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INTERVIEW
88
菅野薫クリエーティブ・ディレクター Kaoru Sugano / Creative Director
Kaoru Sugano / Creative Director

『日本から発信しながら、世界的視野を持つ』【前編】

普段どおりのすばらしさを丁寧に伝えるだけでいい。

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update_2018.01.10 photo_tada(YUKAI) / text_ikuko hyodo

世界中を湧かせた、リオ2016大会閉会式「東京2020フラッグハンドオーバーセレモニー」や、歌姫ビョークとのコラボレーションなど、最先端のテクノロジーと斬新なアイデアで見たことのない世界を見せてくれる、Dentsu Lab Tokyoの菅野薫さん。広告業界をベースにしている菅野さんは、アイデアや魅力を発信することの重要性をどのように捉えているのでしょう。そして六本木が街としての発信力を高めるにはどうすればよいのか、貴重なアドバイスをいただきました。

後編はこちら

音楽を中心とした文化に出会った街。

 僕は杉並区出身なんですけど、中学と高校の6年間、元麻布にある麻布学園に通っていたんです。歩いて行ける距離なので、友達と渋谷に遊びに行ったり、洋服を買いに行くなら代官山だったりもしたのですが、六本木は学校から一番近い街なんだけど、もうちょっと大人の街というイメージでした。今日撮影した「六本木ヒルズ メトロハット」の辺りに、当時は「六本木WAVE」っていうレコード屋があったんです。後から知ったのですが、そこで働いてのちに音楽ライターやDJになった人も多いらしく、ライナーノーツばりのやたら詳しくて丁寧なレコードの解説や、熱いプッシュが売り場に置かれていました。お金がないからそう簡単にCDを買うことはできないんだけど、学生って基本的にヒマだからせっせと通っては、いろんな音楽の情報得ていたんです。だから僕にとって六本木は、音楽を中心とした文化に出会い、世の中にどういう音楽があるのかを知った場所なんですよね。

 緊張しながら、初めてクラブに行ったのもこの辺り。これももう今はないのですが、「Space Lab YELLOW」っていう西麻布のクラブですね。当時はインターネットなんてなかったから、レコード屋で情報を集めたり、調べてもわからないことは店員さんに聞いたりして、自分の足で情報に接して、友達と情報交換していました。六本木WAVEで知ったアーティストがどうもYELLOWに来るらしいって、そわそわしていたのが、僕にとっての六本木の原体験。

Space Lab YELLOW

1991年、西麻布にオープンし、東京のダンス・ミュージック・シーンを牽引したクラブ。通称「YELLOW」。400名を収容するメインフロアのほか、ラウンジやバーなどを併設。2008年6月に惜しまれながら閉店。

 大人になってからだと、2013年の文化庁メディア芸術祭で『Sound of Honda / Ayrton Senna 1989』がエンターテイメント部門で大賞をいただいたとき、国立新美術館で展示をさせていただいて、トークショーやワークショップをしたり、森美術館の10周年記念展『LOVE展』に作品を出させていただいたり。仕事で関わることがやっぱり一番多いですね。

『Sound of Honda / Ayrton Senna 1989』

1989年のF1日本グランプリ予選でアイルトン・セナが樹立した、世界最速ラップの走行データを用い、彼の走りを音と光でよみがえらせた。エンジンやアクセルの動きを解析し、実際のMP4/5マシンから録音したさまざまな回転数の音色と組み合わせることで、当時のエンジン音を再現。全長5,807mの鈴鹿サーキット上に無数のスピーカーとLEDを設置し、再現した音を走行データに合わせて鳴らすことで、24年前の走りを表現した。

アイデアは発想よりも、実践に意味がある。

 僕は、自己と対峙した表現を発信するアーティストではなく、広告の企画を仕事にしているので、クライアントとか主体となる発信者がいるプロジェクトがあって、それらがうまく機能する表現を考えるのが役割だと思っています。だからなんのお題もなく「菅野さんはどうしたいですか?」と言われても、実は世の中に何かを発信したい強い意志があるわけではない。「こういう目的においては、この方法が最も機能すると思います」というふうに、目的に対してやるべきことを明快にしていく思考法なんです。だから六本木の発信力について問われても、もし六本木自体がどうなるべきかが明快になっていないなら、まずは大義を探るというか、それを浮き彫りにしていくプロセスから始めると思います。主体者が何のために何をメッセージすべきか、から一緒に考えるのが、広告コミュニケーションなのだと思っています。

 若い頃は先輩たちのすばらしい仕事を見て、よくこんなことを思いつくなあと、着想に感動していたんですけど、今はアイデアを発想するという能力は、その人自身の強い意志があれば、訓練で技術として獲得できると思っています。アイデアを思いつくのはクリエイターとして当たり前のことで、むしろそれをちゃんと世の中に定着させるというか、実現することのほうが本質的には意味がある。たとえば他者が新しくつくったものを見て、自分も似たようなことを考えたことがあるなって感じる人はいると思うんです。だけど、ちゃんとそれを最初に世の中で実現することが尊い。アイデアを高いレベルのクラフト力で、世の中の空気に触れる状態まで持っていくことではじめて発明といえるんですよね。

 テクノロジーなんかはまさにそうで、1800年代の後半のベル、グレイ、エジソンの電話の発明のタイミングですらほぼ同時で僅差だったっていうじゃないですか。技術がある程度飽和してきたタイミングで、実現できそうなことっていうのは、状況をそれなりに見て考えていれば発見できると思うんです。大変なのは、それを高いレベルで表に出すこと。大人になっていいことを思いついても、なかなか実現しないじゃないですか。そこには予算や、いろんな事情があるんですけど、それらをひとつずつクリアして、つい盛りがちなところも削ぎ落として、当初のアイデアのまま、なるべくピュアな状態で世の中に出すことに徹底してこだわる。それがクリエーティブ・ディレクターの仕事なんじゃないかなと思っています。

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視点がグローバルかどうかは住む場所とは関係ない。

 幸運なことに僕は、海外での講演や、D&ADやカンヌライオンズなど広告デザイン賞での審査員、もしくは海外でのプロジェクトに呼ばれて仕事をするケースも多いのですが、広告の世界では、英語圏のほうが対象とする人数が多いから、ビジネス規模も当然大きいので、日本人は少数派です。ニューヨークやロンドンが世界から才能が集まる憧れの地です。そのことはもちろんわかりつつ、それでも東京を選んで住んでいる。東京っていう街と、日本に、東京に住んでいる人たちの技術や能力と一緒に仕事をすることに魅力を感じているのは間違いありません。

カンヌライオンズ

カンヌライオンズ

フランス・カンヌで毎年6月下旬に開催される、世界最大級の広告賞。正式名称は「カンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバル」。菅野さんは2012年に初めて出品。2014年には、先述した「Sound of Honda / Ayrton Senna 1989」で7部門15個の賞を受賞。最高賞であるチタニウム部門のグランプリを受賞した。

 ニューヨークやロンドンに移住したら仕事がローカルからグローバルになるかというと、どんな都市にだってローカルの仕事はたくさんある。結局どこかのローカルに所属するんですよね。グローバルな仕事をするのに本当に大事なのは、住む場所の選択ではなく、世界的視野を常に持ってものをつくる姿勢。日本の人に向けて発信するときにも、世界にも受け入れられるように考える。世界で評価に晒されることを常に意識して考える。誰かにお願いされなくてもそういうハードルを自分に課し続けることのほうが重要だと思うんです。どこに住んだらグローバルになれるかはあまり思っていなくて、それよりはどこの街に住むと自分の感性が刺激されるか、という基準で東京を選んでいる気がします。

 住む代わりには決してならないけど、講演や審査員で呼ばれたら、なるべく海外に行くようにしています。視野を広げたいので。審査員なんかをすると、十数か国から集まった人たちと1週間くらい一緒に過ごすわけです。同じ職種だけど違うところに住んで、グローバルに仕事をしている人たちばかり。彼らに東京がどう見えているのかも気になるし、審査員同士で真剣に自分たちの仕事の意義について話し合うのも勉強になります。僕の印象だと、日本はいろんな意味でかなり特殊だと思われているみたいですけどね(笑)。

 僕が審査するのは大抵、デジタルデザインのカテゴリーなのですが、広告にしろデザインにしろ、日本の表現には独特のクラフトマンシップがあるようです。昔から言われていることですが、詰め方が変質的というか、ものすごく徹底している。普通ならもっとビッグアイデアに行きたがるものだけど、とにかく突き詰めるから、何をやっても日本人の仕事だとバレてしまうらしい(笑)。「日本人っぽいね」という表現をされることがよくあるのですが、褒め言葉でもありつつ、ここまでやっちゃうんだ......みたいな意味も含まれているような気がします。

誰にどんな未来を見せたいのかを明確にする。

 街としての発信力を高めるにはどうすればいいか。日本にあるいいものを、全部海外に紹介すれば即理解されるかっていうと、それほどシンプルな原理ではない気がしていて、魅力が届いていないのには理由があると思うんです。要するに、前提として共有している文脈が共通していないんですよね。日本の場合、ハイコンテクストにデザインがつくられていたりしますが、もしそれをそのまま海外にアダプトしたら、3つの反応の可能性あると思うんです。そのまま文脈が抵抗なく受け入れられるのが、まずひとつ。もうひとつはたとえばエキゾチズムみたいな、本来の文脈とはまったく違う理由でウケるパターン。3つ目は、まったく理解してもらえないパターン。

 欧米の人は、エキゾチズムみたいなものが昔から好きですけど、僕たちが見たことのないような日本を思い描いているというか、異化されている部分が結構あるじゃないですか。謎の黄金の国みたいな(笑)。日本人としてはそこまで黄金の国だった自覚はないんですけど、見知らぬ国への憧憬というか、果てしなく遠い文化っていうこの世に存在しないエキゾチズムに憧れる感覚があるんでしょうね。日本は極東という物理的に欧米から最も遠い位置にいることが更にそれに拍車をかけている気がします。

 そういう意味でも海外へ発信することは、誰に対してどんな未来を見せたいかってことが大事だし、彼らのコンテクストのなかで、何かを無理矢理変えるのではなく、日本のすばらしいことがどうやったらいい形で理解され、受け入れられるかまで考えないと、本質的な解決にはならない気がします。

後編はこちら

菅野薫

菅野薫 / クリエーティブ・ディレクター
菅野薫 / クリエーティブ・ディレクター

(株)電通 CDC / Dentsu Lab Tokyo / エグゼクティブ・クリエーティブ・ディレクター / クリエーティブ・テクノロジスト。2002年電通入社。データ解析技術の研究開発業務、国内外のクライアントの商品サービス開発、広告キャンペーン企画制作など、テクノロジーと表現を専門に幅広い業務に従事。2014年に世界で最も表彰されたキャンペーンとなった本田技研工業インターナビ「Sound of Honda / Ayrton Senna1989」、Apple Appstoreの2013年ベストアプリに選ばれた「RoadMovies」、東京オリンピック招致最終プレゼンで紹介された「太田雄貴 Fencing Visualized」、国立競技場56年の歴史の最後の15分間「SAYONARA 国立競技場 FINAL FOR THE FUTURE」企画演出、等々活動は多岐に渡る。JAAA クリエイター・オブ・ザ・イヤー(2014年、2016年)/ カンヌライオンズ チタニウム部門 グランプリ / D&AD Black Pencil(最高賞)/ One Show -Automobile Advertising of the Year- / London International Awardsグランプリ / Spikes Asiaグランプリ / ADFEST グランプリ / ‎ACC CM Festival グランプリ / 東京インタラクティブ・アド・アワード グランプリ / Yahoo! internet creative awardグランプリ / 文化庁メディア芸術祭 大賞 / Prix Ars Electronica 栄誉賞 / STARTS PRIZE / グッドデザイン金賞など、国内外の広告、デザイン、アート様々な領域で受賞多数。

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