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INTERVIEW
64
服部滋樹graf代表 Shigeki Hattori / President of graf
Shigeki Hattori / President of graf

『生きる活力を生み出す、僕らの未来の生活って?』

渋谷や青山で六本木未来会議、無人販売所で気持ちの交換を。

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  • NO64 服部滋樹 『生きる活力を生み出す、僕らの未来の生活って?』
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update_2016.02.03 photo_tsukao / text_kentaro inoue

建築やインテリアデザイン、ブランディング、さらに地域再生まで、デザインの枠にとらわれない活動を続ける、graf代表の服部滋樹さん。一昨年「Tokyo Midtown DESIGN TOUCH 2014」で行われた、森の学校 by 六本木未来会議では「思考」の授業を担当してくれたことでもおなじみ。そんな服部さんに語ってもらうテーマは「六本木×未来×生活」。暮らしではなく生活、というのがポイントです。

五感を震わせるデザインやアートが、きっかけになる。

 生活というのは、読んで字のごとく「生きる活力」と書くわけですよ。最近、入院をしたから余計にそんなことを考えたんですけど、テクノロジーもそうだし、医療だって、すべては生きる活力を生み出すためにあるべき。でも、たとえば病院は、今現在の処置をすることに特化しているから、未来があんまり見えてこない。もし希望が持てる病院づくりをしようと思ったら、たぶん機能性だけで構成された、ああいうものにはならないと思うし。

 かつては、文化や経済などすべてのものが生活の中に含まれていて、それらが人に生きる活力を与えていました。でも20世紀に、機能性や効率性を重視するあまり、アウトサイドに出ていってしまった。生活を正しい形に整頓していくためには、それらを元に戻してあげること、デザインとかアートの役割もそこにあるんだろうなと思っています。

 なぜなら活力を生み出すためには、やっぱり五感を震わせる必要があって、それができるのがデザインとかアートだから。視覚や触覚や味覚といった五感を駆使することで、何かに気づいたり、アイデアが浮かんだり、「あっ、こういうことだったら私にもできるかも」と感じて、少しだけステップアップしようと思えたり。そういうきっかけさえ与えてあげられれば、人の活力は満たされる。生活って、本当はそういうものだったはずなんですよ。

森の学校

森の学校

六本木未来会議アイデア実現プロジェクト#04として「Tokyo Midtown DESIGN TOUCH」期間中に開催。服部氏は2014年に登場、「伝統工芸をデザインすれば○○になる」をディスカッションする「Q&A&Q」を担当。写真の黒板と本棚も、grafによるデザイン。

スタートラインに戻って、改めて生活をつくっていく時代。

 たとえば、道具を使いこなせる能力も生きる活力の第一歩でしょう。僕らのじいちゃんとかばあちゃんたちは、ひとつのものを多様に使いこなしていたじゃないですか? そういうアイデアを持って生活することができていた。パスタを食べようとするとき、僕らはまず「パスタパン買わなあかんわ」と思っちゃう。本当は鍋と水さえあれば湯がけるはずなのに......。

 どんな道具でもいいんだと気づけないこと自体、一歩出遅れている。機能に特化していて、細分化されすぎた道具で生活をつくってしまったがゆえに、アイデアを生み出せなくなっちゃった。そんな出遅れた状態からスタートラインに戻して改めて生活をつくっていかないといけない、それが今だと思うんです。

 これからはテクノロジーやサイエンスといった分野でも、五感に響くアウトプットが求められる時代になるでしょう。ただ、テクノロジーやサイエンスは専門性の高い分野だから、理解されるまでがなかなか難しい。専門性の垣根を越えるためにはデザインの力で噛み砕いてあげること、そう、デザイン的トランスレーション(翻訳)が必要だと思うんですよね。

アイデアは"不便なテクノロジー"から生まれる?

 みんながアイデアを生み出せるようになるには、どうしたらいいか。それは簡単で、不便にすればいいんですよ。僕らはデジタルの時代になって便利になったと感じているけれど、デジタルが不便だったら、それを使いこなす能力自体は高まるし、アイデアも湧くと思うんです。テクノロジーは何かを便利にさせてくれるもの、でも、それを逆転させるべきときかもしれない。

 バーチャルフードって知ってます? バーチャルグラスをかけて、プレーンなクッキーを見る。すると、チョコレートクッキーに見えて、それでカロリーコントロールするんです。視覚情報を変えるだけで、"豊か度"は上がっているのに、体にはプレーンのまま入っていく。これってだまされてるよね? しかも、わざわざ眼鏡をかけるという不便さもある。そういう逆転がどんどん起こっていくし、不便なテクノロジーから発想が生まれていくような気がして。

 テクノロジーが脳をハッキングしながら、体をよくしていく。それはデジタルじゃなくてアナログでもできると思う。たとえば、これ押したら電気がつくんじゃないかと思ってスイッチを入れたら、別の反応が起きたり。ブレインハッキング、フィジカルハッキング......六本木が最先端の街だとするなら、「みんなだまされてない?」っていうメッセージを問いかけていけたら面白い。

服部滋樹(graf代表)

時間が経過するだけで日常が変化する街。

リストランテ・ダ・ニーノ

乃木坂駅近く、外苑東通りから少し入ったところにあるシチリア料理店。オーナーシェフは「シチリア料理の大使」。色鮮やかな調度品に囲まれた店内で、新鮮な魚介を使った料理や、200種類以上のシチリアワインが楽しめる。

 僕はずっと大阪ですけど、東京に来たときには、昔好きだった子と一緒にミッドタウンの先にあるレストラン「ダ・ニーノ」なんかによく行ってました。(彼女とは)結婚すると思ってたんだけどなあ(笑)。店の前でタバコを吸ってたら、アートディレクターで俳優の秋山道男さんに会って、「服部、タバコはそんなふうにスパスバ吸うもんじゃない。空気に色をつけてくれてるタバコをそうやって吸うのは、せっかちな男。かっこ悪い」と怒られて。時間を吸っていることを考えろって言うんですね。「そうかあ、かっこいいー」と思って、これでオレはたぶん一生タバコやめへんな、って。今めっちゃ思い出してきました(笑)。

 六本木ヒルズができたばかりの頃は、なんやねん六本木、と思ってたけど、最近はとてもいいなあと感じるんです。東京ミッドタウンにしても、高層建築のうしろには芝生の森があって、平日と週末の顔がクルッと変わる。場所は一緒なのに求められる機能や生活が違う、時間が経過するだけで日常が変化する街って、なんかいい。

 この間は、東京ミッドタウンで、中川政七商店の300周年のイベント「大日本市博覧会」もやらせてもらいました。中川政七商店は、水野学くんと中川淳くんと一緒に立ち上げから関わっているブランドで、「暮らしの道具をつくる」というのがコンセプト。でも、暮らし系って、最近なんか多すぎて......やっぱり「生活」という言葉のほうがピンとくるよね。

大日本市博覧会

大日本市博覧会

全国の産地と中川政七商店が手を組み、日本の工芸を元気にしていくプロジェクト。2016年1月の東京ミッドタウンをはじめ全国5都市を巡回し、会期中はトークイベント、ワークショップなども。grafは空間デザインを担当。

ヒルズやミッドタウンで、じいちゃんがばあちゃんをまた愛しだす!?

 最近、日本語ってすごい、"漢字2文字"で全部表せてるじゃん、って思うんです。たとえば、よく「ブランドはストーリーだ」って言いますよね? ストーリーを漢字2文字にすると「物語」、つまり"語れる物づくり"ができているか、それがブランドなんです。日本って、ものはしっかりしているのに語りきれていないからブランドが成立しない。いいものづくりができているんだったら、それが生まれるプロセスを伝えればいいだけ、語れることっていっぱいあるんですよ。

「生活」という言葉も、まさにそう。若い人たちはあんまり実感が湧かないかもしれないけど、日本をつくってきたじいちゃんばあちゃんたちは、今まさに生きる活力を必要としていて、そういう人たちに対してどういうふうに場をつくってあげられるか。スマホひとつとっても、ただ文字がでかい、とかじゃなくて、彼らにとって機能するテクノロジーは何か、もっと考えていくべき。

 六本木って、そういう「生きる活力を生み出す場」になれる可能性があると思うんです。デザインもあればアートもあるし、この街で「生活」するとしたら、きっと生きる活力をあらゆる感覚を使って見つけ出していく作業が必要だろうし。それがもっともっと濃くなったら、ヒルズやミッドタウンに来ると、じいちゃんの痴呆症が治って、ばあちゃんのことをまた愛しだすとか(笑)。もちろん街は若い人たちのためにつくっていくべきだけど、じいちゃんばあちゃん世代を揺さぶれたら、明るい形に変わるんちゃうかな。

魅力的なのは、たんなるハードウェアじゃない場所。

 面白いなと思う街は、鹿児島ですね。人口と年齢のバランスがすごくいいし、街のつくりもいい。「結」とか「講」っていう昔ながらの人のつながりがあって、「20代のやつが、めっちゃ面白いこと言うとる」「あいつらなんとかしてやりたいんですよ、先輩」となったら、上の人たちがお金を引っ張ってきてくれたり、行政も動き出したり。クリエイティブなジャンルに限らず、若い人たちがやりたいことを支援していく仕組みが、コミュニティの中にちゃんと残っているんです。

 鹿児島出身のランドスケーププロダクツの中原慎一郎くんがいつもよくしてくれるので、空港に停めてある彼の車を借りて市内まで行って、ゲストハウスに泊めてもらう。すると、中原くん本人はいないのにいろんな人がやって来て、「あの店行ったらいいよ」と教えてくれて、飲みに行くとまた別の人とつながって、じゃあ2軒目に......(笑)。たんなるハードウェアじゃなくて中身があるというか、そういうネットワークが街を面白くするんですね。

服部滋樹(graf代表)

ルーツは、万博記念公園の「みんぱく」に。

 個人的には、去年までちょっと地域のことをやりすぎたと感じていて、今年は自分のローカルに帰って、ちゃんとものをつくろうと思ってます。僕、生まれたのも大阪万博の年だし、生まれた場所も万博記念公園のそばなんです。0歳だったから万博のことは何も覚えてないし、気づいたときには"未来の残骸"しか残ってなかった。それを見ながら生きてきたわけです。

 でも、その残骸の中にも優れたものはいっぱいあって、たとえば僕が毎日のように通ってた「みんぱく(国立民族学博物館)」、あそこは絶対行ったほうがいい! ミュージシャンのUAなんて、小学校のときに行って、おしっこ漏らしそうになるくらい衝撃やったって言ってました。他にも、後藤繁雄さんもそうだし、ヤノベケンジさんもそうだし、名和晃平くん、原田祐馬くん......万博周辺にはそういう人たちがいっぱい暮らしてた。たぶん、あのあたりの教育思想もおかしかったんだと思うけど、絶対、何かあると思う(笑)。

国立民族学博物館

国立民族学博物館

1977年、大阪府吹田市の万博記念公園内に開館。民族学・文化人類学に関する調査・研究とともに、世界の諸民族資料の収集や公開を行う。世界を9つに分けた地域展示ほか、音楽・言語などの展示、また年に数回特別展なども開催。建物の設計は黒川紀章氏によるもの。

 とにかく、地球上の民族にまつわる情報が集約されているわけですよ。原始時代から受け継がれている風習とか、色の使い方とか薬草の配合方法とか、踊りや道具まで、すべてのものが揃ってる。その歴史が民族の歴史であって、言ってみれば地球を見ているように感じるわけです。これ、びっくりするよ? 2000〜3000年レベルの話じゃないから。

もっともっと先を見て、ものをつくるのが面白い。

 やっぱり、何でも100年以上の単位で見ていかないといけないと思うんです。僕、いろんな地域に行くからよくわかるんですけど、伝統工芸にしても産業にしても、やっぱり100年、3代くらい前の昔話しか語られない。でも、1000年くらいさかのぼってルーツが何だかわかれば、土産物なんてすぐにできちゃうし、産業だって復興できるんですよ。

 今、大阪でニュータウンの再生に関わっていて、一度つくられた街を分解して必要なハードウェアに変換するという取り組みをしています。ニュータウンって50年くらいの視点でしかつくられていないから、やっぱり劣化しちゃってる。もっともっと先を見てものをつくる、それがけっこう面白いなと思ってて。

 さっき不便な道具の話をしましたけど、便利なものを持ちすぎたからこそ、人は劣化してしまったわけでしょう。だったら、もっと人を強くする"アプリケーション"を生み出していくべきなんじゃないか。2011年に、grafでTROPEというシリーズをつくったんですけど、あれなんかはまさにそう。今年はそれもバージョンアップしたいし、あらゆるところで、不便なところから気づきを与えていくようなきっかけをつくりたいと思ってます。

TROPE

TROPE

使い手が工夫とひと手間を加えることで成立する、grafが考える新しい「道具」のシリーズ。天板やデスク脚、椅子、フック、はしご、ペンキなど、用途の決まっていない部品を組み合わせ、使いこなしながら新しい感覚を育む。

六本木に無人販売所、つくらへん?

 森の学校のときにつくった黒板と本棚が好評だった? それなら、六本木のエリア外にももっと出て行ったらいいんじゃない? 移動式にして、たとえば渋谷で六本木未来会議とか、青山で六本木未来会議とか。あの黒板とか本棚は、六本木が考える未来像を学ぶためにある、あれこそがハードウェア。いろんなところに持って行くことで、六本木の未来思想が普及していく......っていうのは、どう?

 あとは、無人販売所つくらへん? 学生たちと今、田舎に行くと必ずある無人販売所のリサーチをしてるんですよ。あれって無人なのに、お金もものもなくならない。つまり、お金とものという経済の交換と同時に、気持ちの交換もちゃんとできているわけ。もし六本木がいい人たちで構成された街であれば、トラブルは起こらないはず。その実験のためにも、まずは無人販売所をつくってみる。それやろうや!

 この街にいるじいちゃんがスケッチした絵を売っててもいいし、作物でも主婦のつくった手芸品でもいい。お金と交換するのがベストだと思うけど、気持ちの交換ができるような。北海道から沖縄まで日本全国の無人販売所を集めてきて、何を交換するべきなのかを問う展覧会なんかもいいよね。それって、まさにデザインのプロセスだと思うし。面白い? じゃあ、ちょっと提案しといて(笑)。

取材を終えて......
メイン写真の撮影は「デジタルメディアと日本のグラフィックデザイン」準備中の、東京ミッドタウン・デザインハブで。古いMacを見ながら「これを70万円くらいで買って、grafがはじまったんです。懐かしいなー。おかげで便利になったけど、トラップでもあって、僕らはここから這い上がっていかないといけないんだよね」と服部さん。ちなみに、展示は2016年2月14日(日)まで、そちらもぜひどうぞ。
http://designhub.jp/exhibitions/1891/
(edit_kentaro inoue)

服部滋樹

服部滋樹 / graf代表
服部滋樹 / graf代表

1970年生まれ、大阪府出身。graf代表、クリエイティブディレクター、デザイナー。美大で彫刻を学んだ後、インテリアショップ、デザイン会社勤務を経て、1998年にインテリアショップで出会った友人たちとgrafを立ち上げる。建築、インテリアなどに関わるデザインや、ブランディングディレクションなどを手がけ、近年では地域再生などの社会活動にもその能力を発揮している。京都造形芸術大学芸術学部情報デザイン学科教授。

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