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INTERVIEW

79 為末大 (元陸上競技選手)

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  • NO79 為末大 『人間らしさとテクノロジーが融合した“ほどよい未来”』【後編】
       
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update_2017.04.26 photo_tsukao / text_kentaro inoue

スプリント種目における日本初の世界大会メダリストで、2012年の引退後は、コメンテーターをはじめ幅広いジャンルで活躍する為末大さん。現在、21_21 DESIGN SIGHTで開催中の「アスリート展」では、展覧会ディレクターのひとりを務めています。テーマはずばり「六本木×未来×アスリート」、ふだんのクリエイターインタビューとは少し違った視点から語っていただきました。

前編はこちら

少しだけ細かなことに気がつく、それがアスリート。

 アスリート展のディレクターズメッセージに、僕は「アスリートがいる世界は全く違う世界ではありませんが、少しだけ細かなことに気がつく世界です」と書きました。

 体操の2回ひねりも3回ひねりも、ほぼ一緒に見えるけれど全然違うじゃないですか。細部の違いがわかることでクオリティが全然変わってくるというのは、スポーツ以外の世界にもたくさんあるでしょう。端っこが尖っていようが丸くなっていようが、普通の人には関係ないけど、デザイナーからすると、その違いが大きいように。

ドーピングとAIは似ている!?

 アスリート性を身につけるメリットとしてわかりやすいのはヘルスケアの領域、身体を動かすのは健康にいいということ。それから、運動すると脳の神経細胞が増えるという研究もあって、僕はこれをけっこう信じています。

 もうひとつは今後、身体性の領域以外は人間の仕事ではなくなるんじゃないか、ということ。ドーピングとAIの議論ってすごく似ていて、両者の中核には「人間にしかできないことは何か」っていう問いがある気がします。

 マツダのあるデザイナーさんが、デザインはすべてソフトを使ってするけれど、最後に必ず粘土でつくって、さわって確認するという話をしていました。AIの最大の弱点は身体がないことで、今のところ触覚を認知に上げて学習することはできません。いろんなデータから、これが美しいと判断されているというのはわかっても、説明できない心地よさとか美しさを直感的に感じることはできない。だからこそ、身体をともなった高い感性が、人間のすごい武器になるんじゃないかな、と。

アスリート性は訓練すれば身につけられる。

 大事なのは、身体に関する自分なりのチェックリストを持つこと。朝起きたときにけだるい感じがするとか、歩いていて腰が落ちている感じがするとか、アスリートはそういう項目を頭の中にバーっと出して、総合的に調子を判断しています。きっとみなさんも、風邪の引きはじめに似たようなことをしているでしょう。

 もし5分に1回、自分を横から撮った写真がスマホで見られたら、猫背は直ると思うんですね。自分がハッとする瞬間を何回つくれるか。回数を重ねていけば、無意識で保てるようになるはずです。

 また、スポーツ心理学の原則は、コントロールできないものはあきらめて、コントロールできるものにフォーカスするということ。たとえば、緊張している自分の心にアプローチしても、実体がないのでほとんどワークしません。そこで、手が震えているなら、手が震えないようにするにはどうすればいいのか、心拍数が上がっているなら、心拍数を下げるにはどうすればいいのかを考える。

 具体的に身体に現れている現象をコントロールすると、結果的に心にアプローチできるというわけ。実際、僕も競技の経験から、緊張しないように"見せる"方法がわかりました。不思議なもので、それを繰り返していると本当に緊張しなくなるんです。

為末大(元陸上競技選手)

無理をしなくても、街の"空気"は自然と変わる。

 さっきも自転車に乗っている人やランニングしている人を見ましたが、日本の街の"空気"もだいぶ変わってきましたよね。皇居のまわりだって、昔は走っている人なんてほとんどいなかったし。きっと無理をしなくても、自然とアスリート性を重視する方向に変わっていく気はするんですけど......。

 スポーツの語源は「デポルターレ」というラテン語で、気晴らしをするとか、楽しむとか遊ぶという意味。当時のデポルターレは、人間を開発するという意味合いが強くて、かつ遊びの領域、たとえばアート的なものも含まれていました。

 そう考えると、六本木にはいろんな要素がすでにありますから、あとは鉄棒さえあれば......(笑)。他にも、歩いている自分の姿が電光掲示板に写って骨だけ透けて見えるとか、急にドアがすごく重くなるとか、身体の不思議さにハッと気づける仕掛けがあったら面白い。

テクノロジーの進化が、天才アスリートを生む?

 未来のアスリートの世界を考えたとき、一番嫌なのは、遺伝子をいじくるドーピングが進むことです。30年後の100mの決勝を見たら、みんなボルトに顔が似ているみたいな。やっぱり偶然と個人の努力が感動とすごく関係している気がするので、それを奪わないでほしい。

 あとは、素人だけどすごい競技者が増えるでしょう。天才アスリートって、違いに気づいて、どうすれば問題が解決できるかが導き出せる人。普通の人は、それがわからないから苦労するんですが、テクノロジーが進化すると、ここがポイントですよと教えてくれる。追いつきはしないけれど、かなりレベルは上がるんじゃないかと思います。

「新しきこと」「珍しきこと」「面白きこと」。

『マインド・タイム』という本によれば、人間が意思決定をするのは動作をはじめる0.2秒前、でも脳内では、その0.35秒前に準備電位という信号が出ているそうです。つまり、自分が手を曲げようと思う前に曲がることが決定している。やっぱり、人間の本当のすごさは、論理的な判断よりも無意識の世界にある。ある意味、近代的な知性とは違う世界のほうに、人間らしさが宿っていると感じます。

マインド・タイム 脳と意識の時間(岩波書店)

アメリカの生理学者、ベンジャミン・リベットの著作。40年におよぶ研究をもとに、自由意志、心脳問題、無意識と意識など、人間の脳や意識をめぐるあらゆる仮説を論評している。

 だからこそ、僕は人間を理解したいんです。具体的には、デポルターレの領域とテクノロジーの領域が合わさったことをしたいっていうのが、僕の今のモチベーション。世阿弥が『風姿花伝』の中で、人を感動させる3つの要素は「新しきこと」「珍しきこと」「面白きこと」だと言っていますが、そういう活動がテーマ。今回のアスリート展は、すごくそれにはまっていて。

 人間らしさとテクノロジーって、全然違う未来として語られることが多いじゃないですか。かたや畑でオーガニックな野菜をつくって、かたや全部機械的になって、みたいな。でも、本当はもっとそれらが融合した「ほどよい未来」があるんじゃないかなあって思うんです。

前編はこちら

取材を終えて......
「遠くからぼんやり見たり、力を調整したり。デザインの世界の人たちもきっと、似たようなことをやっているんじゃないかな」。アスリート展の展示を見ながら、そう話してくれた為末さん。みなさんもぜひ、自分の中にある「アスリート性」を感じてみてください。(edit_kentaro inoue)

為末大

為末大 / 元陸上競技選手
為末大 / 元陸上競技選手

1978年広島県生まれ。スプリント種目の世界大会で日本人として初のメダル獲得者。3度のオリンピックに出場。男子400メートルハードルの日本記録保持者(2017年4月現在)。現在は、スポーツに関する事業を請け負う株式会社侍を経営するほか、一般社団法人アスリートソサエティの代表理事を務める。主な著作に『走る哲学』『諦める力』など。

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