25 幅 允孝 (ブック・ディレクター)×江口宏志 (ブックショップオーナー)

幅 允孝 (ブック・ディレクター)×江口宏志 (ブックショップオーナー)

〈東京ミッドタウン〉の芝生広場で本を読む、ブック・ディレクター幅允孝さんと、ブックショップ「ユトレヒト」オーナー、江口宏志さん。幅さんは本の編集・執筆も行い、江口さんはアートブックフェアのディレクションも行うなど様々なアプローチで本と関わるふたりの提案は、やはり本が重要なツールになりそうです。旧知の仲で、毎週ラジオ番組の収録のために六本木で会うというふたりの会話はテンポよく、対談では江口さんが司会進行役も務めてくれました。

update_2013.4.3 / photo_taro hirano / text_tami okano / edit_rhino

「パークライブラリー」と「ももも展」。

パークライブラリー

パークライブラリー
芝生の上で気持ちよく読書を楽しむ屋外イベント。幅さんが設定したキーワードに基づいて選出した本3冊と、レジャーシートが入ったバスケットを無料で貸し出します。
2013年のパークライブラリーはコチラを参照。

d-labo

d-labo
夢を「集め」「魅せ」「育む」をテーマに、様々な最新技術を体験できたり、幅さんがディレクションした本を自由に読むことができるスペース。定期的にセミナーを開催しているのでコチラでチェックを。

ももも展

ももも展
若者たちにとって一番身近な、学校や家、それらを取り囲む環境のなかにひそむ「これもデザインといえるモノ・コト」を個性豊かな10組が紹介します。 日常への新しい眼差しや興味、発見を生むきっかけになるはずです。 (東京ミッドタウン・デザインハブにて4月12日(金)~5月12日(日)まで開催。詳細はコチラから)

江口宏志六本木との関わり、幅さんはたくさんあるでしょ?

幅 允孝六本木ピープルと言えば、僕ですよ(笑)。もともと、青山ブックセンターの六本木店に勤めていたぐらいですから。「TSUTAYA TOKYO ROPPONGI」もオープンから5年間ディレクションをさせてもらいましたし、「六本木ヒルズけやき坂スタジオ」から放送しているJ-WAVEのラジオ番組で、江口さんと日替わりで本を紹介している「PAGE BY PAGE」も、もう3年。ミッドタウンは、オープンしたときから「d-labo」の本のディレクションをさせてもらっています。昨年に続き、今年もゴールデンウィークにミッドタウンの芝生広場で本を読むイベント「パークライブラリー」もやります!

江口僕は、4月12日からはじまる「東京ミッドタウン・デザインハブ」の企画展『ももも展』で、展覧会自体のことばのディレクション、します。

ももも、って何?

江口あれも、これも、それも。

欲張りな感じなんだね。

江口まあ、そうかな。説明すると、既にあるものの中から「これもデザインといえるモノ・コト」を10人の選者が選んで発表する展覧会です。僕は選者のひとりでもあって、アートディレクションは橋詰宗さん。中高生ぐらいの若い人たちにもデザインの楽しさや面白さを伝えたい、という思いがあって、新しい「眼差し」や「発見」のきっかけをつくろう、という。

 で、今日のお題なんですけど、六本木を「デザインとアートの街」にするためのアイディア。そもそも、なぜデザインとアートの街にしたいんですかね?

なぜか......それはちょっと置いておきつつ、「デザイン」という言葉自体の領域がずいぶん変わってきたでしょう。だから、僕らがせっかくこういうお題を話すんだったら、今までのデザインの話より枠を広げたほうがいいんじゃないかな。誰かがこんな椅子をつくりました、とか、どこかでこんなプロダクトが発売されました、ではないことも、これからもっとデザインの一部として語られるようになっていくだろうし。一方で「デザイン」という言葉のインフレも起きている。つまり、なんでも「デザイン」化すればいいというわけでなく、「デザイン」という方法が、しっかりと定着する道筋を見極めなきゃいけない。

江口「ももも展」もそうだし、最近は地方再生もデザインの役割というか、僕は山梨県の地場産業おこしに2年ほど携わっているんだけど、ただ単に自社ブランドで新しいものをつくろう! みたいなことをやってもうまくいかなくて、では何に力を入れているかというと、「自分たちが持っているものを分解して、よく見て、それをどのように提示するか」なんだよね。

 パッケージを工夫すればするほど他の地方のブランドと違いが出なくなってくるし、たくさん売ろうとする分、売れなくなっているものもあるかもしれない。そういうイビツさ、不均衡さみたいなものに気づく、ということをまずやっていくのがいいんじゃないかと僕は思っているんです。

 六本木も、結構イビツな街じゃないですか。東京ミッドタウンや六本木ヒルズみたいなところがある一方で、交差点のあたりの路地を入ると客引きや呼び込みもすごい。でも、それがこの街の面白さだから、六本木とデザインを考えるときも、無理に新しく何かをつくったりするのではなく、まずその面白さを語ることからはじめたほうがいいんじゃないかな。

六本木で「読書のフェス」。

アートとデザインの街にすることを目的化しちゃうと、たぶんダメだと思う。要は、「いろんなことがうごめく街」がいいと思うんですけれど、それなら僕は「読フェス(読書のフェス)」を六本木でやりたい。「読フェス」は新しい本の読み方を提案する野外イベントで、昨年の11月に江口さんたちと初めて上野・恩賜公園の水上音楽堂で開催しました。その時は、約500人の観客の前で、10人の書き手がそれぞれ、マイク1本で朗読をしたんです。

江口本って家の中で、1人で、静かに読むもの。それを全部ひっくり返したら、外で、みんなで、大声で読む、ということになる。それはまるでフェスみたいだね、という幅さんと僕との立ち話から始まったイベントです。実際にやってみたら、すごくいいんですよ。朗読会は、読む人1人に対して聞く人5人とか10人ぐらいの感じだけど、それが1対500とかになると、やっぱりフェスになるんですよね、読書とはいえ。みんなが頭の中で同じ物語を想像して、食卓なら500人が500人分の食卓を思い浮かべて、終わった瞬間、うわぁっとなる。読フェスがつくる、その「風景」みたいなものがいいんです。

書き手である本人が読むと、声のトーンや息継ぎの位置でどういう思いで書いていたのかが直接伝わるし、人の声から物語が耳に届くという、すごく原初的な読書体験でもある。

 やっぱり生身の人間がたくさん集まると、何か強いものが生まれますよね。スマホでコミュニケーションがとれてしまう世の中だからこそ、身体感覚というか、実存感のある体や物の強さみたいなのは、何にも代え難い魅力だと思うんです。面倒くさがらずに「集まる」。膝を交えて、じゃないけど、わざわざ時間と労力使ってその場に来ることが重要で、結局「人が集まらないと、面白いことはうごめかない」と最近特に思います。