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INTERVIEW
162
佐藤允画家 Ataru Sato / Painter
Ataru Sato / Painter

『すでに存在するアートを大事にしたり、愛称をつけてみたりする』後編

表現はどこまでも自由。間違っているアートなんてない。

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  • NO162 佐藤允 『すでに存在するアートを大事にしたり、愛称をつけてみたりする』後編
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update_2024.11.06 photo_kohey kanno️ / text_noemi minami / edit_shawn woody motoyoshi

「絵を描くことは生きることそのもの」と語る、画家の佐藤允さん。緻密な描写と独特な世界観で、世界的に活躍する日本人アーティストの一人です。現在、国立新美術館で展覧会が開催されている田名網敬一さんに大きな影響を受け、京都造形芸術大学入学を決意。大学在学中から作家活動をスタートさせ、アメリカやドイツなどで開催された展覧会では作品が完売するほど人気を博しました。卒業後は「エスパス ルイ・ヴィトン 東京」にて、日本人アーティストに初めて焦点が当てられた、グループ・エキシビション「Cosmic Travelers - Toward the Unknown(コズミック・トラベラーズ - 未知への旅)」に参加。フランス、パレ・ド・トーキョーでは「Inside」(2014年)を出展するなど、国内外で注目を浴びています。そんな佐藤さんに、『記憶の冒険』展と関連したお話や、ご自身のアートに対する思いをお聞きしました。

前編はこちら

絵を描くことはセラピーでもある。

 僕にとって、絵を描くことは、趣味でも仕事でもあるし、生きることそのものなんです。たとえば失恋したとするじゃないですか。そしたら1日目は、大きな絆創膏に子どもが包まれて寝ているイメージがでてくる。2日目は大きな穴が2つ空いているイメージがでてくる。ひとつは田名網先生のことで喪失している穴、もうひとつは好きな人を失ったことで空いた穴。裸の人が立っていて、胸から大きな百合の花みたいなのが咲いて、内面を表している。壁が神経みたいに痛そうに広がっている...。そういうふうにイメージがでてきちゃうんです。吐き出さずにはいられないんでしょうね。だから、一種のセラピーですよね(笑)。

街に生活が露出してるくらいがちょうどいい。

 もっと街がクリエイティブになるには、町内会のチラシを描いてみたりするのはどうでしょう。模造紙でざっと描いちゃうのもいいかもしれないし、みんなでいらない紙を持ち寄ってきてもいい。「わざわざアートのために紙をこしらえるのやめない?」って思うんですよ。もしくは、街中のオブジェを清掃するなど、すでに存在するアートを大事にしたり、みんなで愛称をつけてみたりしてもいいかもしれないですね。街そのものを愛したり、住んでいる人にスポットライトを当てるのがいいんじゃないでしょうか。

 そもそも僕は街ってダサくあるべきだと思ってるんですよ。どんぶり鉢みたいなのを持って、たとえば「今日はとんかつだな」って思ったら、とんかつ屋さんに行って、ラップもかけないで家に持って帰って食べるみたいなことがあってもいい。それを路上で食べたっていいじゃないですか。食器だって、公園で洗ってぶらぶらしながら帰ればいいじゃないですか。それが苦手な人たちもいると思うけど、生活がもうちょっと露出したらいいかもしれないですね。僕は服も破れてたら直しますし、なんとも思ってないんですよ、そういうの。それよりも生きづらさからの脱却が大事。かっこつけなくていい街が僕にとっていい街ですね。

 実際に僕は子どもの頃、千葉の小江戸とか言われるようなそういう街で育ったんです。田舎だったんで「とんかつ買ってきて」って言われたらお皿を持って歩いて行ってました。でも川越のように観光で成功してはいなくて、その頃の建物のままでみんなが生きている(笑)。

六本木で出会った、価値観を変えた展示。

 2006年に森美術館で開催されていた「杉本博司 時間の終わり」という展覧会を見て、価値観が変わる経験をしました。僕がギャラリー小柳に所属したすぐ後くらいで、写真というジャンルがあまりわからない中で、見に行きました。フライヤーにポーラーベアの写真があったから「冒険写真家なのかな?」くらいに思っていたんです。実際に見に行ったら、それはコンセプチュアルアートで。ダイアナ妃や昭和天皇の写真があるんだけど、そこにちゃんと一個ずつテキストがついていて。「これはマダム・タッソーの写真を撮ったものである。これがもしも生きている人間を写したものとして認識したならば、あなたは生きるということをもう一回考えてみるのがいいかもしれない」と、そんなようなことが書いてあった。実際は、蝋人形を撮影した作品だったんです。ただの写真一枚とテキストでこんなことができるのかと感激したんです。だから鑑賞者の1人としても今後、六本木界隈で何が起こるか楽しみです。

杉本博司 時間の終わり

杉本博司 時間の終わり

森美術館で2005年9月17日から2006年1月9日まで開催された杉本博司氏の個展。1975年から2005年に制作された杉本の代表的なシリーズが初めて一堂に会した。
キャプション:ユーエー・プレイハウス、ニューヨーク (1978年) ゼラチン・シルバー・プリント
©Hiroshi Sugimoto / Courtesy of Gallery Koyanagi

 他にも感動したのは、イヴ・クラインの《青いカクテル》という作品です。イヴ・クラインがパリで開催した展覧会「空虚」で、観客に青いカクテルが振る舞われ、ギャラリー内は真っ白に塗られた空っぽの部屋があるだけだったそうです。それを集団で飲むという行為がアートといえるかもしれないし、観客はそれぞれに、ああだこうだと話していたそうです。それで翌日、トイレに行ったらみんなのおしっこがブルーだったんですって。それがもう、すごいと思ったんですよ。展示室から飛び出たアートになっているので。これは過去の作品として偶然知って、想像する喜びがありました。こんなふうに、価値観や自分の既存の考えがアートによって変わったり、拡張したりすることを、過去に何度か経験しています。

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絵を純粋に鑑賞できる条件は平和であること。

 最近だと、すごく刺激を受けたのが朝吹真理子さんという小説家が今書いている『ゆめ』です。装丁で関わらせてもらったのですが、実は小説が完結していないのに先に装丁ができたんです。すごく変わったやり方をしていて、僕はこの小説を読んだことがないなかで、イメージだけ伝えてもらって絵を制作し、小説部分よりも先に表紙ができちゃったんですよ。その絵を彼女が部屋に飾って小説の続きを書き出したんです。だから僕は物語とすごく変な関わり方をしていて。だけど僕がそこで何か小説に影響を及ぼしているわけでもない。しかもその後実際に『ゆめ』を読み進めていったら、その表紙は間違ってないように僕には思えました。

『ゆめ』は、戦争に関連する話で、朝吹さんはこの執筆をする以前から、ずっと戦争の聞き書きをしています。戦争反対ということは大前提としてありますが、それよりも人が何を起こすのか、そして何を起こしてきたのか、ということに触れる内容で、すごい作品です。僕はあんまり身内贔屓とかしないんですけど、これは名作になると思っています。彼女と話す中で、新作もいくつか制作したので今後どうなるのか、この物語の完成がとても楽しみです

 絵の未来は、僕は、平和にあると思っています。平和でなければ絵を描くのって難しくて。過去を振り返れば、絵はプロパガンダや情報操作に使われてきた。絵の悲しいところは、どういうものでも美しさを持ち合わせてしまうところです。平和であることは、絵を純粋に鑑賞できる条件です。そして道具の面でも、絵の具にしたってなんにしたって、ちょっと国外からの物流が止まったら、一発でもうこの先も手に入らなくなってしまうかもしれません。日々、色彩感覚や技法を磨くべくいろいろ勉強を続けていますが、描ける、ということは、かろうじて今が平和ということなのかもしれません。

撮影場所:『田名網敬一 記憶の冒険』(会場:国立新美術館)

取材を終えて......
インタビューのなかで、佐藤さんがさりげなく発した、「純粋に考えるとそうじゃないですか」という言葉に佐藤さんのあり方が現れているな、と感じました。社会の風潮や「当たり前」に飲み込まれることなく、ある種の純粋さを保ったまま自分の問いを持ち続ける。とても丁寧な物腰のなかにぶれない強さがあると同時に、作品からあたたかさや透明感を感じるのは、佐藤さんが愛に対してまっすぐで、素直だからなのだと思いました。(text_noemi minami)

前編はこちら

佐藤允

佐藤允 / 画家
佐藤允 / 画家

1986年、千葉県生まれ。現在は東京を拠点に制作活動を行っている。2009年に京都造形大学芸術学部情報デザイン学科先端アートコースを卒業。佐藤允にとってのドローイングとペインティングは、自身や身の回りの存在を取り巻く人間の複雑な内情を記録し解釈するためのツールであり、印象的で正直、時には挑発的なイメージで個人的なテーマを探求している。作品は、「アートのためのアート」や新しさ、意味を求めることをしないと考える。2011年と2015年にギャラリー小柳で個展を開催した他、ニューヨークやブリュッセルでも個展を開催。主なグループ展に「第8回光州ビエンナーレ」(2010)、「ヨコハマトリエンナーレ2011:OUR MAGIC HOUR―世界はどこまで知ることができるか?―」(2011)、「Inside」(パレ・ド・トーキョー、2014)、「INTERPRETATIONS, TOKYO‐17世紀絵画が誘う現代の表現」(原美術館、2019)、「堂島リバービエンナーレ2019」(2019)、「やんばるアートフェスティバル 2022-2023 シマを繋ぎシマを響く」(2023)、「LA MORSURE DES TERMITES」(パレ・ド・トーキョー、2023)がある。作品は、高橋龍太郎コレクション、ルイ・ ヴィトン・マルティエにパブリックコレクションとして収蔵されている。

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