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INTERVIEW
160
ミケーレ・デ・ルッキ建築家 / デザイナー/ アーティスト Michele De Lucchi / Architect / Designer / Artist
Michele De Lucchi / Architect / Designer / Artist

『インスタレーションを通じて実験的なことに気軽にチャレンジしてみる』【後編】

クリエイティビティは自分の内からではなく、自分を取り巻く環境から生まれる。

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update_2024.10.02 photo_yuka ikenoya / interview_rumiko inoue / text and edit_shawn woody motoyoshi

イタリアを代表する建築家、デザイナー、そしてアーティストのミケーレ・デ・ルッキさん。
ヨーロッパの有名企業の家具デザインを手がけるとともに、文化施設、インダストリアル、住宅など多様な建築プロジェクトを実現しているデ・ルッキさんですが、20年以上にわたり、ミラノとアンジェーラの工房で、ドローイング、絵画、木彫のオブジェ・模型の制作に取り組み、ポンピドゥー・センターほか、欧米や日本の美術館が彼のデザイン作品を収蔵しています。
今回は、三宅一生さんとの会話がきっかけではじまった、21_21 DESIGN SIGHT ギャラリー3でのデ・ルッキさんの個展について、そして環境とクリエイティビティ、建築家としてのデ・ルッキさんのクリエーションの源について、などたっぷりお話をお伺いしました。

前編はこちら

木とブロンズ、古くからある素材で人類の原点に立ち戻ってみる。

 今回、《ロッジア》では木とブロンズの作品を発表していますが、このシリーズでは素材選びから仕上げに至るまで、創作のプロセスで様々な実験をしました。私は、新しいコンセプトや素材、未来に向けて新しいアイデアを生み出そうとする課程で、よく、過去に立ち戻ります。その中で、例えば、木やブロンズのような、使い慣れた古くからある素材を使うこともあります。先史時代、最初のホモ・サピエンスは道具をほとんど持たず、素材を開発することもしていなかったので、生活の中で唯一あったのは、森や草原で見つけられるものでした。

 そういう意味では、木は彼らにとって最も重要な素材だったわけです。ずっと前からある素材で、たくさんあるので自由に使うことができ、素材としてもすぐれているという点で、木は今でも、人間にとって必要不可欠な、最も重要な素材だといえるでしょう。一方、ブロンズは人類が発見した最初の金属という意味で、古い素材のひとつです。ブロンズを使うことで最初のホモ・サピエンスは木を加工するためのより耐久性のある道具を生みだすことができるようになりました。

 昔の人のことを考えるといつも感動します。木は森のいたるところに生えていたと思いますが、道具がなかった時代には、数センチくらいしか切り出せなかったのではないでしょうか。幹の部分なんて、どうしたって切れなかったはずです。もし私がその時代に生きていたら、木を使えないことがどれだけフラストレーションになったことか! 当時の人たちも、相当なフラストレーションを抱えていたのではないかと想像します。その点、現代は柔軟性のある若い木であれば、いろんなシーンで活用できる木材になりますし、年数を重ねた木は堅くてしっかりとした長持ちする素材になります。それで今回《ロッジア》では、非常に原始的な2つの素材を使うことにしました。人類の原点に立ち返ることと、大きく発展を遂げた技術の原点に立ち返るという、よいメッセージにつながるのでは、と思ったのです。

 私は素材を選ぶ際、自分の手で直接扱える素材か否か、ということを大切にしています。あわせて、その素材自体の開発に携わることができるかどうかも重要です。とりわけ自分自身のアート作品に関しては、今述べた2点を大事にしています。

建築とアート、2つの異なるアプローチ。

 建築家として建物を設計したりインテリアデザインをする時には、アイデアを実現するために、どんな専門性が必要とされるかはよくわかっています。アーティストとして何かをつくるときは、まず、自分の頭の中にあるものを目に見える形にしてみます。頭に浮かんだものを、あっという間に形にしていきます。対して、建築はプロセスがとても長い。経済的、財政的な問題があるので、自分が設計したものが実際に形になるには、もっともっと時間が必要になってきます。

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人々のニーズや夢、感情などがつまった「時代のスピリット」。

 健康的であることと、賢くあること。この2つは異なる概念に思えますが、実はそうではありません。健康でいるためには、賢くなければならないし、賢くいるためには、健康でなければいけません。その場所や建物にいると、人々が攻撃的になるよりも、その人たちの平和でおだやかな面がでてくるような建築や環境を生み出したいと常に思っています。そのような場所に身をおくと、他人に対して暴力的、攻撃的になることがなくなり、平和に共存できているときの感覚がわかってきます。そういうデザインをしようと思ったら、単に素材や色、見た目をどう仕上げるかといった要素だけではなく、「時代のスピリット(The spirit of the time)」を理解することが必要になってきます。

 「時代のスピリット」は、私にとって最も重要かつ必要不可欠な概念です。大学でも、毎年最初に「時代のスピリット」についての授業を行います。「時代のスピリット」には、その時代の、そこにいる人たちの、様々な欲求や夢、野望、感情、色々な出来事など、たくさんのものがつまっています。ドイツ語で「時代のスピリット」を表現する言葉として、「Zeitgeist」という言葉があります。英訳すると「The ghosts of the time(時間のゴースト)」という意味です。「ゴースト」というのは、とても美しい概念ですよね。幻想的で、かつ触れることができないけれども、存在しているもの。その存在を感じているものの、本質は説明しにくく、理解もされにくいものなのです。

 建築家は、自分が暮らしている場所以外のためにデザインをすることもあるので、「時代のスピリット」について十分理解をした上で、テクノロジーを駆使しながら創造性を発揮し、そのスピリットを具現化した環境をみなさんにお届けする責務を抱えています。

クリエイティビティは、自分を取り巻く環境から生まれる。

 現在、神戸で、何年も前に建てられた古い建築の修復プロジェクトに携わっています。ここでも、「時代のスピリット」を表現しています。既存の建物を取り壊し、再び建てるというプロセスを経る修復は、非常に興味深い仕事だと思っています。修復を必要とする建物は面白いものが多くて、技術面で進化させたり、形を変えたり、インテリアもアップデートをし、環境を豊かにしていくことができるのです。

《六甲山サイレンスリゾート》

《六甲山サイレンスリゾート》

デ・ルッキ氏がディレクションを手がける、神戸のランドマークであった旧「六甲山ホテル」を、「六甲山サイレンスリゾート」として再生するプロジェクト。2022年には、旧六甲山ホテル本館を修復し、現在は新たにリング状のホテル棟の建設などを進めている。
画像:Courtesy of AMDL CIRCLE
プロジェクト:AMDL CIRCLE and Michele De Lucchi

 環境づくりで難しいのは、その場がいつも様々な情報に満ちあふれていて、意味のあるものであるべきだということです。クリエイティビティは自分の内から湧き出てくるものではなく、自分を取り巻く環境から生まれてくるものです。「創造性を磨きたい、もっとクリエイティブになりたい」と思うなら、その環境こそがクリエイティビティを最も刺激する要素となります。もし貧しく、無表情で、悲しく、憂鬱な環境の中で生きているとしたら、決してクリエイティブにはなれないのです。

 エピジェネティクスと呼ばれる、遺伝学分野の科学的研究をご存じでしょうか。環境が細胞の成長にどのような影響を与えるのかを研究する科学なのですが、私たちはおよそ37兆個もの細胞から構成されています。ですからもし細胞が、異なる環境下でどのように反応するのかわかるようになれば、私たち人間が身の回りのものから具体的にどんな影響を受けているのかも理解できるようになるでしょう。その点で、建築家は環境をデザインしているともいえます。私たちが生きている今この時代は、環境をデザインするだけでなく、環境にインスピレーションを与えているのです。都市がもっとクリエイティブになるには、単にあっちからこっちへ簡単に行けるようなアクセスがよく機能的な都市をつくるのではなく、人やアイデア、思いがけないものや景色、考え方との出会いがあるような、インスピレーションに溢れる都市をつくる必要があります。私たちの心は、思考や無形の欲望によって動かされているのです。

インスタレーションは、アートと建築を結びつける概念。

 都市がもっとクリエイティブになるために提案したいのは、シンプルに、インスタレーションを考えてみる、というアイデアです。開催期間は長くなくてもいいと思いますが、一度は足を運んでみないと、と思わせる展示で、行くたびに新しいビジョンやアイデア、今までにない新しい何かを見つけることができるようなインスタレーションです。ある意味、常設であるといえる建築とは異なり、インスタレーションがいいのはその都度、最新のプロセスや技術、アイデアを簡単にチャレンジすることができるところです。建築物は、永続的で、常に時間の経過と闘わなければなりません。メンテナンスも必要になってきます。一方、インスタレーションだったら、常にどこかをアップデートするのも容易でいつかなくなってしまう通り過ぎていくものなので、毎回実験的なことにチャレンジできます。建築と違って実現がしやすく、進化させることも他のアイデアを取り入れることもできますし、そのアイデア自体を他の建築家やデザイナーが取り入れることもあります。

 私にとってインスタレーションとは、建築において非常に重要な概念で、アートと建築を結びつけることができる考え方ともいえます。実験をしなくなったら、人間は何者でもなくなってしまいます。一人ひとり、人間同士、異なる国の人、そして異文化の人たちが共存し、協力することができる可能性に対して挑戦を続けていくのです。もしうまく協力できれば、世界はきっとより壮大なものになるでしょう。

撮影場所:『六本木六軒:ミケーレ・デ・ルッキの6つの家』展(会場:21_21 DESIGN SIGHT ギャラリー3)

取材を終えて......
六本木に6つの小さな家の彫刻が立ち並ぶ展覧会でお会いしたデ・ルッキさんは、終始にこやかで、ハッピーなオーラをはなっていらっしゃり、ここも「時代のスピリット」をまとった空間だな、とおだやかな気持ちになりました。
「クリエイティビティは、内からでるものではなく、その人がいる環境からしか生まれないものだ」というデ・ルッキさんの言葉に、はっとさせられました。日々自分を取り巻く環境や時間を過ごす場所への意識が変わった瞬間でした。建築の見方も、がらっと変わりそうなきっかけをいただきました。(text_rumiko inoue)

前編はこちら

ミケーレ・デ・ルッキ

ミケーレ・デ・ルッキ / 建築家 / デザイナー/ アーティスト
ミケーレ・デ・ルッキ / 建築家 / デザイナー/ アーティスト

1951年イタリア、フェラーラ生まれ。1970〜80年代にかけて、前衛的なデザイナー集団「アルキミア」、「メンフィス」の中心的人物の一人として活動。1988年から2002年まで「オリベッティ」のデザインディレクター。世界的ベストセラーとして知られる照明器具「トロメオ」(Artemide)のデザインで、1987年コンパッソ・ドーロ賞を受賞。ヨーロッパの有名企業の家具デザインを手がけるとともに、文化施設、インダストリアル、住宅など多様な建築プロジェクトを実現する。
2000年、アゼリオ・チャンピ大統領(当時)より「イタリア共和国オフィサー」の称号授与。2001年、ヴェネチアIUAV教授。2006年、キングストン大学より名誉博士号授与。2008年よりミラノ工科大学デザイン学部教授。国立アカデミア・ディ・サン・ルカ(ローマ)、アカデミア会員。2018年、建築誌「domus」の編集長。2022年、コンパッソ・ドーロ・キャリア賞受賞。2024年、アカデミア・デッレ・アルティ・デル・ディゼーニョ(フィレンツェ)、アカデミア会員、フランス共和国文化通信省より、芸術文化勲章・オフィシエを受章。
20年以上にわたり、ミラノとアンジェーラ(ヴァレーゼ県)の工房で、ドローイング、絵画、木彫のオブジェ・模型の制作に取り組む。これらの制作活動が、建築形態の本質を追求する原動力、職業上のプロジェクトのインスピレーションの源となる。2003年、パリのポンピドゥー・センターが彼の作品の多くを収蔵したほか、欧米および日本の主要な美術館がデザイン作品を収蔵。
学際的なスタジオ、AMDL CIRCLEの創設者であり、そのヒューマニスティックなアプローチが国際的に評価される。
AMDL CIRCLEは、建築、インテリア、デザイン、グラフィックなど、様々な分野で表現力豊かで戦略的なプロジェクトをクライアントに提供している。
amdlcircle.com
IG: @amdlcircle
LinkdIn: AMDL CIRCLE

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