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INTERVIEW

71 南條史生 (森美術館館長)

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  • NO71 南條史生 『美術館が未来の街にできること』【後編】
       
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update_2016.09.14 photo_tsukao / text_kentaro inoue

長年にわたり、大型のパブリックアート計画、コーポレートアート計画のディレクションを手がけ、現在もさまざまなアートイベントや芸術祭でキュレーターやディレクターを務める、森美術館館長の南條史生さん。前編では、六本木アートナイトをはじめ森美術館の取り組みを中心に、後編では、地方の芸術祭や未来の美術館についてもうかがいました。

前編はこちら

芸術祭と美術館の一番の違いとは?

 最近では、各地で「芸術祭」と呼ばれるアートフェスティバルがいくつも開かれていますが、美術館との大きな違いは何だと思いますか? それは展示スペース。美術館って白くて四角い箱だから、おおよそのものは持ち込めるし、無機質だから何でもはまって見える(笑)。でも地方の芸術祭は、そういう場所がほとんどない状態でスタートします。

 そうするとアートをどこに置けばいいのかという、たいへんな創造力やイマジネーションを発揮して、全体をデザインする必要があります。まさに、日常生活の中にアートを挿入していこうという試み。そこが美術館とは一番違うところで、一番面白いところでしょう。ここまでの「アートを街に挿入する」という話ともつながっているのです。

「KENPOKU ART 2016」は、インパクト、テクノロジー、コミュニティ。

 たとえば、今、僕が総合ディレクターをしている「KENPOKU ART 2016 茨城県北芸術祭」は、だいたい3つのタイプの作品から成り立っています。ひとつは自然の中に置かれてインパクトのあるもの、もうひとつはテクノロジーを使った新しいアート、最後がコミュニティとコラボするタイプのアート。

KENPOKU ART 2016 茨城県北芸術祭

国内の芸術祭としては最大級となる広大なエリアの中に、チーム ラボ、落合陽一氏など国内外80名以上の参加作家が、百数十の作品を展開。9月17日(土)〜11月20日(日)まで、茨城県北地域の6市町を舞台に開催される。

 スケールが大きいものでいうと、妹島和世さんがデザイン監修した日立の駅。線路の上に300メートルくらいのガラスの通路が走っていて、端にはガラス張りの展望台があって下に海が見える。その通路の壁面に、ダニエル・ビュレンがカラーシートを貼っていて、すごいインパクトです。他にも、チェ・ジョンファが375メートルある吊り橋からテープを下げたり、イリヤ&エミリア・カバコフのペインティングが海岸に突き刺さっていたりと、ダイナミックな作品がたくさん。

 テクノロジー系でいえば、やくしまるえつこさんが、「シネココッカス」という藻の遺伝子配列を使って作曲した芸術祭のテーマソング。その曲をもう一度藻の遺伝子の中に戻して、つくった曲が永久に受け継がれていく、というバイオの最先端技術をアートにしています。

 コミュニティ系では、力石咲さんというアーティストが、常陸多賀駅前の商店街にあるものを、2ヵ月かけてニットでくるんじゃうとか。街なかに突然茶の間をつくってみんなを招待する、イベント的な作品も登場します。

サイエンスは、最終的には人間の問題に行き着く。

 ちなみに個人的に今、興味があるのはサイエンスと哲学。僕、あんまり細かいことは覚えてなくて、大筋の話しか理解できないから哲学に向いているんですよ(笑)。哲学は抽象だから。

 サイエンスの中で、一番面白いジャンルはやっぱりAIとバイオテクノロジー、なぜかというと人間の未来に大きな影響を与えるから。2035〜2040年には、「シンギュラリティ(技術的特異点)」といって、AIが人間社会をテイクオーバーするといわれています。そのときに問題になるのは、哲学というか、倫理ですね。

 たとえば、もしAIに、環境に悪いものを排除しろって命題を与えたら、人間は抹殺されるかもしれない。あるいは、コンピューター制御している車が事故の瞬間に、年寄りが3人乗っている車と、若者がひとりだけ乗っている車があって、絶対にどちらかとぶつかるっていう状態になったとき、どっちを選ぶか。これって、誰も解答が出せないでしょう? 最終的には哲学の問題、人間がどのように物事を考えていくのか、何を大事とするのかにつながってくるんですよね。

南條史生(森美術館館長)

バイオもまた、人間の未来とつながっている。

 森美術館で開催されている「宇宙と芸術展」を観るとわかりますが、NASAは火星につくる住居のコンペをしているし、ヴァージンアトランティック航空は、数年以内に2,000万円で簡単な宇宙旅行を実現すると言っていて、すでに600人以上が申し込んでいます。

宇宙と芸術展:かぐや姫、ダ・ヴィンチ、チームラボ

日本初公開となるダ・ヴィンチの天文学手稿ほか、隕石や化石、歴史的な天文学資料に曼荼羅、宇宙開発の最前線に至るまで、ジャンルを超えた出展物約200点を一挙公開。チームラボによる新作インスタレーションも。2017年1月9日(月・祝)まで、森美術館で開催中。
チームラボ|《追われるカラス、追うカラスも追われるカラス、そして衝突して咲いていく - Light in Space》|2016年|インタラクティブ・デジタル・インスタレーション|4分20秒|サウンド:高橋英明

 ところで、火星に行くためには2年かかって、その間放射線を浴び続けます。つまり、人間の体を改良しないと長期間の宇宙旅行には耐えられません。そこで、放射能を浴びても死なないクマムシの遺伝子を入れればいいんじゃないか、なんて研究をしている人もいる。バイオテクノロジーもまた、宇宙をはじめいろんな人間の未来とつながっているんです。

未来のミュージアムのカタチとは?

 最後に、もうひとつ未来の話を。僕は、未来のミュージアムは、いくつかのタイプに分かれていくんじゃないかと考えています。ひとつは、これまでの美術館と同じように、新しいことが実験できる「ラボ」としての役割を持ったもの。もうひとつは、直島のベネッセの美術館のように、観光と結びついて特殊な場所につくられたもの。

 街と一体化するケースもありうるかもしれません。青森の十和田市現代美術館は、四角い箱を廊下でつないだような構造をしていて、もし街の中の空き地に四角い箱を建てていけば、街の中にどんどん美術館が増えていく。小さなギャラリーに分解されて、完全に街とつながっていく、そんな美術館だって考えられます。

 それから、エンタテインメント型のテーマパーク。たとえばチームラボが、ひとつのテントの中に30点の作品を並べたら、これはディズニーランドと同じようなテーマパークといえるでしょう。でも彼らが、「俺たちはアーティストだ」「これはアートだ」って言えば、それは美術館になります。

 一見さんお断り、特定の人だけを対象にした美術館も出てくるかもしれない。愛媛県の豊島(とよしま)という小さな無人島には、ゲルハルト・リヒターという作家の作品を一点だけ展示した建物があって、みんなわざわざボートに乗って観に行っていますから。

アートではなく体験を求めて、人は美術館に足を運ぶ。

 そういえば、知り合いのデザイナーが、「日本には"包む"伝統があるから、贈り物を包むビジネスをはじめる」と言って、ある日突然パリに行ってしまいました。僕は「フランス人はそんなことにお金を使わないよ」と言ったのですが......。しばらくして店を訪ねてみると、小さいけれど中は総桧張りで、床の間には花があって、着物のスタッフが抹茶を立ててくれました。

 そして2年後、お客なんてひとりもいないのに、まだやっている。聞けば、店ができるや、名だたるブランドの企画担当者が飛んできて、今は10社のコンサルタントをしているといいます。そう、今やブランドは、ただ商品を売っているだけではダメで、商品を買うまで、買ってからのプロセスをどう体験させるかが重要。そこで、彼にアドバイスを求めにきているのです。

 先ほど登場した直島にしても、アートだけでなく、自然があって海があって、名だたる建築家のつくった美術館があって、変わったアート体験ができる。夜はバーベキューをやって、いいホテルに泊まって帰ってくる、という一連の体験にお金を払っているわけでしょう。

 アートが求められる時代というけれど、人はアートだけを求めているんじゃなくて、他では得られない体験を求めています。アートはそうした欲求に対する、もっとも有効なプラットフォームを提供しているんでしょうね。

前編はこちら

取材を終えて......
南條さんが、宇宙飛行士の方から聞いたという言葉が印象的でした。「(我々の世代じゃないかもしれないけど)絶対にいつか地球に住めなくなるときがくる。そのときの準備をしているつもりです」。どんな準備が進んでいるのかは、ぜひ「宇宙と芸術展」で。(editor_kentaro inoue)

南條史生

南條史生 / 森美術館館長
南條史生 / 森美術館館長

森美術館館長。1949年東京生まれ。1972年慶應義塾大学経済学部、1976年文学部哲学科美学美術史学専攻卒業。国際交流基金、森美術館副館長などを経て2006年11月より現職。1997年ヴェネチア・ビエンナーレ日本館コミッショナー、1998年台北ビエンナーレ コミッショナー、ターナー賞(英国)審査委員、2000年シドニー・ビエンナーレ国際選考委員、ハノーバー国際博覧会日本館展示専門家、2001年横浜トリエンナーレ2001アーティスティック・ディレクター、2002年サンパウロ・ビエンナーレ東京部門キュレーター、2005年ヴェネチア・ビエンナーレ金獅子賞国別展示審査員、2006年及び2008年シンガポールビエンナーレ アーティスティック・ディレクター等を歴任。2007年外務大臣表彰受賞、2015年フランス「芸術文化勲章オフィシエ」受章。近著に『疾走するアジア』(美術年鑑社、2010年)、『アートを生きる』(角川書店、2012年)がある。

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