10 遠山正道 (株式会社スマイルズ 代表)

遠山正道

スープ専門店『スープ ストック トーキョー』を展開する株式会社スマイルズの代表であり、国内外で個展を開催するアーティストとしての顔も持つ遠山正道さん。経営者らしいポジティブさに、建築やアートへの造詣の深さが相まって生まれる遠山さんの六本木未来構想は、大胆かつ具体的。話しはどんどん前へと進みます。この日、遠山さんが着てきたのは、「GO FOR FUTURE」のメッセージを発信するアーティスト、遠藤一郎さんによる1点もののシャツ。乗ってきたのは鮮やかなグリーンの愛車で、玩具のミニカーを色見本にカスタマイズしたのだとか。肩書きは社長。パワフルです。

update_2012.9.5 / photo_taro hirano / text_tami okano / edit_rhino

高速道路の高架を六本木の長所に。

 六本木というと、ちょっと猥雑な印象があるんですけれど、その印象をつくっているひとつは、あの交差点の上を通っている高速道路かな、という気がするんですね。地下に埋められればいいけれど、なかなかそうはいかない。だったら発想を転換させて、高速道路の高架を六本木の象徴にしてしまってはどうかと思うんです。昔、女性誌の中吊り広告に「広いおデコは隠すのではなく、パっと出せば人生が変わる」みたいなことが書いてあるのを見て、いい特集だなと思ったんですけど(笑)、短所は長所にもなる。

 具体的には、まず防音壁をすべて強化ガラスに変え、雑物を隠すためのカバーも取り払う。六本木交差点から溜池方面に下りていくと、アークヒルズの前あたりの高架は防音壁もカバーもなく、薄くてきれいなんです。見ていたら、玩具の「スーパーチャージャー」を思い出しました。「スーパーチャージャー」は、アメリカのマテル社が出していたミニカー、ホットホイールを走らせて遊ぶサーキットコースセット。60年代後半から70年代にかけて流行ったもので、私の最も古い遊びの記憶のひとつです。谷町ジャンクションあたりの曲線なんて特に、その「スーパーチャージャー」のイメージと重なるんですよね。

空に浮かぶ街路樹。

六本木交差点上の高速道路

六本木交差点上の高速道路
平成21年3月に"Art&Design"の街、六本木の新シンボルとして設置された高速道路桁下照明"六本木 ライト・ストリーム"。ロゴデザインは、六本木未来会議の第2回目のゲストである葛西薫氏が、照明デザインを石井幹子氏が手がけた。

 とにかく、なるべく要らないものは除いて、薄いスラブ(建築物の床構造)とでも呼ぶ、その床をキラーンと見せてあげたい。できればマテル社から協賛でもとって「スーパーチャージャー」と同じオレンジ色に塗りたいですね。全部ベタで塗るのがダメなら側面だけでもいいので、そのオレンジ色が細くしなやかに渋谷から溜池くらいまでつながっている感じにしたい。

 そして、高速道路に街路樹も植えましょう。車で走っている人も気持ちいいし、見上げると、上空に木があるっていうのもいいですよね。薄いスラブに木が生えるのか...... はよくわからないんだけど、まあ、そこは頑張って生やしてもらって、都市の2階部分にも木が立っているという、ちょっと見慣れない風景をつくれればと思います。

その名も「六本木スラブ」。

 せっかくの妄想ですから、もっと妄想を膨らませてもいいですか? 渋谷から溜池方面への高速道路を「縦軸」と呼ぶならば、六本木交差点から東京タワー方面と、乃木坂方面へ走る外苑東通り沿いの「横軸」にも、床を張り出しちゃう。構造としては、片方にしか柱梁がないキャンチレバーで、大体20mずつぐらい張り出されている。つまり、交差点の上が十字になっているイメージです。そこはガラスの温室みたいな場所で、イベント会場でもあるんです。床を張り出すのだから、場所の名前は「六本木スラブ」。

 夜の「六本木スラブ」では、アコースティックバンドのライブやコンテンポラリーダンスの公演などが行われていて、チケットを持っている人だけが入れる。都市ならではの特別な場所なので、ハイエンドブランドのパーティーとか、ランウェイのファッションショーとか、より特別感のあるイベントも似合うでしょうね。その賑わいを、周辺のビルからちょっと遠巻きに見るのもよさそうです。