使っていきたい、ということで、イベントの形式はどうあってもいい。みんなで映画鑑賞してもいいし、TEDのようなプレゼン大会をしてもいいし、晴れた日には六本木でピクニックをしてもいいかもしれません。

気づきがあると「もやもや感」が生まれる。

石橋勝利(AXIS)1回目を経て思ったのは、あるひとつの問題意識に対して、良い悪いを語っても意味がないな、ということ。六本木を語る場合でもそうで、「夜の街」のあの雰囲気が良くないと言う人がいるかもしれないけれど、夜の世界もあっての六本木なので、それは否定できないし、否定する気もないんです。みんなが否定すればするほど、「本当にそんなに駄目なことなのか」と言いたくなったり(笑)。

田仲コミュニティを意識するのって、自分と違う価値観や問題意識を持った方と出会ったときだと思うんですね。そこで初めて自分はこういう人間なんだ、とわかる。ふだんの生活の中だけではそれを身をもって感じることはできなくて、その実感を補うために本を読んだり、ニュースを見て想像してみたりするけど、結局、会うのが早い。夜の仕事で悩んでいる女性をどう助けるか、みたいな問題意識を持った人間に会うと、そういう課題もあるんだと気づく。その気づきがあるときって、何となく「もやもや」しているんです。

石橋そうですね。「もやもや」するほうが気持ちいい。何か課題やひっかかりがあって、それについて頭の片隅でずーっと何となく気になっている感じでしょうか。いつか何か答えのようなものが閃くかもしれませんし。

田仲「もやもや」の状況は説明が難しいのですが、自分が今まで思っていたことが頭の中で壊されていくとき、何かを言いたいけれど言葉にならないようなとき。そんな状態を解消するためには、時にはコトバではなく、手を動かしたり、プロトタイプを作ったりすることで「もやもや」と向き合い、解決してほしい。

 社会課題にデザインが入るという意味は、気づきを原動力にして、街に返すのか、人に返すのか、何かを変えていくというところまでいくこと。議論ばかりではなく、手を動かし、アクションを始められる世の中が面白いはずなんです。

渡邉そうですね。僕が思うのは、「もやもや感」というのは、つまり混沌のこと。混沌を急いで整理せず、そのまま内に保持しておくことに、実は大きな価値があるのではないでしょうか。それって多様な人とものが集まる六本木という街も、実は全く同じだと思うんですね。答えを予め思い込みで決めてしまうのではなく、多様性や混沌を保持したまま、その中で何ができるかを再構成する。それはデザイン思考の成せる技でもあると思います。