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2018年02月19日

【展覧会レポート】「en[縁]:アート・オブ・ネクサス――第15回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展 日本館帰国展」

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現在、建築とデザイン専門のギャラリーであるTOTOギャラリー・間(ま)では、「en[縁]:アート・オブ・ネクサス――第15回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展 日本館帰国展」が開催されています。

本展では、2016年5月28日~11月27日にイタリアで開催された第15回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展の日本館の展示をベースに、映像や模型等のオリジナル要素を加えて、再構成され、さらに各建築家の国際建築展以降の取り組みについて紹介されています。

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ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展は、イタリアのヴェネチアで2年に一度開催され、世界中の建築家が参加する建築界のオリンピックです。2016年に行われた第15回は、「REPORTING FROM THE FRONT」というテーマの下、各国ごとの社会状況や課題に対し、建築がどのように応えるのかの提示が求められました。

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そんな中、日本館の展示「en[縁]:アート・オブ・ネクサス」が掲げたのは、日本が直面する空き家の増加や高齢化といった課題。それらの状況を声高に批判するのではなく、その状況に寄り添って、今日的な方法による建築で答えを提示しました。その提示方法が情緒的であることが高く評価され、特別表彰を受賞しています。

上の写真でその時の表彰状を持っているのは、同展の監修者である山名善之さん(東京理科大学理工学部建築学科教授)。山名さんは2年前を振り返り、「まずは、ヴェネチアでどのように日本の現状をクリティカルに提示するか、という部分から取り組みました。そんな中で浮かび上がったのが、この「en[縁]:アート・オブ・ネクサス」というタイトルです。"縁"というのは欧米人にとって忘れていた、もしくは、まだ意識化されていない言葉。外と内を結ぶ縁側という場所があるように、とても日本的な概念ですし、ヨーロッパが壁を立てることによって空間を作っていくことに対し、その空間そのものを作っていくというのが、日本の大きな特徴だからです」と、コメントを寄せました。

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こちらは仲建築設計スタジオの「食堂付きアパート」。近代化の過程で一般化した専用住宅が個人の生活を分割し、プライバシーを偏重することで、都市生活を硬直化させていました。それに対し、「食堂付きアパート」は住宅、食堂、シェアオフィスを半野外の立体路地で繋げ、内発的な関わり合いの活発化を目指しました。

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本作を手掛けた仲俊治さんは、「一言で言うと、住むと働くが一緒になった集合住宅です。コミュニティや繋がりをイベント的なもので作るというよりは、個人の仕事や趣味、つまりささやかな日常で周囲と繋がっていけるような生活環境を作りました」と、日常での繋がりを重視していることを明かしました。中を覗くと、その開放的な環境をさらに感じることができます。

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スクラップ&ビルドが成長のロールモデルとして機能しなくなっている場所において、建物の要素に注目しながら、「マテリアル(原料・材料)の流動」の中に建築を位置づけようと試みているのは、403architecture [dajiba]です。メンバーの一人である橋本健史さんは、「天井だった部分を床に変えたり、床だったものをカウンターテーブルにしてみたりと、ある場所にあったものの形や組み方を変えて、作り替えていくことをやっています」と活動をアピールしました。

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本展では、廃棄予定だったヴェネチアンガラスを800度で加熱してブロックにし、第15回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展で橋としてそれを出品した時の写真や、廃材となった天井の木材を短手方向に裁断していき、畳と入れ替える形で床に敷き詰めた「渥美の床」の写真を見ることができます。403architecture [dajiba]の活動は、場所と結びついたリサーチと実践を繰り返すことで生まれた、都市そのものと直接関わり得るものとして高く評価されています。

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ドットアーキテクツによる「馬木キャンプ」と「美井戸(ビート)神社」は、高齢化と人口減少が進む瀬戸内海の小豆島にあります。島はさまざまな課題を抱え、行政だけでは解決できない状況にありました。そこで、自分たちの手で自律的に地域社会をつくり、島外と積極的に交流していく必要性に迫られて生まれたのが「馬木キャンプ」です。ここは、簡単な構法によってセルフビルドを可能にしたり、地域の交流を促進するためのアイディア提案の小さな社会実験の場として機能しています。

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「美井戸神社」は、2013年の瀬戸内国際芸術祭で小豆島に設置された、ビートたけし×ヤノベケンジの作品「ANGER from the Bottom」を守る祠です。中にいるのは、島の古井戸に潜む巨大な地霊をイメージした寓話的な彫刻作品。

この祠は、島の生活を支えてくれた井戸や水を称え、自然への畏怖の念を抱くために設計されました。「ANGER from the Bottom」は最大約7メートルの高さまで伸びる特殊な彫刻作品ですが、祠はそれに合わせて伸屋と名づけた新たな形式を用い、上下に動くように作られています。

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第15回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展(2016年)をベースとした、12組の若手建築家の展示が行われているのはTOTO乃木坂ビルの3階ですが、4階は出展作家たちが現在はどんなことを考え、何に取り組み、どこを目指しているのかを知ることができるブースになっています。奥の映像コーナーでは、すべての建築家にこれまでの活動や、展示会で学んだことなどについてインタビューをした40分程度の映像が流れています。

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今回紹介したもののほかにも、実際に訪れてみたい、住んでみたいと思うような建築作品がたくさんあります。建築によって生み出される空間は、地域や人との繋がりを生み、社会そのものや我々の生活を、さらにより良くするものなのだということを気づかせてくれる展覧会でした。



編集部 髙橋





information
en[縁]:アート・オブ・ネクサス
――第15回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展 日本館帰国展
会場:TOTO ギャラリー・間
会期:2018年1月24日(水)~3月18日(日)
開館時間:11:00~18:00
休館日:月曜
入場料:無料
公式サイト(URLをクリックすると外部サイトへ移動します):
https://jp.toto.com/gallerma

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