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INTERVIEW
167
真鍋大度メディアアーティスト Daito Manabe / Media Artist
Daito Manabe / Media Artist

『クリエイティビティが刺激される音楽のための箱をつくる』【後編】

自分の中に存在する音楽を、最先端技術を駆使して探究する。

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update_2025.06.04 photo_tada / text_akiko miyaura

アートとテクノロジー、サイエンス、音楽。「見る」「聴く」「感じる」といった感覚の再定義を促し、最先端の技術を用いてさまざまな分野を横断しながら、想像を超える世界を表現してきた真鍋大度さん。拡張現実(AR)を活用したオリンピックの演出から、培養された脳神経細胞を用いた人工知能(AI)プロジェクトまでを手掛け、多岐にわたって未来の表現を探究し続けている真鍋さんですが、ここ数年、自身の原点ともいえる音楽活動へとシフトし始めているそうです。その活動について、これまでの軌跡を振り返りながら、真鍋さんの“今”に迫ります。

前編はこちら

プロジェクトを少なく、チームも小さく、じっくりつくることを。

 あらためて思い返すと、ライゾマティクス設立当時からコロナ禍までは、ガムシャラに走り続けていました。例えば、2016年のリオオリンピック閉会式での「東京2020フラッグハンドオーバーセレモニー」もそうですが、プロジェクトに関わる人数が増えて、チームも大きく膨らんでいくような仕事の仕方が、コロナ禍で一度リセットされたんです。自分としても1回深呼吸できたことで、気持ちに変化が生まれたのかもしれません。

 プロジェクトの規模がどんどん大きくなってスピードアップしていくことに、あまり魅力を感じなくなったというのもありますし、単純に働き過ぎていたなと感じたんですよね。今は案件数を絞り、チームもできるだけ小さく、若手中心にして、じっくり丁寧に制作ができるようにシフトチェンジしている最中です。

「東京2020フラッグハンドオーバーセレモニー」

「東京2020フラッグハンドオーバーセレモニー」

2016年のリオデジャネイロオリンピックの閉会式で行われた、東京オリンピックに向けたセレモニー。AR技術を使って、生中継されていた現実のスタジアムの映像と、東京で実施予定の競技33種目のCGをリアルタイムで融合させるなど、真鍋さんらライゾマティクスが演出を手掛けた。写真は真鍋さんが開発したソフトウェアのスクリーンショット。

本当にやりたいと気付いた音楽。ただただ好きで、邪念はない。

 そんな状況で、本当にやりたいことに専念しようと考えたとき、自分の中に変わらず存在し続けているのが音楽でした。仕事のキャリアとして経験値を積んでいるプログラムや映像制作の仕事が中心になっている状況を変えたい想いが募り、演出として音楽に映像を付けることよりも、その音楽自体をつくることに集中したいと感じるようになったんです。今は、自分のスタジオや音楽を聞くためのスペースをつくったり、長年の友人であるLAのトラックメイカーNosaj ThingのレーベルからEPを出す準備をしたりしています。今後は、海外の音楽フェスティバルでのライブ出演にもチャレンジしたいですね。

 普段は自分のつくったプライベートスペースに知り合いを呼んで、DJをすることもあります。DJも作品づくりと同じで、曲をかける面白さと同時に、曲を探すもどかしさを感じることが多くて。「こういう曲をかけたいけど、見つからない」「それなら、つくった方が早いな」というのが、音楽制作に対する情熱の源泉かもしれません(笑)。基本的に自分が聞きたい音楽をつくりたいので、僕の曲には「みんな聞いてくれ!」というものは1曲もありません。純粋に好きでやっているので邪念がないし、音楽のため以外に音楽をつくることもない。もっといえば、伝えたいメッセージもないんです。

 一方で、僕がつくるような音楽はなかなかビジネスになりにくい実情もあるので、今はライゾマティクスのような会社ではなく、自分でつくった小さな会社で、一人で完結できることを探している感覚があります。例えば、ライブの仕事なら自分で音楽をつくって、映像も制作して、自分で発表して......と完結できる。それくらい、小さく、密度の高いものをやりたいと思っています。

 最近はAIでエージェントをつくってマネジメントなどを任せる準備をしています。毎朝1時間犬の散歩をする際に、メガネに付属したマイクに向かって、ひたすら思いついたことをしゃべるんですよ。すれ違った人が見たら、ちょっと心配になるかもしれません(笑)。普段から考えるクセはついていると思いますが、何か思いついても忘れてしまうことが意外と多いので、思いついたことをしゃべってその内容をAIに言語化してまとめてもらっています。日々続けることで、僕が考えているアイデアやインスピレーションを全部管理するエージェントに育っていく。実際にアイデアが欲しいとき、過去の蓄積データから引っ張り出して提案してもらえるのって便利なんですよね。

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テクノロジーを使うことは、ごく自然なこと。

 作品づくりではやりたいことが先にあって、それを実現するのに最適なテクノロジーを採用します。ただ、自分の中ではその過程が当たり前になりすぎているので、もはやその感覚すらありません。例えば、「鉛筆を使って文字を書いています」「調べものをするのにGoogleを使いました」ってわざわざ言わないのと同じくらい、ごく当たり前なことなんです。

 ただ、特殊なテクノロジーを使うときには、実験的な過程でアイデアやインスピレーションが湧くこともあります。ソフトバンクさんと行ったプロジェクト『Brain Processing Unit』がまさにそう。iPS細胞の技術を使って、皮膚細胞から小さい脳細胞を培養しているのですが、小豆サイズの小さな脳みそが、半年くらい育てると外的な刺激にいろいろと反応し始めるんですよ。例えば、装着したマイクから入ってきた音の周波数を分析して、電気刺激に変換して聞かせると、しばらくそれに呼応した動きをするんです。何よりこの実験は、人間と音楽の本質的な関係性に迫ることができる可能性を持っている。新しい音楽のあり方が発見できるかもしれないと期待しています。

『Brain Processing Unit』

『Brain Processing Unit』

ソフトバンク先端技術研究所が脳の機能に着目し、研究してきたiPS細胞を使ってつくる小さな人工の脳組織「脳オルガノイド(=Brain Processing Unit)」。真鍋さんや東京大学池内研究所も加わり、芸術と科学の境界を超えて脳オルガノイドの可能性を探るプロジェクト。写真は真鍋さんご提供のスクリーンショット。

 そもそも、この脳オルガノイド研究の本来の目的は再生医療技術の開発。それを音楽制作に使ってみよう、と考えることはメディアアーティストならではの考えだと思います。アートや音楽が研究に介在することで生まれる新しい発見が、医療の進歩に貢献できる可能性もあるというのが、新たな表現をつくり出すということ以外に、このプロジェクトに挑む意義だと思っています。脳オルガノイドのプロジェクトを思い付いたのが2018年で、発表できたのは2025年初頭なので、足掛け約7年。自分のスキルセットが生かせる研究分野で、win-winの協力関係を築いているからこそ実現できたプロジェクトですが、いろいろと面白い発見ができているので、時間をかけてしぶとく取り組み続けることの価値をあらためて感じています。

2、3年の間に東京で新しいムーブメントが起こる予感。

 未来のことを考えたとき、2、3年先を見据えて仕事をすることが多いですね。ライゾマティクスや僕がやっていることも、数年後にはみんなが当たり前に使えるものの、現状はまだ黎明期にある技術を見つけて、作品に落とし込むという手法がメイン。例えば、今は当たり前のように普及しているAIも、僕自身はChatGPT2の頃から使っていました。当時からOpen AIの人たちとは交流があり、「この人たちは、数年以内に世界を制するな」と感じていましたが、現実になったのが2021年頃。

 街の未来を想像すると、ここから2、3年は、東京がどんどん進化していく予感がしています。というのも、グラミー賞レベルのLAミュージシャンや、ハリウッドの映画プロデューサーたちが、どんどん日本に引っ越してきているんですよ。僕の友人だけでも5人くらい移住していますが、みんな口をそろえて言うのが安いとか快適、安全ということ以外に「東京の人がすごく優しくて、一緒にいて楽しい」ということ。アメリカで不自由なく生活できる彼らが日本に来るのは、"人"に魅力を感じているから。一流のミュージシャンたちが東京に集結することで、新しいアートや音楽ムーブメントが生まれる気がしています。

 街の発展においてあるといいのは、コミュニティミートアップや、ワークショップができる場ではないでしょうか。僕自身も音楽が最大限楽しめる場所をつくりたい。新しいアートスペースがつくられても公共性の高い場所だと、騒音の問題で自由に音を出せないので、"クリエイターが自由に表現できる場所"が、東京の街にはもっともっと必要です。

 音楽体験って、音量が少し上がるだけで全然変わるんですよ。大きな音を出すことはアーティストのエゴではなく、表現においてとても大切なこと。自由に表現できる場所が人を呼び、やがてその場所自体がブランドになって、レーベルや派生コンテンツが生まれると思うんです。本当にいいものは、5年、10年に一つくらいしか生まれない。僕自身の作品のことで言えば、これからあと一つ......いや、一つと言わず(笑)、2~3個つくれたらいいなと思っています。

取材を終えて......
世界に知られる数多のプロジェクトを手掛けてきたとは思えないほど、いたって自然体で気さくな真鍋さん。テクノロジーとの対話を重ねながら、純粋に好きな音楽を軸にした制作活動を通して、ご自身も更新し続けていく姿がとてもカッコよく、清々しく感じます。終始一貫してアウトプットの完成度にコミットする姿勢から、表現においてとても大切な原点を、あらためて胸に刻みたくなる時間となりました。何より、2、3年後の東京と真鍋さんのこれからに、心からワクワクさせられました。(text_akiko miyaura)

前編はこちら

真鍋大度

真鍋大度 / メディアアーティスト
真鍋大度 / メディアアーティスト

1976年東京生まれ。音楽家の両親のもと、音楽とプログラミングに親しんで育つ。DJやジャズバンド活動を経て、東京理科大学で学んだ際にXenakisに影響を受け、音楽生成における数学的アプローチの研究を始め、これが後の創作活動の基盤となる。

2006年にライゾマティクスを設立。演出振付家MIKIKOと共にPerfumeとELEVENPLAYのコラボレーションを通じて、テクノロジーと身体表現の融合を探求し、リオ五輪閉会式のAR演出など革新的なプロジェクトへと発展。坂本龍一、Björk、Nosaj Thing、Squarepusher、Arca等との協働も多数行い、その独創的なAudio Visualパフォーマンスは、Sonar Barcelonaをはじめとする世界各地の国際フェスティバルで発表されている。近年は神経科学者との協働を通じて、培養神経細胞を用いたバイオフィードバックシステムなど、生命と機械を融合する作品を制作。現在はStudio Daito Manabeを主宰し、アート・テクノロジー・サイエンスを横断する表現を追求している。

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