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INTERVIEW
57
永井一史アートディレクター Kazufumi Nagai / Art Director
Kazufumi Nagai / Art Director

『六本木をグッドデザインな街に変えていくために』

デザイン特区、シェアオフィス、無意味な空間……クリエイティブな人と産業を集積させる

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  • NO57 永井一史 『六本木をグッドデザインな街に変えていくために』
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update_2015.08.05 photo_hiroshi kiyonaga / text_kentaro inoue

HAKUHODO DESIGNの代表も務め、サントリー「伊右衛門」やトヨタ「LEXUS」、パレスホテルなど、数々の広告やブランディングを手がける永井一史さん。2015年から、グッドデザイン賞の審査委員長も務める永井さんに、六本木をよいデザインのあふれる街にしていくアイデアをうかがいました。まずは、今年のグッドデザイン賞について。そこから話は、これからデザインが担う役割へと広がっていきます。

グッドデザイン賞の審査委員長を引き受けた理由。

 正直、自分がグッドデザイン賞の審査委員長に指名されるとは、まったく思ってなかったんです。というのも、グッドデザイン賞はプロダクトのイメージが強く、前委員長の深澤直人さんをはじめ、今まで審査委員長を務めていた方々は、プロダクトデザイナーが中心でした。デザインの中でも、コミュニケーションとかブランディングといった領域の仕事を中心にしてきた僕が受けてもいいのだろうか、と少し悩みました。

 グッドデザイン賞は、戦後、まだ日本の製品がデザイン的に洗練されていなくて、海外のコピー商品も多かった時代に、それらを正していこうという通産省の施策としてはじまりました。そこから高度経済成長期には、新しい技術に形を与えて生活の質を上げるという、日本が「ものづくり大国」と呼ばれるようになっていく大きな原動力になっていった。審美性が価値を生んでいく時代だったと思います。

 でも今は、もちろんモノ自体のデザインも重要ですが、既存のやり方ではうまくいかない問題を解決したり、発想を広げたり、何かイノベーションをもたらすというところにこそ、デザインの力が求められていると感じます。僕が審査委員長をすることで、デザインというものを、もう少し広い領域でとらえてもらうチャンスかもしれないと思って引き受けることを決めたのです。

グッドデザイン賞

グッドデザイン賞

公益財団法人日本デザイン振興会が主催する「総合的なデザインの推奨制度」。2015年度グッドデザイン賞の受賞結果は9月29日(火)に発表予定。また、2015年10月30日(金)~11月4日(水)まで、東京ミッドタウンを会場に「グッドデザインエキシビション2015(G展)」を開催。最新のグッドデザイン賞受賞デザインなど約1000件以上が出展されるほか、さまざまなプログラムを展開する。

カテゴリを横断する新たな視点「フォーカス・イシュー」とは?

 今年からグッドデザイン賞に、「フォーカス・イシュー」を設定しました。「フォーカス・イシュー」とは「来たる社会において、デザインがとくに求められると考えられる領域」のこと。もっとわかりやすくいえば、縦割りだった各カテゴリを、横軸でも見渡そうという取り組みです。

 たとえば、SNSとカフェは、これまでのグッドデザイン賞では別々のカテゴリになっていました。でも、コミュニティを生み出すという視点から見れば同じくくりと考えることもできるでしょう。そこで、「地域社会・ローカリティ」「社会基盤・モビリティ」「地球環境・エネルギー」など、12のテーマを設け、フォーカス・イシュー・ディレクターという特別チームが、カテゴリを横断して応募対象を観察します。

 これまでは、あくまでグッドデザイン賞を受賞した対象を通して、こういう価値がある、こんな背景があるというふうに語ることが主体でしたが、もう一歩踏み込んで、未来に向けたデザインの可能性などについても議論する。その内容は、もちろん特別賞審査の参考にもされますし、受賞展「グッドデザインエキシビション2015(G展)」の中で「提言」として発信されます。つまり「フォーカス・イシュー」は、新しい審査基準であり、新しい情報発信の方法でもあるわけです。

デザインの目的は変わらないけれど、守備範囲が広がっている。

 究極的にいえば、デザインが目指しているのは、みんなが幸せに暮らすこと。その目的は、かつてのアーツ・アンド・クラフツ運動の時代から、それほど変わっていません。言ってみれば、デザインの「守備範囲が広がっている」という感じです。

 そのひとつの例が、グッドデザイン賞でいえば、2012年に深澤直人さんが委員長のときに取り入れた「インタラクション」と「仕組み」による審査。「仕組み」というのは、システムとかプラットフォームと言い換えてもよくて、この年には「QRコード」がグッドデザイン賞を受賞しました。今までだったら、QRコードがグッドデザインと言われたら、正直ちょっとわからないという感じもあったでしょう。また、数年前には、糖尿病の患者さん向けの痛くない注射針が受賞したこともありましたが、これもいわゆる見た目のデザインというよりは、機能的、社会的なデザインへの評価に近いものです。

 時代に応じて、グッドデザインの意味は変わっていくし、要請される役割も変わっていく。これまでの歴史を見ても、グッドデザイン賞自体が新しいデザインの概念を開拓してきたと思うし、今回の「フォーカス・イシュー」も、その延長といっていいでしょう。

永井一史(アートディレクター)

デザイナーのパブリックイメージと、実体との間には乖離がある。

 日本は今、成長モデルから成熟モデルへ、社会構造や産業構造が大きく変化しています。これからの暮らしや社会のあり方がどういうものなのかを模索していくにあたって、デザインという考え方は欠かせません。一方で、産業構造の変化ということでいうと、IoT(Intenet of Things=モノのインターネット)とかロボティクスとか、新しい分野もどんどん生まれてくる。かつてのデザインの役割がそうであったように、新しい技術にどういう形を与えるかというのは、それはそれで重要。つまり、社会と産業の両面で、デザインが担っていく役割があると感じています。

 先日、JAGDA(日本グラフィックデザイナー協会)で、『◯◯化するデザイン』(誠文堂新光社)という本を発行しました。「グラフィックデザイン」といえば、一般的にはポスターが花形で、そういうものをつくる人たちが「グラフィックデザイナー」という印象ですが、実態としてはどんどん変わっています。亀倉雄策さんに代表される、一般的なグラフィックデザイナー像と、我々が今やっている仕事との間には、けっこう乖離がある。それを埋められないかな、という思いでつくった一冊です。

『◯◯化するデザイン』(誠文堂新光社)

『◯◯化するデザイン』(誠文堂新光社)

表現の場を拡大する現代のグラフィックデザインの世界において、各デザイナーはどのような思考プロセスを踏んでいるのか。原研哉氏、佐藤可士和氏、佐藤卓氏など、実際のプロジェクトを取り上げつつ掘り下げていく。JAGDA会報誌だが一般販売も(税込1,080円)。

「なんとなくいい形態がグッドデザイン」ではない。

 本の構成は、大きく「川上化するデザイン」「社会化するデザイン」「流動化するデザイン」の3つ。それぞれ簡単に説明すると、「川上化」というのは、デザインがただ形を決めることから、もっと上流工程の考え方とかコンセプトといった領域に入っていったこと。「社会化」は、教育や地域、あるいはコミュニティのデザインなど、今までデザインが活かされていなかった場所にこそ、これからのデザインの役割があるんじゃないかということ。そして「流動化」は、グラフィックデザイナーの仕事が、ウェブやファッション、空間など他のジャンルに広がっているということ。

 いずれにせよ、みんなが思っている「ザ・デザイン」みたいなところから、どんどん裾野は広がって、デザイン自身がそのフィールドを開拓していくっていうのが、これからの流れです。「なんとなくいい形態がグッドデザイン」ではなくて、「六本木のこのコミュニティってグッドデザインだよね」という方向に、意味が変わってきていると思います。

六本木の問題は「中間を埋めるものがない」こと。

 さて、「六本木をグッドデザインな街にしていくには」ということですが、僕は六本木に対して、ずっとある問題意識を持っています。それは「中間を埋めるものがない」ということ。

 六本木ヒルズがあって、東京ミッドタウンがあって、国立新美術館があって、デザイン関連ということでいうとAXISもあるし、青山ブックセンターもある......。それぞれ少しずつ距離が離れているってこともあるけれど、僕自身の行動を考えても、AXISに行ったらAXISだけ、東京ミッドタウンに行ったらミッドタウンだけで、そのまま帰るケースが多い。せっかくデザインを発信していくポテンシャルはあるのに、それがつながっていないのは大きな問題、逆にいえば、その間が埋められると、エリアとしてもっと魅力的になれると思います。

 中間を埋めて、街全体をグッドデザインであふれさせるには、たとえばステキなお店をつくるとか、いろいろなやり方があるはず。でも一番重要なのは、デザイナーをはじめとするクリエイティブな人たちやクリエイティブな産業を、どれだけ集積させられるかということでしょう。

永井一史(アートディレクター)

クリエイターが楽しめて、働けて、住める街に。

 今はまだ、事務所を構えるとなったら、六本木より青山や神宮前を選ぶデザイナーのほうが多いですよね。それは、街のイメージがいいということもありますが、働くのに都合のいい環境やインフラが整っているというのが大きい。居心地のいいカフェがあるというのもひとつだし、人が人を呼ぶじゃないけれど、刺激を受けられるような同じ仕事をしている人たちがまわりにいる、というのもそうでしょう。

 最近、東京都が海外の企業を誘致する「アジアヘッドクォーター特区」を推進していますが、同じように「デザイン特区」をつくるといった、行政的な取り組みがあってもいいのかもしれません。六本木という場所をよりクリエイティブな街にしていくんだ、という対外的な発信をきちんとしていく。たとえば、デザイナー限定のシェアオフィスを建てたり、クリエイターが楽しめて、働けて、住める街をつくることで、結果としてクリエイティブな人や産業が集まっていくイメージです。

 今回取材を受けている、ここミッドタウン・タワー5階の「デザインハブ」には、グッドデザイン賞の運営をしている「日本デザイン振興会(JDP)」や、「日本グラフィックデザイナー協会(JAGDA)」ほか、デザイン系の組織が集積しています。それによって、やっぱり自然と人や情報も集まるようになった、まさにそのいい例ですね。

東京ミッドタウン・デザインハブ

東京ミッドタウン・デザインハブ

2007年4月に開設したデザインネットワークの拠点。本文中の2機関ほか「武蔵野美術大学 デザイン・ラウンジ」「インターナショナル・デザイン・リエゾンセンター」で構成。デザインのプロモーション・職能・研究教育という異なる役割を担う機関が連携し、展覧会やセミナーの開催、出版などの情報発信を行っている。

「THINK ZONE」のような、広場的な中間領域をつくる。

 もともと僕は赤坂生まれなので、六本木は心理的にもとても近い街。みなさん六本木というと、夜とか歓楽街のイメージを持っているかもしれませんが、僕はあまりお酒を飲まないこともあって、六本木=文化発信エリアというイメージが強いんです。高校大学時代にも、青山ブックセンターに行ったり、リビング・モティーフに行ったり。今はなくなってしまいましたが、WAVEでCDを探して、その下のシネ・ヴィヴァンで映画を観て。当時、あんなに研ぎ澄まされた場所はありませんでした。

 他に、印象的だったのが、六本木ヒルズができる少し前にあった「ROPPONGI THINK ZONE」。仕事帰りお茶を飲んだり、売っている本を眺めたり。何か具体的なアートワークがあるわけではないけれど、あの空間に寄るだけですごく刺激を受けたし、六本木の未来を感じさせてくれた。WAVEやTHINK ZONEがなくなって、六本木ヒルズや東京ミッドタウンができた。たしかに、今のデザインとアートの街につながる原型があったのかな、という気もします。

ROPPONGI THINK ZONE

ROPPONGI THINK ZONE

2001年、六本木ヒルズ開発のプレ・プロジェクトとして、六本木通り沿いにオープンしたアートスペース(現在は閉館)。インテリアデザインは吉岡徳仁氏、アートディレクションはブルース・マウ氏が手がけ、映像や音響を交えた最先端のイベントが数多く行われた。photo:Jun Kumagai

 そういう意味では、すごく機能を持った空間というよりは、むしろ無意味な空間。ある種、広場的な中間領域があったら、六本木っぽいかもしれません。それこそ、デザイナーが自由にプレゼンテーションしたり、ワークショップを開いたり、イベントをしたりできるような。そこからきっと自然発生的に、何か面白いことも生まれるでしょう。

100年後には、世界を代表するグッドデザインな街になる!?

 先ほどから、東京で好きな街ってどこだろうって考えていて、ふと思いついたのはお茶の水。お茶の水って、大学があって、古書店街があって、それに紐づくようにリーズナブルな定食屋とか、古いカフェがある。歴史の集積がある街ですよね。同じ匂いがするのは、2年間だけ住んだことのある国立。やっぱり大学があって、古本屋があって、ムダにいいカフェがある(笑)。どちらも街全体に、醸し出す雰囲気が感じられるというか。

 そういう雰囲気は、残念ながら六本木からは感じられなくて、まだやっぱり点にすぎない。もちろん、歴史が生み出したものですから、一朝一夕にできるものではないでしょう。でも、その点と点の間を地道に埋めていけば、もしかすると100年後くらいには、世界を代表するグッドデザインな街ができあがるのかもしれません。

取材を終えて......
「デザイナーには、肩書きにも"流派"があるんです」と、永井さん。原研哉さんや佐藤卓さんのように、「グラフィックデザイナー」という肩書きで活動する人がいる一方で、永井さんは広告会社出身ということもあって「アートディレクター」という肩書きにこだわっているのだそう。いろいろなクリエイターのプロフィールを比べてみるのも、面白いかもしれません。(edit_kentaro inoue)

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