19 会田 誠 (美術家)×辛酸なめ子(コラムニスト)

会田 誠 (美術家)×辛酸なめ子(コラムニスト)

2013年の3月31日まで、六本木ヒルズ内「森美術館」で『会田誠展:天才でごめんなさい』が開催中の会田誠さん。対談するのは、漫画家でコラムニストの辛酸なめ子さん。独自の視点で社会現象を追ってきた辛酸さんは、六本木に鋭く切り込み、会田さんにも鋭く質問。まだ未完の作品を抱え「展覧会のことで頭がいっぱい」という会田さんは頭をポリポリとかきながら、六本木をアートとデザインの街にするアイディアを捻り出してくれました。

update_2012.12.19 / photo_taro hirano / text_tami okano / edit_rhino

デザインは乃木坂に、アートは麻布十番に向かう。

トラウマリス

トラウマリス
2008年に閉店した、六本木芋洗坂下にあった12坪のギャラリーバー。来店第一号である、故・岡本敏子さんに始まり、各界のアーティストに愛される場となった、12坪の小さな空間。2010年に恵比寿に移転。
http://www.traumaris.jp

会田 誠僕の案は、使われなくなった廃校などを使ってオルタナティブスペースをつくること。美術館ではやらないような展示ができたり、気軽なカフェみたいな場所ができたら、若いアーティストもこの街に来やすくなるんだろうな、と。まあ、よくあるアイディアだけれど、反射的に浮かぶのはそんな感じですね。辛酸さんだったらもっと奇抜な案が出るんじゃないかな。

辛酸なめ子いきなりハードルを上げますね(笑)そうですね...... 例えば、ミッドタウンの名前を「ミッド"デザイン"タウン」に変えるとか、六本木の駅名も「デザインタウン六本木」に変えてしまう。ちょっとダサイかもしれないけれど、名前に「デザイン」を加えることによって、人々にデザインの街だとインプットされる気がします。

 大江戸線って車内で駅周辺の情報もたまにアナウンスしたりしますよね、東洋英和学園はこちらです、みたいな。もし駅の名前を変えられなくても、アナウンスで「次はデザインタウン六本木です」と言ってもらえると、宣伝になるのではないでしょうか。

 あとは、ドンキとロアビルをどうにかすれば......。

会田え? ドンキ?

辛酸デザインされていないグッズがいっぱい売っていたり、周辺の治安が悪かったり、あの辺りから負のオーラが漂ってきているので、隔離するとかどうにかすれば、六本木はもっと洗練されていく気がします。

会田なるほど〜。僕はドンキはいいんじゃないかと思うけどな。そこらへんはアートとデザインって似ているようで水と油なところもあるので、微妙な対立がありますね。アート系の若者はデザイン系が行くようなおしゃれで高いところへは行かず、安っぽそうなところを嗅ぎつけて行くからね。

 六本木から乃木坂にかけての辺りが、ちょっとお洒落な感じなのかな。写真家、篠山紀信さんの事務所も近くて、カルチャーの香りがするしね。まあ、確かにそれに比べてドンキのあたりは...... 好きだけど。だからドンキから麻布十番にかけてはデザインじゃなくてアートが請け負うのがいいかもしれませんね。

辛酸アート関係の人が集っていたバー「トラウマリス」があったのもあの辺りでしたっけ?

会田そうだね。芋洗坂のね。あのへんは僕たちにとっても居心地のいいところです。

六本木はアメリカと関西の香り?

会田20代後半の2年間くらい、六本木のジャズレストラン「サテンドール」でウエイターをしていたんです。だから六本木で遊んだことはないけど働いたことはあって、で、僕のイメージとしては六本木ってアメリカっぽいですよね。

辛酸星条旗通りとかもありますしね。

会田大使館が近かったり、米軍の施設も残っていたり。米兵はアメリカ人といっても洗練されたニューヨーカーというよりは、粗野なコロラド出身、みたいな感じがするからね。そういう、ちょっとワイルドなところもデザインっぽくないのかもしれないですね。

辛酸今年の夏に六本木の米軍宿舎で行われている「フレンドシップデー」に行ったんです。米兵が肉を焼いて売っている、みたいなイベントで、確かにみんなワイルド系でしたね。フレンドシップと言いながら、建物の中には入れてもらえなかったんですけど庭園もあって、六本木のこんなに広い土地を米軍が使っているんだ、ってことが驚きでした。

会田六本木からローカルなアメリカっぽい匂いを消すために、フランス人とかに協力してもらえないかな。

辛酸街としては神楽坂にフランス人がいっぱいいるらしいのですが、六本木に移ってきてもらいたいですね。

会田神楽坂の「日仏会館」を六本木に移転するのはどう?

辛酸それはいい。

会田あと、話していてちょっと思い出したのは、六本木って東京の他の都市に比べて関西弁の人が多い気がする。これも六本木でウエイターをしていた頃の印象なんだけれど、男の人が大きな声で関西弁を喋っているのをよく聞いた気がするんですよ。ワイルドというか、ギラギラした感じで、米兵と関西弁でダブルギラギラ。そこに軽い恐怖を覚えるんだけど、僕にとっては六本木の特徴であり、面白かったところでもありました。

 アートとデザインの街っていう話しからどんどん離れてますね......