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藤村龍至 (建築家)

思想家や評論家との交流の広さでも知られ、時には自らトークイベントを企画する藤村龍至さん。2009年からは、毎夏ギャラリー「hiromiyoshii roppongi」で行われる建築展のキュレーターも務める。建築家として関心のあることは、ずばり、都市。まずは東京という都市の特徴から読み解きます。

update_2013.3.6 / photo_taro hirano / text_tami okano / edit_rhino

同じテーマで人が集まる巨大イベントの力。

 かつて原宿や渋谷が「若者の街」と呼ばれ、中高生がたくさん集まる街だったように、1990年代の頭までは、あるテーマを持った街が東京にいくつもありました。それが90年代半ばに変化し、「地元の駅前には集まるけれど、渋谷や原宿には行かない」という人が増えていった。社会学者の宮台真司さんはそれを「まったり革命」と言いましたが、ちょうどインターネットが出てきて、携帯電話も普及しはじめた頃。共通の趣味や興味の対象をもつ人たちは連絡を取り合いつつ、地元でまったり、「このテーマの人たちはこの街に集まる」と言えなくなった。つまり、「街」と「人々の活動」との関係が見えにくくなったんですね。それが東京をはじめ、現代都市の特徴のひとつだと思います。

 街の代わりに「同じテーマで人々が集う場所」として力をもち始めているのが「巨大イベント」です。ビックサイトでのコミケ(コミックマーケット)や幕張メッセでの音楽イベントなども巨大化し、10万人、20万人という規模で人が集まる。そこで思うのですが、六本木に人を集めるなら、そのような「テーマ型の巨大イベント」を仕掛けることが一番のきっかけになるのではないでしょうか。

アジアの同世代のつながりをつくる。

DESIGNTIDE TOKYO
招待作家による作品発表や実際のプロダクトを触ったり、デザイナー本人から購入できたり、デザインの旬を知ることのできるイベント。昨年は東京ミッドタウン・ホールで行われた。

同じ家、違う家
2012年11月9日から12月9日にかけて、ソウル市のTotal Gelleryにおいて開催された。韓国側キュレーターをリム・ジェヨン氏、日本側キュレーターを曽我部昌史氏が務め、日韓各5組、合計10組が参加。撮影:AAR編集部

 六本木のイベントといえば、DESIGNTIDE TOKYOやデザイナーズウィークが既に毎年行われていて、街のイメージのひとつにはなっていると思うのですが、加えて今後、実現したら面白いと思うのは、グローバルな競争のなかで日本との関係が重視されそうなアジアのデザインやアートの関係者が集まるイベントです。「アジアの同世代のつながりをつくる」ことは個人的にも今後積極的に行っていきたいことのひとつで、昨年の秋には、韓国の同世代の建築家との展覧会「同じ家、違う家」展に参加しました。

 韓国は1997年のアジア通貨危機と、2008年の韓国通貨危機という2度の経済危機があり、経済一辺倒から環境主義へ、そしてコミュニティ主義へと社会のモードが変化してきました。日本も1995年の阪神淡路大震災と2011年の東日本大震災というクライシスを乗り越え、少しずつ社会のモードが変わってきている。その状況を含め世代的に共通するところも多く、ディスカッションをしてみると、とても面白い。

日本の建築デザインが核になる。

 アジアの若い建築家たちは地道な動きをしていて、ぱっと見ただけでは、何をやっているのか分からない人も多い。でも、実際に会って話しをしてみると、これから縮小していく社会の中でデザイナーとして何をしていくのか、いろんなレベルでの実験をしている。「コミュニティの再生」や「公共空間の再構成」といった真面目なテーマは伝わりにくいところもありますが、だからこそ、同じ場に集まり、対話を重ね、ひとつひとつの試みを丁寧にピックアップしていくようなイベントが六本木でできたら、いいですよね。

 特に、デザインやアートの中でも「建築デザイン」は日本がリードしている分野でもあるので、建築デザインが核になってアジアのデザインやアート関係者の交流を活性化していけたら、と思っています。