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INTERVIEW
97
増田セバスチャンアートディレクター / アーティスト Sebastian Masuda / Art Director / Artist
Sebastian Masuda / Art Director / Artist

『Kawaiiとはモノではなく、概念であること』【後編】

なぜKawaiiが日本のポップカルチャーとして世界に認知されたのか。それを紐解く展覧会をやってみたい。

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  • NO97 増田セバスチャン 『Kawaiiとはモノではなく、概念であること』【後編】
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update_2018.10.03 photo_yoshikuni nakagawa / text_nanae mizushima

原宿のカワイイは、世界のKawaiiへ。21世紀に入ってから世界でもっとも広まった日本語かもしれないKawaii。その言葉にパワーを持たせたのは、アートディレクター/アーティストとして国内外で活躍する増田セバスチャンさんです。アートとファッション、エンターテイメントなど、様々な領域を横断しながら、Kawaiiカルチャーを発信し続ける増田さんに、そのクリエイションの原点や活動を振り返っていただき、六本木とKawaiiの可能性についてうかがいました。

前編はこちら

環境を打ち破るための "Kawaii"

 "Kawaii"は、今や日本のポップ・カルチャーを形容する言葉として、世界各国で定着してきています。僕の肌感では、アメリカでは西海岸からそのムーヴメントが拡大しました。シンガーソングライター、ケイティー・ペリーの代表曲「カリフォルニア・ガールズ」のMVにもあるような、土地に根付いているポップでクレイジーな色彩感覚との相性が良く、感度の高い女の子たちが日本のファッションをミックスしたスタイルを広げて行ったのです。対する東海岸は、西海岸よりも人種や宗教、性別などに対して差別的な視線を受けやすい土地柄ということもあって、Kawaiiを、自分の置かれた環境を打ち破るための手段に用いている人が多いように思いました。そもそもKawaiiとは、見た目、形を指すものではなく、哲学であり概念......という意味では、東海岸の方がKawaiiの本質が急速に伝わっているように感じます。

ケイティー・ペリー

1984年アメリカ・カリフォルニア州生まれ。5歳の時にクイーンの『キラー・クイーン』を聞いて感銘を受け、音楽の道に進むことを決意。2007年4月、メジャー・デビュー。2013年10月にアルバム『プリズム』を発売。米ビルボードチャートシングルチャートで見事1位に輝いた。Kawaiiに精通する原色を多く使った個性的な着こなしが目立ち、ファッション界からも一目置かれている。大の親日家。日本生まれのキャラクター、ハローキティのタトゥーも入れている。

 ニューヨークと言えば、僕は今、ニューヨーク大学の客員研究員を務めているんです。研究テーマは、アメリカのユースカルチャーと日本人アーティスト(芸術家)、そしてその関係性にどう今のKawaiiが結びついていくのか、といったことです。

 というのも1960年代から70年代に活躍した日本人アーティストが、当時のアメリカのユースカルチャー、特にクラブシーンに影響を残しているんです。そしてその影響が今、Kawaiiがアメリカで熱心に受け入れられている理由につながっているはず。それをちゃんと文脈立てて説明できるのではないかと思っていて、当時の歴史を辿りながら研究をしているんです。

ここから10年、ニューヨークを入口に世界で戦い抜きたい。

 来年から僕はニューヨークに半分、活動拠点を移す予定でいます。今、ちょうど向こうでスタジオを探している最中で。そう決断した理由はいくつかあるんですが、まず一番は、日本でアート活動をしようとすると、どうしてもスケールが小さくなってしまう傾向にあるから、それを避けたかったということ。予算の問題、相手の要望など、いろんな課題が出てきて、結果的に作品のスケールに関わってくるのがどうしても抵抗がありました。自分で考えたものをそのまま膨らませたい。作品のスケールを保ちたい。その想いが強くなって来て、海外に創作の場を移そうと決めたんです。

 じゃあなぜニューヨークだったのか。それは年齢的なことがあります。今、僕は48歳。アーティストとしてフレッシュな状態、精神的にも体力的にも無理がきく状態というのは、自分の年齢的にもあと10年かなって。じゃあその10年間をどこを中心にして戦うのか。それだったら嫌いな(笑)、ニューヨークだと思いました。

 ニューヨーク、旅行で行くぶんには楽しくて刺激的で好きな街です。でも住んでみると、ボクシングでいうところのリングみたいな感じで、全世界から集まって来た強者たちと無差別級で戦わせられるような街なんです。だから傷つくことも多いし、ダメージも大きい。だからこそ、アーティストとしては戦いがいがあると思ったんです。

増田セバスチャン_04

オランダの開拓精神とインフラ整備が熱い。

 もしも住むだけなら、オランダのアムステルダムに住みたいです。昨年、文化庁文化交流使に任命されて、3か月ほど住んでいたんですが、アムステルダムはカルチャー全体がおもしろいですし、何より人々の物事に対する価値観が好き。

 基本的にオランダの人は開拓精神が根づいています。ニューヨークさえもオランダ植民地時代があって、その時代はニューアムステルダムという名称で呼ばれていましたから。その精神というか、外へと切り開いていこうとする意識がオランダの人から感じるんです。

 開拓精神とはちょっとずれてしまうかもですが、オランダはインフラ立国でもあります。例えば食物の施設栽培。食料の生産地から食卓までの輸送距離が長いほど環境への負荷が大きくなっていきますが、その負担を減らすひとつの方法として、オランダでは農業用地のない大都会の廃墟ビルで野菜や魚を育てて、それを地域の人たちに供給するユニークな試みが行われているんです。これもおもしろい。

 ほかにもオランダを代表するインフラと言えば、風車。オランダでは風車は海水を排出する動力として長く活用されてきましたが、他の技術が発展していた今でも5年かけて風車をつくり続けている。その国民性が僕にはすごく楽しい。そんな風車ですが、完成したらパンをつくるための小麦を粉にするときに活用されているんです。「え?」って思うでしょう(笑)。このインフラ整備に対するオランダの人たちの価値観が、僕は好きです。

アートは言葉をビジュアル化する。

 文化交流使だった頃、僕はアムステルダムの街じゅうの元造船所だったところにアトリエを構えて、そこで約2か月間、作品制作をしました。テーマは、「アノニマス(匿名・無個性)からの脱出」。小さな紙にラフスケッチを描いて、見知らぬ人に「これおもしろいからやりましょうよ」って言ってまわって、それでどれだけのことができるかっていうのを試みました。

増田セバスチャン_cap_04

「アノニマス(匿名・無個性)からの脱出」

2017年11月18日、「アノニマス(匿名・無個性)からの脱出」をテーマに、野外公演『ESCAPE FROM ANONYMOUS(E) -Improv Orchestra for the World-』を発表。ネズミのマスクを被った俳優陣、ストーリーに合わせて楽曲を奏でるミュージシャン、カラフルな衣装のパフォーマー、白い覆面を着用した観客と全員で、ひとつの作品を作り出した。

 この作品を思いついたのは、当時、自分が迷っていたからです。2014年にニューヨークで個展を開いて、アーティストとしてデビューしたあとというのは、作品にいくらの価値がついた、いくらで売れたとか、そういう商売の話になってきて、いつしか自分が高級インテリア職人のように思えてきたんです。

 アーティストとは本来、作品を通してメッセージを投げかけていく存在ではないのか? そのジレンマを抱えながら、自分はアートを通じて一体何をしていくのかを、改めてこの作品を通して問い直そうとしました。

 そしてこの作品では、沈む船からはネズミがいなくなる。つまり沈没をいち早く察して逃げる習性があるネズミとヨーロッパの社会情勢を重ね合せたんです。それをひとりひとりに説明していったら、最終的にはスタッフだけで100人、お客さんは1,000人も集まって、すごく大きなパフォーマンス公演ができて。Kawaiiはローカルなものとミックスされて膨らんでいくものですが、このとき見事にアムステルダムの文化とミックスされながら、ここでしか出せないKawaiiが膨らんでいきました。

 そこで僕は再確認できたんです。アートには人を巻き込んで何かを生み出すパワーがある。やっぱり僕はそのパワーを信じてアートをやっていきたいと。もしそのことが実感できなければ、高級インテリア職人の道を突き進んでいこうと思っていましたから(笑)。

 アートは言葉をビジュアル化できるものです。僕はこれから10年かけて、自分が伝えたいメッセージをビジュアル化していきたいと思います。その最終的なアウトプットを東京で見せられるかはまだわかりませんが......その機会があれば、ぜひ六本木でやってみたいですね。

前編はこちら

取材を終えて......
例えば洋服、アクセサリー、インテリア、雑貨、男女問わず好きな人。「素敵だ!」と思ったものは、大抵「カワイイ!」という言葉に変換して、私はこの世界に感情を放り投げていました。よってあまりにも身近な存在だった「カワイイ」ですが、こうして増田さんの活動に触れることで、新しい視点で変化に富んだカワイイを、自分のなかに獲得できた気がします。そしてそれはモノではなく、概念。アートの力は果てしないとあらためて実感しました。いつの日かまた、ニューヨーク大学での研究成果をうかがってみたいです。(text_nanae_mizushima)

増田セバスチャン

増田セバスチャン / アートディレクター / アーティスト
増田セバスチャン / アートディレクター / アーティスト

1970年生まれ。演劇・現代美術の世界で活動した後、1995年にショップ「6%DOKIDOKI」を原宿にオープン。きゃりーぱみゅぱみゅ『PONPONPON』MV美術、「KAWAII MONSTER CAFE」のプロデュースなど、原宿のKawaii文化をコンテクストに作品を制作。2014年よりニューヨークを中心に個展を開催。2020年に向けたアートプロジェクト「TIME AFTER TIME CAPSULE」を世界10都市で展開中。2017年度文化庁文化交流使に選出。現在、箱根のポーラ美術館で自身による大型インスタレーション作品、『Point-Rhythm World 2018 -モネの小宇宙-』を展示中。(〜2018年12月2日まで)

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